第20章 返らない弁当箱
最近、大五郎さんのお弁当屋さんが調子良い
会社からの注文も増えたんだけど、一人暮らしのおじいちゃんおばあちゃんが大五郎さんの田舎料理にハマって口コミで結構配達注文が舞い込んでくる。
この間カッパ橋で買ってきた魚を挟んで焼く網のおかげで、網ごとひっくり返すから私が焼く焼き鯖も炭から鯖へと進化しつつある
配達が死神ちゃんとチャラ男、午前中だけの河太郎さんと私だけだと回らなくなって来そう
そろそろ配達員を増員しないと、、、
一度びんちゃんに何件かやらせてみたんだけど、配達時間が3時過ぎちゃってお客さんからめちゃくちゃ怒られた
私も配達件数を増やして、人が増えるまで頑張らないとなぁ〜
お弁当容器の回収もある
知り合いのお弁当屋さんから中古のものをたくさん安く譲ってもらったので、それを使っているんだけど
洗ったり回収したり結構大変 しかも最近回収する度に数が減っている
予備も足り無くなりそうだ
プラスティックの使い捨て容器に変えようかと思ってるんだけど
原価率がどうのとかエカテリーナが言ってるし
あの悪魔 動かない癖に正論だけは言うんだよね〜
神様や悪魔って別にお腹空かないから食べなくても大丈夫だって言ってたくせに。大五郎さんの料理だけは何か知らないけど皆よく食べる
私もおかわりして食べてるから文句言えないど、、、
まぁいろいろ考えていてもしょうがない。お弁当箱の回収に行ってこよ〜
配達先を増やしてもらったので、今日から回収も増えてしまった
順番がまだあまりわかってないので、すごくめんどくさい
大きなお屋敷 もったいない。庭の手入れが全然できてない。
朝は配達に忙しくてよく見れなかったんだけど
ここの家の人は人付き合いが好きじゃないみたいで、玄関の隣のお弁当置き場にお弁当を置いておく
返却する容器もそこに置いといてもらうことになっている
クモの巣だらけの庭木の間をくぐり抜け容器を取りに行く
アレ?
確かここ私朝4つ持ってきたんだけど 1つしか置いてない
1人で4つだから、夕飯とか次の日の朝とか昼とかに食べて返してくれるのかな?
そんなことを思って、昨日は帰ってきたんだけど
今日も1つだけ
ここが原因か〜 弁当容器の不足問題!!!
KGBに帰って報告したらここのお客は1週間前ぐらいから注文してくる数が4つになったと言うことがわかったと言う事は21個
大体そのぐらいが足りなくなっている
やっぱり、あそこのお客さんが弁当容器不足の原因で間違いない
私1人で行くには危ないってみんなが言うので 死神ちゃんと行くことにした
私も女の子だと思われているのだと思うと、ちょっと嬉しかった
「君1人で行かせると突っ走って何するかわかんないからね。僕がついていくよ。」
後ろから死神ちゃんが階段降りながら、言ってる
ああ、そっちね 私じゃなくて、相手を心配してるってことね
「イツキ、気をつけて、、妖気が複数ある様だよ」
死神ちゃんが声をひそめている
複数って、、、、
こんな仕事をする前は妖怪なんていないと思ってた、居たとしても、田舎の山の中とか湖とかそんなところにいるもんだと思ってた
ここ錦糸町だよ 東京だよ 人間に混じって、みんな普通に暮らしてるんだな
今まで、私が気がつかなかっただけで、、、
開け放たれた通用門を入り庭木の間の蜘蛛の巣を避けつつ玄関に向かう
死神ちゃんは周囲を気にしながら、ドアの横のインターホンを押した
音がしているような気がしない 今度は私が鳴らしてみる
中で、音がしている気がしない
「こんにちは〜!いつもありがとうございます〜大五郎弁当で〜す」
反応がないのでドアノブを下ろす カチャ
開いてる ゆっくりドアを開いて顔だけ入る隙間を開けて中を覗き込むと
そこは、ゴミだらけ 玄関から続く。廊下半分ぐらいゴミで埋まってる。
ゴミ屋敷だ
小蝿が鼻に入らない様に気をつけながら 「こんにちは〜だれかいませんか〜」
すると、奥から音がした。ガサガサガサガサガサガサなんか、ぶつぶつ文句言っているおじいさんらしき声も聞こえる。
ゴミの山の向こうから顔を出したのは、土色の顔をした。ハゲ頭の意地の悪そうなおじいさんだった。
「ああああ〜ぬらりひょんだよ」
死神ちゃんの妖怪解説
ぬらりひょんは、妖怪の中の結構偉いところのポジションにいる人で、狡猾な手口で、人を騙す小声で教えてくれた
「おまえらぁ〜なに勝手に中に入ろうとしとるんじゃぁ〜」
土毛色の顔をしたおじいさんの頭のてっぺんだけ真っ赤にして怒りながら、ゴミの上を歩いてくる
ズボッ!
途中で消えた、、、、
「そこでボーとしとらんで助けんかぁ〜!!!」
ゴミの中からぬらりひょんが助けを求めていたので、死神ちゃんと2人で引っ張り出した
ぬらりひょんを助け出してから、死神ちゃんが話を聞いている
お弁当頼んで2日目に化けたぬきの親子が外に置いてあるお弁当分け合って食べていたのを見て
ぬらりひょんは、次の日から自分の分と化けたぬきの家族の分を頼むようになったと言う
「優しいじゃん、顔の割に。でもお弁当箱を返してよ、どこにあるの?」
「知らんわい!タヌ公がどこかへ持って行ってしまってるからな」
「ワシはちゃんと金払っとるし弁当は勝手に持っていかれとるだけじゃ!」
優しいんだけどなんか憎たらしい それにこの家のゴミ、、、
「掃除片付けできないの?こんな立派な家なのに」
「うるさいわ!ワシだって好きでゴミの中に消えてるんじゃないわい!!」
数年前にずっとお世話をしていてくれていた家政婦さんが引退をしてしまって、
代わりに新しい家政婦さんが来たんだけど、すぐにやめて行ってしまうらしい。
そんなことが続いて、紹介所からは、誰1人として来なくなってしまったと言う。
自分では全く何もできないから困っているんだと憎まれ口を叩きながら説明してくれた。
「家族とかいないの?家族に手伝ってもらえば良いのに」
「お嬢ちゃん、ワシを誰だと思っとる、、、ぬらりひょんだぞ」
このじじい開き直ったので、とりあえず弁当箱探さないとって事になった。
次の日の朝、お弁当の配達順番を1番最後にしてお弁当を届けておいた後、帰ったふりをして張り込みをする!
ふふふふふ今回は2度目だ緊張は無い パンと牛乳も買ってある
そんなものより、虫除けスプレーを買っておくべきだった、、、
私は、庭の植え込みの影で蚊のビュッフェバイキング状態となった
腕とか足とかほっぺたとか静かに掻きながら犯人が来るのを待つ
ああああああもう痒い!!!! ボリボリ掻こうとした時
ガサガサガサ
きたぁ〜!!!
作業着姿の小太り狸面の男が現れた。頭には耳。 全然可愛くない!!
お弁当を3つ腕に抱えて立ち去ろうとしている植え込みの間に入っていく
もちろん、尾行なので私も忍者歩きでついていこうとした時
パキッと枝を踏んでしまった たぬき男がビクリとして振り向く 顔が合う
逃げようとしたので
腹の底から声を出した
「待ちなさいよ!」
たぬき男はさらにびっくりして、腰を抜かして座り込んだのだった。
「すいませんでした、、最近島模様の見慣れないたぬきに餌場を荒らされて、私たち家族路頭に迷っていた時にここに置いてあった美味しそうな匂いに我慢ができなくて、最初1ついただいちゃったんです。
次の日から3人分増えていたので、私たちの分も置いてもらってると思って、、、」
「まあその通りなんだけど、私が来たのはその食べた後の入れ物を返して貰いたかったからなのよ」
「コレ、返さないといけなかったんですか?」
狸だからね しょうがないっちゃしょうがない、、、 なんか変な説得力がある
とりあえず弁当箱を置いてある場所まで案内してもらう 意外と近かった
裏庭にある物置が、この家族の住処だった
子だぬきとメスだぬきがこのオスだぬきを迎え入れる
その後ろから入ってきた私を見て緊張が走る
「大丈夫、何もしないから逃げなくてもいいよ、そこに散らばっているお弁当の殻を取りに来ただけだから。」
弁当箱を回収し、食べ終わるのを待って、その弁当箱も持って帰ろうと少し離れた場所で待っている
子供と母親とたぬき男3人で美味しそうにお弁当を食べている
私は手に持っているパンと牛乳に気がついた
子供の前にそっと置いた
お弁当箱24個 無事回収!!
このままでは持っていけないので、ビニール袋に入れて帰ろうとぬらりひょんのところにもらいに行った。
その時、ひらめいちゃった!!
ぬらりひょんは不動産事業をやっていて、割とお金持ちらしい
なので、トラックの手配とかをしてもらって家を片付けることにした
その仕事は、たぬきの夫婦が請け負うことになった
1週間後進捗状況はどうかと今度は張り込み用ではない。パンと牛乳を買ってぬらりひょんの家を訪ねた。
家の中を片付けられているせいか、庭に追い出されて椅子に座っている
ぬらりひょんが居た
子供のたぬきがぬらりひょんのお尻を蹴飛ばした
ぬらりひょんは立ち上がって、子供を追いかける
私は玄関のお弁当箱を回収して牛乳とパンを人数分置いてKGBに帰った




