第12章 天狗の里
カランカラン
一週間くらい経った
土地神様がニヤニヤして入って来た
「お嬢、車持って来たよ
下のコンビニの駐車場に置いてある
ついでにコンビニのオーナーにも話を通しておいた
弁当の積み込みぐらいなら駐車場使って良いって
名義変更も終わってる
はい鍵」
もう神!!
ああ土地神様か?
日産キャラバン・スーパーロング/E24後期型/V6 3000cc
チェアキャブ介護タクシー仕様
そんな説明されたけど、全部呪文みたいでさっぱりわからない
デカい
とにかくデカい
中ひっろ
天井高い
もう部屋だ部屋
衝動買いで動く部屋
買っちゃったよ
みんな車の周りや中を見たりして
あーでもないこーでもないと始まった
エカテリーナは汚いバンとか言ってるけど
V6-3000が気に入ったって言ってる
なにそれ
ジャニーズのグループ名みたいだ
少し離れたところで、土地神様はそんな様子をニコニコして眺めていた
目があったので隣に行く
「ねえなんでこんなに良くしてくれんの?
悪いけど愛人にはならないからね」
「そういうわけじゃねーよ
たまたま、散歩の途中で出会っただけ
いや、そうじゃねぇなぁ
お嬢見てると面白えんだ」
「死神ちゃんにもそんな事言われた
私は真剣に真面目に生きてるつもりなんだけどな〜」
「なかなかできねえんだよ
真剣に生きてるやつだから
面白しれえし
かっこいいし
美しいんだ」
「またぁ〜美しいとか言って口説いても愛人にはならないよ」
「はははははは
やっぱりお嬢は面白えや
じゃあ友達にはなってくれるかい?」
「うん、でもあたしはもう友達のつもりだったよ」
納車当日にみんなでお出かけ
上がるわ〜
「よぉ〜し
お弁当の配達も終わった事だし
各自荷物を積み込んで箱根に出発よ!」
猫好きのエカテリーナがまねきねこを運ぼうとしていたらわらしちゃんが
「まねきねこ様は縄張りから出たくないって!!」
まねきねこはゆっくり瞬きをした
「話せるの?」
「うん」
「それもそうね
私とした事が猫の気持ちをわからないなんて、、」
エカテリーナが素直に納得してる
「わらしちゃん!
メデューサとは話ができるの?」
「まだ」
「でも、、楽しそう」
わらしちゃんの特色能力発見!!!
各自乗り込みシートベルト装着
「エカテリーナ、運転するの?
ポルシェじゃない汚いバンだけど」
「日産のV6がどんなもんか運転しないとわからないじゃない」
全くこの悪魔はわからない
「じゃっ!
あれ、、わらしちゃんがいないよ」
探すとわらしちゃんはメデューサの足にしがみついていた
「連れて行きたいの?」
コク
「一緒がいいの?」
コク
どうしようか、、、
「主人〜!!」
チャラ男が車椅子リフトを指差した
ウィーン
さすがハイルーフ
立ったまま収納成功
ロープで固定していたら
土地神様は大爆笑している
「よし!それじゃ〜慰安旅行に出発〜っつ!!」
ついでに天狗の花粉症直しに!!
首都高錦糸町入口から高速に乗った
加速で椅子に張り付く
エカテリーナの目がすわってる
これはやばいやつだ
生きた心地がしない数十分後
気がつけば
用賀パーキングエリアについていた
「気に入ったわ
なかなか走るじゃない
日産のV6をなめてたわ
満足した」
満足したじゃねーよ
大五郎さん、青鬼になってるじゃねーかよ
わらしちゃんも青わらしになってるし
「大五郎さん、ここからは安全運転で行きましょうね」
ビンちゃんが申し訳なさそうに
「箱根に行くんでしたら、茅ヶ崎に寄ってもらえませんか?
双子の弟がいるんです
久しぶりに顔を見たいんですが」
エカテリーナは容赦がない
「貧乏神2倍になってどうすんのよ!
弟までついてきたら収拾つかないでしょうが
却下!!」
何もなかったかのように、厚木を過ぎて大井松田方面に進む
大五郎さんの運転になってからちゃんと景色が見えるようになってきた
船に乗っているみたい
バスとも違う
不思議な乗り心地
びんちゃんは音楽がよく聴ける助手席
わらしちゃんは助手席と運転席の間で寝てる
ベンチシートっていいね
死神ちゃんとチャラ男は朝のお弁当の配達で疲れたのか寝てる
神様と悪魔でも疲れるのね
「ねえイツキ
桃太郎ってお話知ってる?」
エカテリーナが、急にそんな話を振ってきた
「あれって私たち悪魔の教本みたいなお話だと思わない?」
何か面白いこと言ってる
「あれは童話でしょう
悪い鬼を退治して宝持って帰る
めでたし、めでたし、じゃないの?」
あれ、、、、何か引っかかる
「あの童話
必死で稼いでいる鬼たちのところにいきなり乗り込んで行って
全員斬り倒して財産奪うんでしょ?」
ああ、、そう言う見方もできるのよね、、、
「でも奪われた人たちにそのお宝返すんでしょ?
それでみんなに喜ばれて
めでたし、めでたしなんじゃないの?」
「何言ってんの?イツキ
全員斬り倒しといてどこから奪ってきたかなんかわからないでしょ?
しかも、奪ってきたなんて裏取ってないじゃない」
何か妙に納得してしまった
感心しながら、半分呆れながら、エカテリーナの方を見る
窓に頭をくっつけて、いつの間にかにスヤスヤ寝てた
わらしちゃん情報ではお弁当の朝の仕込み前の真夜中に、厨房で今日のお薬作ってたらしいから
やっぱり、
この悪魔も寝不足で疲れているんだなぁ〜
人間も神様も悪魔もなんか大してかわんないな
後ろを見ると
満面の笑みのメデューサと目があった
キャラバンが停まった
あたりはもう暗くなり始めている
街からすぐなのに、
杉の大木が道路の両側に
道路の真ん中にも
風が木々を揺らして
ザワザワ言ってる
CIAの依頼説明によると
仁王門のお土産物屋さんの駐車場で香を焚く
それで天狗の里からお迎えが来るらしい
CIAから預かった香を早速焚く
いい香り
ドライブで高揚していた気分がスッと落ち着くようだった
ちょっと心地良い眠気も感じる
大五郎さんだけ運転させているのも申し訳ないから
車の中では、眠気を何度か克服したからかな
なんて思ってると
修験者の格好をした烏天狗がやって来た
「遠路はるばる大天狗様のためにお越しいただきありがとうございます
私が本日ご案内させていただきます
烏天狗の塚原と申します。
里でのご案内も務めさせていただきます」
そう言って、車に乗り込んできた
山道をゆっくり登っていく
やっぱり船みたいだ
どんどん杉の大木が増えてくる。直径2メートル位あるんじゃないのかな?
すごく太い
車内のみんなも
あっけに取られている
古代の森
くねくねと曲がる山道の先に最乗寺の入り口が見えてきた
大きな石灯籠を過ぎてさらに細い道を上に登る
クネクネクネクネ登る
誰1人として喋らない
いや
喋れないんだと思う
脇道に入る
霧が濃くなる
舗装が途切れる
ゆっくり左右に揺られながら、キャラバンは走り続ける
突風が吹いて霧が一瞬晴れた
目の前にはかやぶき屋根が斜面に点在する
日本昔話に出てくるような村が現れた
私達は車を降りて一軒の大きな池のあるお屋敷に案内された
誰一人として口を開かない
廊下に響く木材が軋む足音と夕方の小鳥の囀りしか耳に入って来ない
襖が開くと奥から大五郎さんより大きい感じの修験者がこちらに向かってゆっくり歩いて来た
「わざわざすまん
長年杉林に暮らしていると言うのにこの様だ、、、
花粉症と言うらしい
陰陽師にも治せぬこの症状をお主らがなんとかできるのか?」
天狗だ!!
大きくて長い鼻
鼻の穴にティッシュが詰めてある、、、
全く怖くない
ハイテングワールドのトートバッグからエカテリーナから渡されたお薬を出して烏天狗に渡す
エカテリーナが薬の説明をしている
「1日1回でいいわ
寝る前にこれを1袋
1週間ぐらい飲み続けてみて、
効果が出てくるから
それと、あなた少し痩せなさい
食生活を少し見直さないとダメね
体質改善をお勧めするわ
気が乱れてる
今日は私の方で気を整えとくけど
でも、自分でも努力しなさい」
何この悪魔?
医者?
元魔女だって言ってたけど
今日のエカテリーナは一段と凛々しい
これで解決?
こんな簡単でいいの?
薬届けただけじゃん!
そりゃエカテリーナ頑張って昨日の夜ほぼ徹夜で作ってたみたいだけど
私、何もしてないんだけど、、、、
塚原さんに車まで案内されて戻って来た
やっとほっとしたみたいで皆小さな声で話し始めた。
天狗でかいとか
ティッシュ詰めてたとか
「これからどうなされますか?
こちらで夕食と宿泊の準備は整えさせていただきますが?」
塚原さんが魅力的な提案をしてきた
天狗の里での宿泊
こんなチャンス、二度とないけど
やっぱり初志貫徹
箱根よね〜
箱根に泊まると答えると
予約は取ったのか?
と聞かれた
皆を見回した
皆も見回してる
見回してる?
私に視線が集中した
「ちょっと待って大丈夫!
今から探すから!!」
検索エンジンの画面には、満室の文字が並んでいる
空室があってもスイート、、
1泊30万円、、、
車買えるじゃん!!
塚原さんは
来客用の一軒家を用意してくれた
ここには天狗の湯があり、いくつも露天風呂があり
好きなだけ入って良いって言われた
大五郎さんと死神ちゃんと
チャラ男は食材と道具を母屋の調理場に取りに行く
朝からお弁当の準備して
運転して
ここでもご飯作ってもらう
なんか申し訳ない
私のせいで
これじゃあ慰安旅行になんてならないじゃん
一人反省していると
エカテリーナが、わらしちゃんと近づいてきた
「あんたそのトートバッグどこで買ってきたのよ!
なにその?
ハイテングワールドって!
象が天狗の顔になってるし」
「ああこれ
天狗の里に行くって言うから、浅草橋でお出かけ用の服を買いに行った時に見つけちゃったのよね〜
もうこれしかないって
ちなみに、これ1200円」
「本当にあんたのセンスって良いのか悪いのか
今日だって結構可愛い格好してるじゃない
で、なんでそのトートバッグを選ぶ?」
エカテリーナが大笑いしている
私もつられて笑ってしまった
焚き火を遠巻きに囲み
大五郎さんの作った川魚やジビエ料理
そして、
すき焼き
川海老の天ぷら
私の好きなものばっかり
旅館予約してなかったのに
慰安旅行なんてかっこいいこと言って全然うまくいかなかったのに
だめな代表なのに
ありがとう
煙が目にしみる
お腹いっぱいになり、自分自身の機嫌が良くなったのがわかる
自分でも胃袋に支配される私の思考回路に笑ってしまった
ほっと一息ついて
最近ノアルが来ないのが頭に浮かんだ
「ノアルも連れて来てあげたかったな」
ボソって言ったら死神ちゃんが気になる事を言い出した
「まあ、幽体離脱した魂があんまりフラフラするのも危ないからね」
「危ないの?」
「悪い妖怪や悪魔に見つかったら、食べられることもあるよ」
「えっ……」
じゃあ来ないほうがいいか
夕食終えて
露天風呂に行けって追い出された
後片付け手伝おうと思ったのに
エカテリーナとわらしちゃんと3人で1番大きい露天風呂に入っている
湯気がすごい
「気持ちいいい!」
「スパシーバ!!」
「わらしちゃん泳いじゃダメ!」
KGBを開業してから
朝お弁当の準備を手伝って
昼間は、KGBの店番
お客さんあんまり来ないけど
夜は BARタイム
考えてみれば、
私ずっとあそこにいる
久しぶりに違う場所に来て、気分が変わって今までを振り返ることができたかも
遠くでくしゃみの声がした
突風が吹いた
湯気がスッと消える
山々の影が満天の星空を際立たせる
フクロウが鳴いてる
三人で泳いだ




