寄り添う漆黒
すっかり温かく、風も穏やかになってきたこの頃。若草色が目に優しく、青い匂いが鼻をくすぐる桜色の季節ももう中盤。
俺の奴隷としての直感が、次の休日を運命の日と囁いてくる。なのに優柔不断なせいで、未だに誰に託せばいいかを決められていない。
もう刹那家4姉妹個人個人の休日は後1日ずつしか残っていないのに……
みんなにはもう言ってある。俺の婚礼生誕の儀、予定日を。
そんな亀夜との最後の休日なんだけれど、驚くほどいつも通りで落ち着いていた。
いや……いつもより一緒にいる時間が長かったかもしれない。朝起きてくるのはいつも通り遅かったんだけどな。
特に何をするでもなく近くで読書をしていて、時に話しかけたりかけられたり。
お買い物には一緒についてきて、スーパーで普段は買わないシール入りのウェハースチョコを一個買って、1/24で出たノーマルシールを宝物にすると微笑んだ。
きっと亀夜の子供は、落ち着いていて頭のいい魔女になるんだろうな。静かにちょこちょこ背中にくっついてきて、穏やかで安らぐ空気を作り出してくれる。
イメージは安直だけれど、今の亀夜をそのまま園児にした感じ。俺の乏しい想像力だとコレが限界。
頭を撫でる事ができないどころか、朧気でモヤモヤした塊。
お昼から亀夜は、庭に出て読書を嗜む事に。側でお茶を淹れながら静かに付き添う。ゆったりとした時間が流れる。
「そう言え……ば。この庭を整えさせたのが、優太との始まりだった……な」
視線を本から庭に流しながら、感慨深く言の葉を紡ぐ。
荒れ果てた庭を、亀夜との初めての休日に1日で整えたんだっけか。
眺めていると吹き抜ける風が見えるような気がした。
「誰を選んでも、構わな……い。優太は次の未来を、選ぶのだ……ろう」
受け入れてくれている。俺の意志を、願いを。だから亀夜とは安心して過ごせる。
「無論、私でも……いい。歓迎する……よ」
刹那家の魔女たちになら、誰だろうと俺の命を託せられる。縋れば亀夜だって、俺の手を取ってくれる。
亀夜ならきっと、俺を未来に導いてくれる。
本のページを捲る細く白い指。華奢な見た目よりもずっと頼りになる事を知っている。けど……
「まだ、迷いが見える……な。時間いっぱいまで悩むと……いい。誰も差し伸べられた、優太の手を弾く事はしない……から」
小さく弧を描く口元が、心情をお見通しだと告げてくる。
ありがたい限りだ。せめて、亀夜が納得いく答えを出さなくっちゃ。
今夜は、亀夜の好物を作って出した。後、一回ずつしか残っていないから。満足いったようで、本当によかったよ。




