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名門の重圧、安芸の厳島決戦

第20話:名門の重圧、安芸の厳島決戦

2028年5月:ボートレース宮島・G3瀬戸内カップ

誠と瓜生の「山口コンビ」がG3への挑戦権を手にし、最初に乗り込んだのは広島の聖地・宮島。そこには、広島支部の絶対的エース、堀尾大輔が待ち構えていた。

「……山口の若造が、チルトを跳ね上げて飛んでいるそうだな」

ピットに響く重厚な声。35歳、脂の乗り切った堀尾大輔は、55,000という膨大なマブイを一切無駄にせず、機体の「剛性」を高めることに注いでいます。

彼のスタイルは、誠の「奇策」や瓜生の「消失」とは対照的な、正面突破の**「剛腕旋回」**。

「堀尾師匠、あまりいじめないであげてください。彼ら、私の友達なんです」

弟子の實森ゆえが控えめにフォローしますが、堀尾の鋭い眼光は変わらない。

「ゆえ、友達だからこそ『格』の違いを教えねばならん。名門の走りが何たるかをな」

宮島は潮の満ち引きにより、大鳥居が水面に浮かぶ幻想的なレース場。しかし、レーサーにとっては刻一刻と変わる潮位と風が牙を剥く。

「誠、堀尾さんのマブイ……まるで巨大な城門だ。俺の『無』でも、こじ開ける隙間がない」

瓜生が珍しく弱音を吐くほどのプレッシャー。誠はシロを抱き上げ、対岸の鳥居を見つめた。

「……チルト3.5でも、あの城門は突き破れないかもしれない。でも、俊樹。俺たちには、あかりやあおいから学んだ『重さ』と『軽さ』の使い分けがある」

そこに、誠の弟子・野田あかりが割り込みます。

「うっわ、堀尾センセー、マジで圧が令和じゃないんだけど! でも、うちの誠師匠の方が絶対にエモい走りするから!」

あかりの挑発に、堀尾は不敵に笑う。

「面白い。ならば、その『エモい』とやらで、我が堀尾家の門を叩いてみるがいい」

宮島の潮は満ち、世界遺産の大鳥居が水面に浮かび上がっていた。

誠と瓜生、そしてあかりが出場する予選。隣には、広島の絶対的王者・堀尾大輔が圧倒的な存在感を放っている。

「大時計、始動!」

スタートは誠がチルト3.5でトップを取り、一気にインを奪いにいく。しかし、堀尾は微動だにしない。彼の機体から放たれる55,000マブイは、まるで巨大な城門のように誠の進路を遮る。

「……堀尾さんのマブイは、物理的な壁だ!」

誠はバックストレッチで最高速に達するものの、堀尾の作る強大な引き波とマブイの壁に阻まれ、インの堀尾を捲りきることはできない。

そして運命の第2ターンマーク。

誠は堀尾の内側を差し抜けようと、チルト3.5を最大噴射。機首をさらに跳ね上げ、水面から浮き上がるような「スカイ・ハイ」で隙間を縫う動きを見せる。

「誠師匠、行けーーっ!!」

ピットで野田あかりが叫び、實森ゆえも固唾を飲んで見守ります。

しかし、堀尾は誠の動きを完全に読んでいた。

「小賢しい! 名門の走りは、奇策ではない『王道』だ!!」

堀尾の機体が、巨大な城門のように誠の機体に迫る。まるで水上で戦車が突進するかのような**「堀尾ダンプ」**。

ドォンッ!!

誠の39号機は、堀尾の圧倒的な質量とマブイの衝撃に叩き潰され、ターンマークで大きく跳ね上がった。

「……これぞ、広島の『王道』。山口の若造に、奇策が通用すると思うな」

堀尾は振り返ることもなく、そのまま独走態勢に入る。

誠は何とか体勢を立て直し、瓜生に次ぐ3着でゴール。

レース後、ピットに戻った誠の機体には、堀尾のダンプを受けた箇所に大きな凹みができていた。

「誠……大丈夫か!?」

瓜生が駆け寄ると、誠は悔しさに唇を噛み締めながらも、堀尾の圧倒的な強さを理解していた。

「……これが、名門の壁。ダンプ一発で、俺のチルト3.5が完全に潰された……!」

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