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奴隷日記  作者: 幽霊配達員
白の書
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99/108

掻っ攫う覚悟

 今日の朝も子虎の朝シャンから始まる。

 眠気をスッキリと覚ましてあげて、いつものスッキリした香りを髪に纏わせて、みんなと一緒に朝食を食べる。

 出勤するのを見送ってから、子虎と2人で身体を動かし倒す。

 庭でバレーやバドミントンをやって、コートのある公園へ出かけてテニスもやって、ボウリングを1ゲームだけ競って、アレもコレも楽しくて、アレもコレもやり足りない。

 楽しい時間を過ごす度に、一緒に遊べる時間がなくなっていく。

 その事実が、太陽が沈みゆくと共に大きく実感できてしまう。

 夕焼けに伸びる影が、昇り始めた薄い月が、冷えてきたそよ風が、寂しさを際立たせる。

 膝に手をやって息を荒げているんだけれども、まだまだ足りない。遊び足りない。

「そろそろ帰ろっか、優太くん。今日はお店のご飯を買って帰ろう」

 元気のない微笑みで、細く小さな腕を俺に伸ばす。

 俺よりも遙かに小さい身体をしているのに、どこまでも従いたくなる提案をしてくれる。

 俺は、まるで駄々を捏ねてる子供だな。圧倒的な体力差と精神で、子虎は俺を見守ってくれている。

 名残惜しいけどここまで、かな。

 遊びを終わり、華奢で温かい手を取って帰路につく。

 お店で晩ご飯を買ってから、子虎の背中に抱きついてホウキで飛ぶ。

 足がキリキリ痛い。瞼が重い。気を抜くと眠ってしまいそうだ。

「ねぇ、優太くんはまだ迷ってるの?」

 前を向いたまま、伸びた影に乗せて声を投げかけてくる。

 決められない。千羽も、亀夜も氷竜も子虎もみんな大切で、誰か一人に天秤を傾けようとした瞬間、他の3人を見捨てるのか? ってなって。

「そっか。じゃあまだ私にもチャンス残ってるね。優太くんはそのまま迷っててよ。そしたら、私が掻っ攫ってあげるから」

 どこか感情を押し殺した声色は、黄昏を帯びているように感じた。

 まっすぐ前を見て振り向かない子虎。振り向くのを躊躇っているのか、或いは突き進む覚悟を決めたのか。

 もしも迫られる選択を恋愛と呼ぶのなら、俺は相当向いていないな。心が濃霧に阻まれて行方不明になっちまってんだから。

 世の家庭を持っている夫婦ってヤツは、光も射さない、濃い霧の中で出会って、手を繋いで、一緒に突破する為に進んでるんだろうな……

 人生を一緒に迷える誰か、か。

 そう考えるとゴールだけすればいい俺は、かなりズルしてるよな。

 子虎に掻っ攫ってもらうのも楽かもしれないけど、俺の意志で未来を選ばなきゃいけないんだ。

 薄暗い濃霧の中でも、未来を目指して歩くんだ。

 きっと未来だって、俺を待っていてくれるはずだから。

 帰ってから千羽に文句を言われ。まともなご飯を作れる体力ぐらい残しときなさいって。

 そして他のみんなから睨まれてたよ。

 ホント千羽はブレないな。

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