表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
からくり競艇 ~黄金の波切り、魂のフルスロットル  作者: 水前寺鯉太郎
第3部:誠の試練編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
101/185

黄金の盾と死の組

二〇二九年七月十日。ボートレース宮島――G1宮島ダービー予選最終日・第十二レース。

 公式チャンネル「カササギ」のPVカウンターは一億九千万を刻み、画面の向こう側の熱狂は、物理的な大気圧となって宮島の水面を支配していた。


 一号艇・河田元気さんは、アイドリング状態から黄金の粒子を霧のように噴出させていた。彼が編み出した絶対防壁「黄金結界ゴールド・バリア」は、「絶対逃走」という元来の逃げの技術を宮島の干満差による水圧変化へと応用した進化系だ。背後の波を物理的な壁へと変質させる、まさに絶対の要塞。


 対する二号艇・俺の三十九号機は、スーとのバイオリンクを極限まで深め、荒れた波の音をマブイの拍動として取り込んでいく。


 宮島の干満差を逆利用する発想を、あかりと深夜に練り上げた新技だ。河田さんの環境操作を波ごと斬れば無効化できる——そう読んでいた。


 大時計の針がゼロへと加速する。


「一号艇・河田元気――ST【.〇二】!!!」

「二号艇・速水 誠――ST【.〇三】!!!」


 スリットを抜けた瞬間、俺はあえて河田さんが作り出した「硬い波の壁」に対し、機体のエッジを鋭角に突き立てる――「奥義・波切旋回なみきりせんかい」を敢行した。


 だが、河田さんは不敵に笑う。


「甘いよ、誠くん! 私はこの瀬戸内で、何万回とこの気まぐれな波を越えてきた!」


 河田さんがスロットルを握り込むと、黄金の粒子が潮流と共鳴。俺が波を斬ろうとした瞬間に、その頂点ピークを巧妙にずらし続ける。


「なっ……波の座標が、逃げていく……!?」


 これこそが、絶対王者が誇る「環境操作」の極致。コンマ数秒のズレだが、それはからくり競艇において絶望的なまでの「経験の壁」だった。

 結果は二着。辛うじて準優勝戦への切符を手にしたが、勝てなかった。


 夕刻、準優勝戦の番組表が発表される。第十一レース――それは「死の組」と呼ぶにふさわしい猛者たちの集結だった。


 誠の白銀黒影を封じんと、二号艇に座する蔵野剛さんが冷たい笑みを浮かべる。


「速水誠……。お前が波を斬る前に、二コースからその水面ごと金の理で固め、お前の首を刎ねてやる。宮島の海は、広島のものだ」


 カササギのカウンターは一億九千万を超えた。全世界が見つめる中で、誠の「真の王への試練」が、いよいよ幕を開けようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ