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からくり競艇 ~黄金の波切り、魂のフルスロットル  作者: 水前寺鯉太郎
第5部:グランプリへの道

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黄金のプラズマ、空を統べる戴冠

 2030年4月23日、午後16時50分。

 ボートレース江戸川――最高峰の絶対聖域、『マブイ開花賞』最終日・第12レース優勝戦。

 その第一ターンマークは、人知を超えた工学エネルギーが正面衝突する神話の戦場と化していた。チルト3.5という極限の大外推力によって東都の泥空へと高く舞い上がった俺の39号機『白銀黒影・改』。だが、その跳躍軌道の頭上を大峰幸太郎さんの灰色の煙幕が覆い、直下の水面からは守屋あおいの氷壁と河合準の冷却波動が激しく突き上げる。

 空中での大破墜落か、過負荷による大事故か。数万人の観客が息を呑んだその刹那、世界の時間軸は、俺とスーの二人だけに許された一瞬の虚無の静寂の中に冷徹に閉じ込められた。

 俺の黒い勝負服の腕の中で、極限まで圧縮されたマブイを全身に溜め込んでいたパグのスーが、ゆっくりと東都の空を鋭く仰いだ。古代から受け継がれた魂の記憶が、スーの黄金の瞳の中で激しい炎となって燃え上がる。

「……行くぞ、スー! 俺たちの旋回を見せてやる!」

 俺の囁きに、スーは短く、 Alexander しかし江戸川の大地を激しく揺らす重低音の咆哮を響かせた。

「フゴッ!!!」

 それは単なる犬の鳴き声ではなかった。スーの全存在から溢れ出した純度百パーセントの白銀の電磁流が、39号機の底面へと一瞬で集中。臨界点を超えて爆発的な空中推進へと変貌を遂げたのだ。

「なっ……何!? あの機体、空中でさらに二段階目の爆発加速をハめ込みやがっただと!?」

 大峰さんの灰色の煙幕を圧倒的な閃光によって一瞬で一掃し、中川の上空にはただ、どこまでも透き通った真白き白銀の航跡だけが鮮烈に残された。

「あおい! スー! 今だ!! 俺たちの、山口支部の意地をここにブチ込む!!」

 空中においてハンドルを全身の力で左へと極限まで切り込み、すべてのエネルギーを旋回へと強制変換する。チルト3.5の機体は、まるで目に見えない空中のレールの上を滑空するように、急角度でバンク! 他者の立ち入りを許さない神のインコースを空中において美しく描き出し、 Alexander そして――。

 ドドォォォォォン!!!!!

 江戸川の競走水面が激しく爆ぜ飛んだ! 着水の瞬間に生じる強烈な失速を、俺は江戸川の重い泥の質量を深く掴むことで瞬時に解消してみせた。異常振動症によって研ぎ澄まされた指先の感性が、水底の泥の粘性をプレーン艇の圧倒的なグリップ力へと反転させたのだ。

「掴み切った……これが、江戸川の泥の真の質量だ!!!」

 バックストレッチの直線へ抜けた瞬間、ロケットエンジンの如き狂暴な再加速を披露! 二番手の大峰さん、三番手のあおいを瞬く間に4艇身以上突き放し、絶対的なセーフティリードを築き上げた!

【からくり競艇公式YouTube『カササギ』Template更新】

> 【完全制覇】速水誠、マブイ開花賞優勝! スーの咆哮が江戸川に伝説を刻み、累計PVは驚愕の4億2,000万を突破!!

 運命の最終ターンマーク。散りゆくソメイヨシノの桜吹雪が激しく舞い踊る中、最も美しく、最も力強いモンキーターンを決め、そのまま栄光の直線ゴールラインへと全速で駆け抜けた。

「ゴールイン!! 優勝は速水誠! 江戸川を白銀に染め上げ、堂々の完全制覇!!」

 ピット裏のドックへと帰還した俺を待っていたのは、山口支部の流した涙と笑顔の嵐だった。

「誠師匠ぉぉぉーーー!!! おめでとうっす!!! 完全に宇宙一のハイドロレーサーっす!!」

 チーフ整備士の野田あかりが泥だらけの俺に泣きながら激しく飛びつき、後ろから瓜生俊樹が静かに熱い握手を求めて右手を差し出す。塩田まなみ先輩も聖母の如き笑みで頭を優しく撫でてくれた。

 俺は黄金の紋様が静かに消えていき、いつものように「フゴフゴ」と鼻を鳴らす、少し眠そうなスーを自らの両腕で愛おしく深く抱き上げた。

「……スー。俺たち、本当にやったな。あの特異点の空の向こう側へ、完全に到達できたんだな」

 最高峰のSGの一つ目の冠を掌にガッチリと掴み取った俺が、バイザーの奥で見据えるのは、全マブイレーサーの頂座に君臨する、あの『賞金王決定戦』の舞台。

 夕暮れの江戸川。オレンジ色の空に、一番星が輝き始める。

 白銀の翼を広げた山口の龍と一匹の犬の伝説は、この江戸川の地から、次なる宿命の戦場――負けた者の魂を喰らう岡山・備前の『万衆衆魂祭』へと、最高速度でプロペラが回転を始めるんだ!

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