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スリットの稲妻、安貞の咆哮

第18話:スリットの稲妻、安貞の咆哮

2028年4月:ボートレース下関・準優勝戦

誠の初優勝から数ヶ月。下関に再び、大峰グループの「次なる刺客」が送り込まれた。

1. 0秒の刺客

「およよ、誠くん。次はウチの『スタートの天才』が相手ばい」

大峰が連れてきたのは、静かに集中を高める安貞雄一。彼は、コアと外付け合わせて45,000のマブイを全て「大時計との同調」に注ぎ込む。

「速水さん、チルト3.5は凄いです。でも……スリットで置き去りにすれば、飛ぶ暇もありませんよ」

安貞の言葉通り、彼は0mラインからの立ち上がりが異常に速く、他艇が加速する前に「勝負を決める」スタイル。

対する誠は、シロを膝に乗せてモニターを凝視していました。

「シロ、安貞くんのマブイ、どう見える?」

「……ワン!」

シロは、安貞のマブイが「一瞬の爆発」に特化している一方で、その後にかすかな「枯渇の揺らぎ」があることを見抜いていた。

「安貞、マジ生意気なんだけど! 誠師匠の邪魔させるわけないっしょ!」

同じレースに出場する弟子の野田あかりが、これまでにない真剣な表情で39号機の隣のボートに乗り込んだ。彼女は誠から教わった「マブイの引き算」を使い、安貞の爆発的なスタートにわざと自分のマブイを干渉させ、誠の「飛ぶための隙間」を作ろうと画策する。

そのなかでちゃっかりG3挑戦権を獲得した男がいた。

相棒の瓜生俊樹である。

主役たちが派手な火花を散らす影で、一人の男が「音もなく」水面を切り裂いていた。

「大時計、始動!」

12秒計が回ると同時に、大峰グループの刺客・安貞雄一が咆哮しました。45,000のマブイを爆発させた「0秒スタート」が、他艇を置き去りに。

「逃がさないっしょ!」

弟子の野田あかりが、誠から学んだマブイ制御をあえて乱し、安貞の加速を削るジャミングを展開。

その外側から、誠がチルト3.5で「離陸」の姿勢に入る。

場内は、この「次世代機体」たちの激突に総立ちとなった。

しかし、その激戦区のわずかな「隙間」を、スルスルと抜けていく機体が。瓜生俊樹。

コアも外付けも「マブイ0」である彼の機体は、誰のマブイ・レーダーにも引っかからない。安貞の爆発的なプレッシャーも、あかりの撹乱も、マブイを持たない瓜生にとっては「ただの風」に過ぎなかった。

「……マブイがないから、波の『脈動』だけが聞こえる」

瓜生は、安貞とあかりが競り合い、誠が大きく外に膨らんだ瞬間、1マークの最内、わずか数センチの**「死角」**を突く。

「……なっ!? 誰だ、いつの間に内に!?」

安貞が気づいた時には、瓜生の機体は「静寂」と共にバックストレッチで先頭に躍り出ていた。誠のチルト3.5による強襲も届かず、結果は瓜生の1着。

「……悪いな、誠。今回は俺が貰った」

ピットに戻った瓜生は、いつものポーカーフェイスのまま、ポツリと呟いたのだった。

この勝利により、瓜生俊樹はこれまでの地道な着順の積み重ねが実を結び、ついに格上の舞台**「G3(企業杯クラス)」への挑戦権**を正式に取得した。

「俊樹、おめでとう! 完全にやられたよ」

誠が苦笑いしながら握手を求めると、瓜生は小さく頷き、

「……次は同じ舞台だ。足は引っ張るなよ、師匠」

と、誠を「師匠」と呼んで茶化す余裕まで見せる。

一方、安貞は大峰の影に隠れて「マブイ0に負けるなんて……」と膝をつき、あかりは「俊樹サン、マジでステルスすぎてエグいんだけど!」と大興奮したのだった。


駆け出し編、完

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