大外一気の猛攻、島原攻防戦
第10話大外一気の猛攻、島原攻防戦
2027年7月28日(水):長崎島原競艇場・予選最終日
時刻は15時45分。
雲仙普賢岳を背にした大村湾の水面は、午後からの西日で黄金色に輝き、水温は30度を超えている。
「……誠、39号機のボイラーが限界だ。この暑さでマブイの冷却が追いつかない」
瓜生俊樹が、自身のタブレットに表示される蒸気圧の警告赤ランプを誠に見せる [cite: 2026-01-22]。
1. 長崎の「大外一気」、森由美子の咆哮
「山口の雛鳥たち! 夏の島原は、熱かぞーっ!」
地元・長崎支部の森由美子が、マブイ計18,500を全開にして大外6コースから咆哮を上げる。
森のスタイルは「大外一気」。彼女の放つマブイは、真夏の湿った空気を切り裂き、物理的な「風」となって他艇を押し流す破壊力を持っていた。
2. シロの「夏バテ」と意外な救世主
誠の足元で、シロも流石にこの暑さでバテ気味だ。
しかし、誠が初賞金で買った「特製マブイベル」が、森の強襲によるマブイの乱れを察知して激しく鳴り響く。
「……ありがとうシロ。俊樹、作戦変更だ。西野さんからもらった『ハバネロ』は使わないが……あの『熱』を逆利用するぞ!」
3. 「チルト3.0」真夏の昇龍
「大時計、始動!」
森由美子が文字通り「一気」に捲りに来る。その時、誠はあえて森の引き波の「最も熱い部分」へ機体を突っ込ませた。
「……今だ! 排気バルブ、全開!!」
森が撒き散らした熱マブイを、瓜生が「無」の整流板で誠のエンジンへと誘導。
誠は溜まった蒸気圧をチルト3.0の噴射口から一気に解き放ち、水面から機体を浮かせた。 [cite: 2026-01-22]
「なっ……機体が跳ねた!? 誠くん、それじゃ曲がれないよ!」
森が驚愕する中、誠は空中での慣性を利用し、森の捲りのさらに外側を「飛び越える」ようにして旋回した。
これこそが、酷暑の島原で編み出した新技――「昇龍・チルト旋回」。
レース結果:2027年7月28日 16時00分 確定
1着:速水 誠(山口)
2着:森 由美子(長崎)
「……負けたばい。まさかウチの捲りを『踏み台』にされるとはね」
森は悔しそうにしながらも、地元のカステラを誠と瓜生に差し出した。
「でも次は、もっと熱い**『長崎・佐世保』**が待っとるよ。そこには、ウチより気が短い先輩たちが山ほどおるけんね!」




