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奴隷日記  作者: 幽霊配達員
白の書
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少しくらいかっこいいところを

 紅葉が深まり寒風が肌を刺すようになってきたこの頃。

 武道大会から一ヶ月経ってようやく、手に入れていた観光チケットを使うときがやってきた。

 チケット自体は千羽ががんばった甲斐あって早々に手に入っていた物の、最速でヶ1月先……つまり今日のチケットを手に入れるのがいっぱいいっぱいだった。

 とはいえかなり運がいい方で、少しタイミングを違えれば半年先になっていた可能性もあったそうな。競争率高いな。

 ただ手に入ったのは4人組のチケット。刹那家で行くには1人足りないし、俺が遠慮するって言ったら、それじゃ意味がないと返されてしまった。

 勿論手に入れた千羽へみんなが口論したんだけれど、4人組だから1ヶ月先のを手に入れられた。ペアチケットはソレこそ半年は向こうだったっと。

 半年って俺の消費期限が怪しいからな。時間を引き合いに出されたからにはみんなも引かざるを得なかった。

 で刹那家でどうメンバーを厳選しても荒れる事になったので、いっそ手に入れた千羽が俺と友人を連れて遊びに行くのでどうだって結論に至る。

 亀夜は納得し、氷竜はそっぽを向き、子虎は渋々引き下がった。

 というわけでメンバーが決まった……かのように思えたんだけれど、もうひとつの問題が。

 千羽の友人は紫江&紫緒にケンタウロスの奴隷の安藤さんと3人。荒れる事間違いなしだろう。千羽も懸念していたけれど、とりあえず相談してみる事に。

 結果すんなり紫緒と安藤さんの2人が同行し、紫江がお留守番する事になった。

 本当にすんなり話がまとまったのかはわからないけれど、無事出発する事に。

 観光も兼ねて一泊二日。さすがにホウキで飛んでいける距離ではないため、公共機関の瞬間移動施設を使う事に。亀夜以外の瞬間移動に触れるのは初めてだ。

 感覚的にはあんまり大差なかったけど、千羽曰く規模と距離感が段違いらしい。

 肌で感じるカラっとした空気。気温はやや肌寒いかな。レンガ造りの街並みが新鮮で、どことなく強固さを感じさせられる。

 漂う香りはトマトやバジル系が多いかな。あとチーズ。あわよくば食材も購入して帰りたいところだ。

 まずお目当ての闘技場へ向かう。魔女と奴隷のペアが列をしていて、少しずつ鑑賞しながら道を進んで行く。

 会場の建設段階や完成当初の写真。決勝トーナメント表と選手のプロフィール。表彰台にのった瞬間……

 建物内部で今大会の進行を見た後、お目当ての会場へと向かう。

 灼け溶けて穴が開いた地面。切り裂かれて崩れかけている石壁。地面に飛び散っている欠片。口実上形だけ作られていた見るも無惨なリングだった物。

「ホント凄いわよね。私もここまで行けないのはわかってるんだけれど、せめて地区予選ぐらいは勝ち上がって優太にかっこいいところを見せて自慢したかったわね」

 悔しそうな笑みが、本音だって伝えてくれた。そして紫緒も続けた。

「私だってすこしくらいかっこいいところ見せたいわよ。もう大会は終わっちゃったけど、せめて千羽ぐらいには勝って強いんだって奴隷に見せつけなくっちゃ」

 安藤さんへ振り返り、細い腕で力こぶのポーズを取りながら笑う。

 おちゃらけてるけど、声色が本物だった。千羽も感じ取ったらしく、近くの闘技場へ寄って一戦交える事に。

 一矢こそ報いたものの、千羽の圧勝。仰向けに倒れる紫緒へ心配して駆け寄る安藤さん。

「あーあ。やっぱり勝てなかった。かっこ悪い」

 疲れた笑顔に安藤さんは苦言を飲み込み「不意を突いての一撃はかっこよかったぞ。俺の自慢がひとつ増えた」とフォローした。

「ありがとう。そろそろ名前を知りたいな」

 土埃に塗れた細い手を伸ばして告げられた言葉に、安藤さんを始めみんなして驚いた。1番に感じた疑問は、紫江はいいのか? だ。

 いいも悪いも、安藤さんは最初から紫緒が1人で召喚した奴隷だったらしい。そもそも俺みたいに4人一緒に奴隷召喚なんて考えもしないんだとか。

 そりゃそうか。そもそも千羽たちだって最終手段だったし。

「クック・ルックだ」

 紫緒の手を取り、立ち上がらせながら奴隷棒名の儀を執り行った。コレで全員か。

 一暴れして疲れたから、今日はお店でピザを取り分けながら食べて宿に泊まった。

 千羽と同じ部屋に二人きりなのは、緊張より安心感が勝っていた。

 落ち着く香りのおかげでよく寝れそうだ。

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