表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
からくり競艇 ~黄金の波切り、魂のフルスロットル  作者: 水前寺鯉太郎
第3部:誠の試練編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
102/185

波切・双龍(なみきり・そうりゅう)

二〇二九年七月十一日。ボートレース宮島――G1宮島ダービー、優勝戦。


 準優勝戦では蔵野剛さんの「金剛一閃」を波切旋回の逆位相で相殺し、辛うじて一着を確保した。でも正直、手応えは薄かった。あかりが深夜まで「玉ノ井」の数式を叩き直し、スーが整備室の床で丸くなりながら俺を待っていた。その二つの温もりだけが、今日の俺を動かしている。


 優勝戦、一号艇・河田元気さん。二号艇・俺の三十九号機。

 公式チャンネル「カササギ」のPVカウンターは二億を突破し、地球規模の衆望が水面へと降り注ぐ。


 河田さんが放つ「黄金結界ゴールド・バリア」。近づくものすべてを跳ね返し、ハイドロジャイロを狂わせる絶対の要塞。俺はあえて舳先を河田さんの真隣へ固定した。


「ST【.〇一】!!! 両者、神の領域のタッチスタートだぁぁ!!!」


 河田さんが完璧な先マイを披露し、巨大な黄金の引き波を撒き散らす。第93話の再現だ。あの時は弾き飛ばされた。でも今は——。


「斬る……。黄金の盾ごと、この海を、運命の数式を!!」


 黄金の引き波の最も密度の高い核に突っ込み、そのマブイの流動を逆に推進力へと電算反転。真空の超高速反転を敢行した三十九号機が、二本の白銀の航跡で黄金の盾を左右に真っ二つに引き裂いた——


「波切・双龍なみきり・そうりゅう」。


「抜けたぁぁぁ!!! 二コースから速水誠! 王者・河田の懐を斬り裂いたぁ!!」


 バックストレッチ、並びかける二艇。最終二マーク、河田さんの追撃を波切のダウンフォースで完封した俺は、誰よりも早くゴールラインを駆け抜けた。


「……見事だ、誠くん。君が、新しい時代の「理」だ」


 無線のノイズに混じって届いた、王者からの一言。俺はそれへの返事ができなかった。口を開いたら、何か溢れてきそうだったから。


 ピットに帰還した瞬間、あかりが駆け寄ってきて、俺の胸に頭をぶつけるようにして飛び込んできた。


「師匠……! やったっすよ……やったっすよぉぉ……!!」


 あかりの肩が震えていた。泣いているのか笑っているのか分からない。スーがその足元でフガフガと短い尾を振り続けていた。俺は、二人の温もりをただ受け取った。


「G1宮島ダービー優勝!! 速水誠、宮島の神域でG1初タイトル獲得!!」


 実況の声が宮島の夕空に響いた。

 夕陽に輝く厳島神社の大鳥居に向かって、静かに一礼する。G1という舞台で初めて一着を取った。でも俺の瞳は、すでにその先にある、さらなる最高峰SGの舞台を見据えていた。


「次は、SGだ。スー」


 スーが「フンッ」と一度だけ鼻を鳴らした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ