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錦江湾の火花、西野の「捲り差し」

第9話:錦江湾の火花、西野の「捲り差し」

2027年7月下旬

鹿児島・錦江桜島競艇場。沸騰する水面と、桜島の火山灰が舞う過酷なコンディションの中、福岡のエンターテイナー・西野貴志の真骨頂が炸裂した。

1. 4カドの閃光

「大時計、始動!」

4コース(4カド)に構えた西野の機体が、26,000という巨大なマブイを爆発させ、コンマ01の超絶スタートを決める。

「山口の雛鳥たち! 福岡の『強襲』は、熱かぞ!」

西野は100m以上ある助走距離を活かし、インコースの3艇をマブイの衝撃波だけでなぎ倒す「捲り」を仕掛けます。

2. 戦慄の「捲り差し」

しかし、西野の真の恐ろしさは単なる捲りではなかった。

大外から誠が「チルト3.0」で伸び、西野を封じ込めようとしたその瞬間、西野は機体を急激にバンクさせ、マブイの噴射方向を瞬時に切り替える。

「捲ると見せて、差す! これが俺の芸風ばい!」

西野の機体は、先行する誠とインコースの艇との間にできた、わずか数センチの「マブイの隙間」に吸い込まれるように飛び込みました。

これこそが、西野貴志の必殺技**「捲り差し」**。捲りきれるスピードを維持したまま、最内を最短距離で切り裂く神技だ。

西野の差しにより、誠の39号機は西野が放つ26,000マブイの熱気に直接晒された。

「あ、熱い……! エンジンが焼ける!」

機体の温度計がレッドゾーンを指し、誠に**異常振動症バイブレーション・シンドローム**の兆候が表れる。

「……誠、耐えろ。シロの浄化と俺の『無』で、西野さんの熱を逃がす!」

瓜生がマブイ0の特性を活かし、西野の放つ熱量を自身の機体の排熱として「肩代わり」した。

その刹那、誠の足元でシロが鋭く吠えた。シロは、西野の「捲り差し」によって生じた、水面の温度が一時的に下がった「冷たい水路」を見抜いたのである。

「そこか……! 俊樹、一気に行くぞ!」

誠は熱で膨張した蒸気圧を逆手に取り、ピストンが壊れる寸前のパワーを全てペラに叩き込んだ。

西野の「捲り差し」のさらに内側、沸騰する水面を切り裂く誠の**「熱血旋回」**。

レースは、誠が西野を鼻差で差し返してゴール。

ピットに戻ると、西野は機体から降りるなり大爆笑する。

「ハハハ! まさか俺の差しをさらに差し返してくるとは! 山口のコンビ、アンタたちは最高のエキサイティング・ボートや!」

西野は誠の肩を叩き、自分の機体に隠していた「福岡名物・激辛ハバネロ」を差し出した。

「これを冷却水に混ぜれば、次のレースでも気合が入るけんね! (※実際はオーバーヒートの原因になるため、菜奈に没収された)」

誠と瓜生、そして熱気で少し毛が膨らんだシロは、福岡の強豪を相手に勝ち取った勝利の重みを、桜島の夕闇の中で噛み締めるのだった。

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