高松の旋風、三連単ラインvs女王の30mダッシュ
2027年6月中旬
香川高松競艇場での、優勝戦。
降りしきる雨の中、瀬戸内の水面が荒れ狂う。
山口支部の「山口コンビ」――誠(6号艇)と瓜生俊樹(5号艇)の前に、香川の女王・平田千夏が立ちはだかる。
千夏の必殺技、「30mラインからのダッシュスタート」。
上田校長を彷彿とさせる助走距離。
58,000という膨大なマブイを誇る彼女が30mも後ろから加速すれば、後続はマブイの衝撃波だけで粉砕される――それが鉄則だった。
「無」のライン、連結
「……俊樹、準備はいいか」
「ああ。一貴さんの『無』と、シロの『浄化』……全部使うぜ」
ピット離れ。
誠と瓜生はあえて最後方に並ぶ。
二人の間には、一貴から教わった「機体との対話」による、マブイを一切介さない物理的な**「共振ライン」**が静かに形成されていた。
雨音さえ飲み込むような、無音の連帯。
一方、30mラインからスタートする平田千夏。
「菜奈の教え子がどこまでやれるか、見せてもらうわよ!」
彼女がスロットルを握ると、機体から黄金のマブイが噴出し、雨粒を瞬時に蒸発させて「炎の道」を作り出した。
水面が沸騰するような轟音とともに、千夏の機体が猛烈に加速する。
シロの「リズム」と誠のチルト
「ワンッ! ワンッ、ワンッ!!」
誠の足元で、シロが吠え始めた。
――雨のマブイ密度が一瞬だけ最低になる「隙間」を、犬の鋭い感覚が捉えていた。
誠はその吠え声の合間に、**「チルト3.0」**を起動。
「……今だ、俊樹! 潜れ!!」
瓜生がマブイ0の特性を最大限に活かし、千夏の「黄金の衝撃波」の波の裏側に滑り込む。
そこはマブイが一切存在しない「真空の道」。
瓜生の機体が音もなく道を切り開き、誠がその隙間を爆速で貫く。
全速旋回、交差
第1ターンマーク。
千夏が58,000マブイを一点集中させ、水面をえぐるような「全速旋回」を決める。
「決まった……!」
勝利を確信したその瞬間――
彼女の機体の真下から、誠の39号機が「チルト3.0」の爆音とともに突き抜けてきた。
「なっ……私のマブイの『影』を走ったっていうの!?」
瓜生が「無」で道を作り、誠がその「隙間」を貫く。
山口支部の**「三連単ライン(一貴・瓜生・誠の系譜)」**が、香川の女王の絶対的な出力を、純粋な「技術と連携」で上回った瞬間だった。
レース終了後、ずぶ濡れでピットに戻った誠たち。
そこには、悔しさを噛み締めながらも、香川名物の最高級讃岐うどんを差し出す平田千夏の姿があった。
「……負けたわ。菜奈が『アイツら、変態やけん』って言ってた意味、よく分かったわよ」
千夏が差し出したのは、極上のコシと喉越しが自慢の「讃岐うどん」。
誠と瓜生、そしてシロは、プロとしてまた一つ、大きな「壁」を乗り越えた実感を噛み締める。
雨が止み、瀬戸内の空に夜明けの光が差し始めた。




