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クリアな色  作者: 椎名涼
5/7

5.協力

 沖縄の夏は台風が多い。その日は今年に入って三つ目の台風が上陸していた。朝から豪雨で、学校が休みとなり家にいたアキラは窓の外を眺めていた。


 ライリーは大丈夫かな。


 そんな心配が頭をよぎった。


 テレビをつけると、ニュースで台風情報が流れていた。あちこちで土砂崩れがあったらしい。その場所の映像が映り、アキラは凍りついた。見覚えがあった。ガジュマルの木。そこはライリーと初めて出会った場所だった。


 もし、ライリーがあの場所にいて、土砂崩れに巻き込まれていたとしたら……。


 アキラはカッパを着て、家を飛び出した。


 ガジュマルの木があった場所に到着した。付近の状況はひどかった。土砂崩れの範囲は想像していたより広く、どこかから流れてきた瓦礫が山になっていた。雨風が視界を遮る。雨粒が眼鏡について邪魔だった。アキラは眼鏡を外した。


 よく見れば気づくんだ。前もこうして見つけたんだ。


 慎重に辺りを見渡す。そこにいないとわかれば少しずつ場所を移動し、ライリーを探した。



+++++


 三十分ほど時間が経っただろうか。


 いた。


 豪雨の中に目を凝らすと、見えない何かがそこにいた。それが人間の姿だとすぐにピンとこなかったのは、その体勢が何を意味しているのか思いつかなかったからだ。羽織っている上着を両手で横に広げ、しゃがんでいるように見えた。まるで、何かを守っているかのように。そこには、瓦礫に埋もれた子犬が横たわっていた。


「ライリー!」


「アキラ……。助けてくれ! 子犬の上に瓦礫が乗っかっていて、俺一人の力ではどかせない」


「わかった。ライリーはそっちを持って! 行くよ! せーのっ!」


 二人で力を合わせ、瓦礫を動かした。その後、アキラが子犬を抱き上げ、救出。子犬は寒さで震えていたが、見たところ怪我はなく、無事だった。


「よかったぁ」


 ライリーが安堵した声を出した。力が抜けたように、その場に座り込んだ。


「見つけた!」


 誰かの声が聞こえた。視線を向けると、女性がこちらに走ってくるのが見えた。


「その子、うちの子なの。ちょっと目を離したらいなくなっていて、探していたところだったの。台風でこんな状況だし、何かあったらどうしようって心配で。あなたが助けてくれたのね?」


 女性はアキラを見て言った。ライリーはアキラの後ろに隠れ、気づかれないようにしている。アキラは女性に子犬を手渡した。


「見つけたのは僕じゃなくて、もう一人の人で。彼が最初に見つけて、一人では瓦礫を動かせられなかったから、誰か助けが来るまで自分がずぶ濡れになりながら、ずっとこの子の雨除けになっていたんです」


「そうなのね。その人は今どこに?」


「僕の後ろに……」


 ドンッと背中を叩かれた感触があった。


「えーっと、急いでいたみたいで、この子を助けた後、すぐに向こうに去っていきました」


 アキラは自分の後方を指差しながら、そう言った。


「お礼を言いたかったのに残念だわ」


「大丈夫です。聞いています」


 また背中を叩かれた。


「えっ?」


「いえ、何でもないです。僕の友達なので、今度会ったときに伝えておきます」


「そう。じゃあ、お願いするわ。二人ともこの子を助けてくれて、本当にありがとう」


 女性の声には、安堵と感謝の気持ちがこもっていた。腕の中で大人しかった子犬が、ぴょんと飛び降り、アキラの後ろに回った。子犬は「ワン!」と鳴き、何もない空間に頭をスリスリと擦り付ける仕草をした。


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