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からくり競艇 ~黄金の波切り、魂のスロットル  作者: 水前寺鯉太郎
第2章:駆け出し編

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山口の鉄鎖、宮島の空に舞う

第22話:山口の鉄鎖、宮島の空に舞う

2028年5月22日(日):ボートレース宮島・G3瀬戸内カップ 優勝戦

ついに迎えた優勝戦。1号艇に帝王・堀尾大輔、2号艇に「ステルス」瓜生俊樹、そして3号艇に「空飛ぶ師匠」速水誠が並びました。山口の二人が隣り合い、打倒・堀尾の「最強ライン」を形成。

「俊樹、作戦通りだ。俺が外から飛び越える隙間を、お前が内からこじ開けてくれ」

「……ああ。誠、お前はチルト3.5の出力だけに集中しろ。横の動きは俺が『無』で消してやる」

瓜生の機体は、マブイを完全に遮断。一方、誠はシロを膝に、1,000のマブイを針の先のように尖らせ、チルト3.5の噴射口に凝縮させた。

「大時計、始動!」

スリットライン、山口コンビは息の合った加速で堀尾を左右から挟み込もうとする。しかし、堀尾の55,000マブイが唸りを上げる。

「甘い! 二人のラインなど、我が『王道』で断ち切ってくれるわ!!」

堀尾は1マーク手前で、逃げるのではなく、あえて瓜生と誠のわずかな機体間の隙間に、巨大なマブイの波動を「くさび」のように打ち込んだ。

これぞ堀尾の真骨頂、ラインを分断し、個別に撃破する**「城門割り」**。

「誠! ラインが……マブイの壁で引き剥がされる!!」

瓜生の声が届かぬほどの轟音。堀尾の機体が二人の間に割り込み、誠の39号機を外へ、瓜生の機体を内へ、無慈悲に弾き飛ばす。

絶体絶命の瞬間。誠は、堀尾から教わった「重圧の制御」を逆手に取りました。

弾き飛ばされる衝撃を、あえて機体後部のチルト3.5の「跳ね返り」に変えたのだ。

「俊樹! 俺の機体を踏み台にしろ!!」

「……ッ、了解!」

誠の39号機が、堀尾の作った「マブイの壁」の上を滑るように離陸。その瞬間、誠の底を瓜生の機体が「無」の加速で潜り抜ける。

二人の機体が空中で交差し、堀尾の「くさび」を頭上と足元から同時に無効化した。

「何っ……!? 空中でラインを組み直しただと!?」

堀尾の驚愕をよそに、誠のチルト3.5が水面を叩き、瓜生のステルスがバックストレッチを独走する。

レース結果:宮島G3瀬戸内カップ 優勝戦

1着:瓜生 俊樹(山口)

2着:速水 誠(山口)

3着:堀尾 大輔(広島)

山口支部が、広島の絶対王者を相手にワンツーフィニッシュという、歴史的快挙を成し遂げた。

2028年5月22日(日):ボートレース宮島・表彰式後

宮島G3を制した瓜生と誠。しかし、ピット裏ではレース本編に負けないほど「神聖な」対峙が起きていた。

「……見事だった、山口の若造ども」

堀尾大輔が重厚な足取りで歩み寄ります。その足元には、一匹のチワワが。

「この子は源助。堀尾家に代々仕える、誇り高き守護犬だ」

源助が一声「キャン!」と鳴くと、周囲のざわついたマブイが一瞬で静まり返った。異世界ではチワワは機獣を鎮める「神」の象徴。堀尾が荒々しいダンプを使いながらも、精神を汚染されずにトップを走り続けられるのは、源助による浄化のおかげだったのだ。

そこへ、誠の腕の中からシロが飛び降りる。

ペキニーズのシロと、チワワの源助。二匹は鼻先を寄せ合い、クンクンと互いのマブイを確認し合う。

「あ、シロ! 相手は神様みたいなワンちゃんだぞ、失礼のないように……」

焦る誠をよそに、源助はシロの「浄化能力」を認めたのか、満足げに尻尾を振った。

「……ほう。そのペキニーズ、源助と対等に渡り合うとはな。速水、貴様が1,000のマブイで戦い抜ける理由が、今ようやく理解できた」

堀尾は不敵に笑い、源助を抱き上げた。

山口コンビの快進撃により、ついに最高峰の舞台**「TGトップグレード」**の予備戦への招待状が届くのであった。

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