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アフター・テイルズ・クエスト  作者: 狛犬太郎
第一章 パーティ結成編

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第3話 あぁ素晴らしき一発屋

「「……はぁっ!?」」


 ジークとノイの驚愕のツッコミが夕暮れ時の平原に虚しく響き渡る。

 目の前には十数人のチンピラを文字通り一瞬で消し炭にした黒帽子の魔女。

 その魔女があろうことか俺たちを「仲間にしろ」と逆ナンパしてきたのだ。


(いや、待てよ……?)


 ジークはボロボロになっている自身の体と、遠くで炭になっているチンピラたちの残骸を交互に見つめた。


 ジーク:かすり傷で死ぬクソザコ駄鬼。

 ノイ:攻撃力は神だが打率1割のお荷物大佐。


 ……このパーティの戦闘力は実質的に現在マイナスを突破している。

 だが、もしこの目の前の魔女が仲間になれば、あのチート級の超火力で敵を近づかせずに一掃してもらえるのではなかろうか?


(これだ。この魔女を前衛(砲台)に据えれば、俺は後ろで立っているだけで桃太郎のところまで行ける……!)


「よし分かった! 採用だ! 歓迎するぞ、新規の仲間よ!」

「話が早くて助かるわ。私はメア。――今は無き世界最高の魔法都市マージ・ニアスの、最後の生き残りよ」


「へー、メアね。よろしく。……ん? 今、なんかもの凄く重たいバックボーンが耳をかすめた気がするけど、まぁいいや、よろしくなメア!」

「いいのかジーク!? 明らかに何か重大な伏線が張られたぞ!?」


 ノイが横でガタガタ震えているが、ジークはめんどくさいので全力でスルーした。

 実家を愛する引きこもり鬼の辞書に「他人の重い過去に首を突っ込む」なんて高尚な言葉は存在しないのだ。


「フッ、心強い仲間が増えたな。これで我がパーティの死角は無くなった!」


 ジークがドヤ顔でこん棒を肩に担ぎ直した、まさにその時。


「おい、いたぞ! 鬼の残党だ!」

「ひゃっほう! 今日はボーナスステージかよ!」


 これまた絶妙に空気を読まないタイミングで草むらから新たな敵がポップした。


【野生の人間(※レベル12の駆け出し冒険者パーティ)が3人 現れた!】


 剣士に魔法使いに弓使い。

 バランスの良い、いかにも「これから魔族を狩って美味しく経験値をいただきます」といった風体の中堅人間どもだ。


「げぇっ!? またエンカウントかよ! よしメア、新入りとしての初仕事だ! さっきのドカンと一発いくやつ、あの人間どもにぶちまけてやれ!」


 ジークはメアの背中に隠れながら意気揚々と命令した。

 さあ、魔法都市の力とやらを見せてみろ!


 しかし、メアは杖を構えるどころかフンスと誇らしげに薄い胸を張って誇らしげに言い張る。


「無理よ。私、一日に大技一発しか撃てないもの」


「……はい?」

 ジークの思考が数秒間フリーズする。

 メアは人差し指を立てて、さも当然のように解説を始めた。


「いい? 例えば私の最大MPが『80』だとするでしょ?」

「へぇ、それなりにあるじゃないか。で、さっきの火属性魔法『獄炎業火(インフェルノ)』の消費MPは?」

「『75』よ」

「残り『5』じゃねえか!」


 ジークの絶叫に、人間の冒険者たちが「え、何あいつら身内揉めしてんの?」と引いた顔をした。


「おい待て! 他に消費MPの少ない小魔法とか、初級の火の玉とかあるだろ! 水属性のピチャッとしたやつとか、風属性のそよ風みたいなやつとかさぁ!」

「無いわよ、そんな安っぽい魔法。私が覚えている魔法はね、氷属性なら絶対零度の猛吹雪で生態系を書き換える『終末の冬(ファフニール)』。雷属性なら一国を焼土にする『神罰の裁き(ジャッジメント)』。地属性なら大陸を割る『天崩地裂(ガイア・カタストロフ)』。風属性なら――」

「もういい! 聞きたくない! 使えるかそんな燃費の悪い核兵器ーーーッ!!」


 どれを撃っても消費MPが70以上の狂ったラインナップ。


「信じられねぇ……。そんな大層な魔法覚えておいてどうしてMP上限だけが一般人以下なんだよ」

「……MPの上限値は、幼少期の過酷な魔力訓練でしか伸びないのよ。でも私、子供の頃は魔道工学の『勉強』と『機械いじり』ばっかりしてたから、筋力も魔力量も全く育たなかったの。でも頭が良いから読んだだけで最上級の禁忌魔法を全部覚えちゃったのよね!」


 メアは「私は悪くない、環境が悪い」と言わんばかりにふんぞり返った。


 つまり、この魔女。

 知識と頭脳は世界最強のマッドサイエンティストなのに、ガソリンタンクが軽自動車以下なのだ。

 最新鋭の超巨大戦艦の主砲を、原付バイクのバッテリーで動かそうとしているようなものである。


「フッ、だが一発当たれば即死だぞ?」

「お前は黙ってろノーコン大佐!! 打率1割と一発屋が揃って何が最強パーティだ!!」


 絶望するジークだったが、ふと数分前の光景を思い出しメアに食ってかかった。


「待てよ! 魔法がダメなら、さっき乗ってたあの鉄クズ! 『魔導アーマー』とかいうやつはどうしたんだよ! あれで戦えよ!」

「ああ、あれ? 無理よ。あれは人間の戦場跡に落ちてた大破寸前のゴミを、私がたまたま拾って、ちょっとだけいじくって乗り回してただけだもの」

「拾い物の魔改造かよ天才か! じゃあ今すぐそれを直せ!」

「さっき崖から落とされて完全に粉々になったって言ったでしょ! 材料と工具一式が揃ってるなら話は別だけど、残念ながら今の私は身一つよ!」


「クソが! 使えるアセットが何もねえ!!」


「おい、よくわかんねえけど……今ならあの魔女、ガス欠で魔法撃てないんじゃねえか?」

 人間の剣士がニヤリと下卑た笑みを浮かべ、剣を抜いてじりじりと距離を詰めてくる。

 弓使いが矢を番え、魔法使いが詠唱を始めた。


「ノイ! メア! 考えるな、走れぇぇぇぇ!! 隣町まで全力疾走だ!!」


「ちょ、ちょっと待ってよ! 私は魔導アーマーが壊れて生身なのよ!? 体力測定はいつも学年最下位だったんだから――きゃあああ! 剣が! 刃物がすぐそこにぃぃぃ!」

「いいから走るんだメア! 俺の背中に隠れろ!」

「ノイ!お前は後ろじゃなくて敵を威嚇しろ!!」


 かくして、人類の英雄・桃太郎をぶっ飛ばすための旅は、仲間が増えたにもかかわらず「ただの逃走劇」へと逆戻りした。

 クソザコ鬼、ノーコン大佐、そして一発屋のポンコツ魔女。

 魔物一行は夕暮れの大平原を、泣き叫びながらひたすら爆走していくのだった。


【3人は 全力で にげだした!】



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