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からくり競艇 ~黄金の波切り、魂のスロットル  作者: 水前寺鯉太郎
第2章:駆け出し編

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宮島の静寂、究極の「省エネ」決戦

第8話:宮島の静寂、究極の「省エネ」決戦

2027年7月初旬

広島・宮島競艇場。厳島神社の鳥居が見守る中、かつてないほど「静かな」優勝戦が始まろうとしていた。

注目は、山口支部の「持たざる」風雲児・速水誠と、神奈川の名門・遠山和也。

共にマブイ量が極めて少ない両者の対決は、観客のマブイ探査タブレットに機体の反応がほとんど映らないという、異常な事態を引き起こす。 [cite: 2026-01-22]

1. 遠山の「糸筋いとすじ」vs 誠の「精密制御」

「速水誠……君のマブイ使いは『節約』だ。だが、僕のは『純化』だよ」

遠山和也の機体、コア500 / 外付け1500のマブイが、まるで目に見えない極細の糸となって機体のボルト一本一本を締め上げる。

対する誠は、コア1000 / 外付け3000のマブイを機体の振動周期に同期させ、物理的な摩擦をゼロに近づける精密制御で応戦。

「大時計、始動!」

1号艇の遠山と6号艇の誠。

両者ともに、スタートライン通過時のマブイ噴射音が全くしないのである。

遠山はマブイを関節の潤滑にのみ使い、潮の流れを「重力」として利用して加速。

誠は、先行する瓜生俊樹がマブイ0で切り裂いた「無の航跡」に乗り、エネルギー消費を極限まで抑えたまま最高速に達した。

「なっ……機体の反応が消えた!? 二人ともどこにいるんだ!」

後方を走る山崎征也(10,000マブイ)や實森ゆえ(3,500マブイ)は、あまりにもマブイの残滓を残さない二人の「透明な走り」に、攻撃の糸口すら見つけられない。

3. 「省エネ」の極致、宮島ターン

第1ターンマーク。宮島の激しい干満差による「うねり」が襲いかかる。

遠山はマブイの糸で機体バランスをミリ単位で固定し、水面をアメンボのように滑る**「ステルス旋回」**を披露。

一方、誠はここで勝負に出た。

「……悪いな、遠山くん。俺にはこれがある!」

誠は節約して貯め込んだマブイを、一気に**「チルト3.0」**の噴射口へ叩き込む。

これまで「無」を装っていた39号機が、一瞬だけ咆哮を上げ、遠山のインコースを強引にこじ開けた。

「……っ! 旋回の直前までマブイを『冬眠』させていたというのか!」

遠山が驚愕する中、誠はシロが吠えて知らせる「潮の周期」の隙間を突き、最小限のエネルギーで最大の旋回半径を描いたのだった。

結果は、わずか数センチの差で誠の差しが届き、山口コンビの勝利。

ピットに戻った遠山は、自身の絶縁スパナ(瓜生のものと同型)を置き、誠に手を差し出した。

「完敗だよ。僕はマブイを『消す』ことばかり考えていたが、君は『消した後にどう爆発させるか』を考えていた……。征也が君をライバルと認める理由が、今分かった気がする」

誠はシロを抱き上げ、汗を拭いながら笑った。

「俺たちは持っていないから、一滴のマブイも無駄にできないだけさ」

宮島の夕日が、勝者と敗者の機体を黄金色に染め上げていった。

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