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奴隷日記  作者: 幽霊配達員
白の書
89/96

旋律のはばたき

 魔女の世界には4年に1度、誰でも参加自由な世界規模の武闘大会が開催される。プロアマ問わず誰でも気軽に参加できるのが売りの、大規模な大会だ。

 俺の主たちも毎回参加しているらしいし、今回も勿論参加するらしい。

 とんでもない話だ。特にプロアマ問わないところが。まぁ年齢制限はあるから、子供と老人は戦えないけれども。

 とはいえ当然シード権なる物も細分化されているから、よっぽど力量差が出る対戦カードが地区予選で組まれる事はないらしい。

 ちなみに過去最高の成績は千羽と子虎が地区予選ベスト32。亀夜が16。氷竜が8らしい。世界規模の魔女がどんなバケモノなのか知りたいような知りたくないような……

 みんなヤル気に満ち満ちていて、闘気ってやつを高ぶらせながら大会会場へ。

 刹那家と縁ある友人たちも全員参加だ。

 開会式やらルール説明やらを聞いてから始まるトーナメント前のふるい落とし。複数の組に分けられてバトルロワイヤル方式で勝ち残りの1人が予選トーナメントへ選出できる。

 知り合い全員がバラバラに別れてホッとしたのも束の間、氷竜が真っ先に敗退した。

 相手は参加券を得たばかりの子供で、完全ノーマークの新人ホープ。氷竜の“水流乱舞”って必殺技を軽々と打ち破った瞬間は現実と信じられないほどだった。

 目を覚まして「1人になりたいわぁ」と言った氷竜に何も声をかけられなかった。

 様々な悔し涙を土台に、勝ち残った魔女たちによる地区予選トーナメントが進行していく。

 1回戦では紫江と鈴が敗北。2回戦の前半で紫緒もトーナメントから姿を消し、千羽と燕子が当たる。

 風属性同士の空中戦。吹き荒れる風の応酬と激しいドッグファイト。好戦的で荒々しい攻撃をする千羽に対して、冷静で緻密な攻撃を繰り出す燕子。

 少しずつ被弾をして追い込まれる千羽が、不意に口元から詠唱を紡ぎ出す。包み込むようにキレイな旋律に耳を奪われていると、亀夜が「また……だ」と呟いた。子虎が続ける。

「千羽って格上の風属性を相手にすると無意識に呪文を唱え出すの。でも完成した事は一度もない。本人曰くギリギリのところで曇ってるらしいよ」と。

 説明を聞いて直感した。今すぐ千羽に伝えなきゃいけないって。助言を伝える方法はないのか辺りを見渡すと、亀夜が戦っている選手の奴隷専用応援部屋がある事を教えてくれた。

 急いで駆け込み、伝える。

 その詩は完成している。足りないのはイメージ。大空を羽ばたく翼。

 千羽が赤い瞳を見開き、呪文を最後まで歌い終える。明確な完成形を脳裏に浮かびあげて。

 華奢な背中に、白く大きな翼が生えた。無数の羽を舞い上がらせて、大空を包み込むような翼。

 燕子の魔法が完全に空を切るようになった。なめらかかつ最小限の動きで空を掴んで高速で舞い飛ぶ。

「私は千羽。千の羽根を舞い散らし、大空を羽ばたく翼っ!」

 燕子の真後ろを取って放った一撃が、燕子の羽を毟り散らす……勝った。

 暫く翼の生えた千羽に見蕩れて呆然としてしまっていた。

 で気付いた。よく応援ルームに何の抵抗もなく入れたなって。厳重な警備でもされてそうなものなんだけれど。地区予選だけあってそこまで警備の目が回ってなかったのかも。

 で3回戦なんだけれども、千羽と子虎が敗戦した。2人共勝ってたら四回戦で当たってただけに残念だ。

 知り合いで残っているのは亀夜と鮎歌の2人。そして4回戦でこの2人が激突する。

 豊富な魔法力と手数で攻める鮎歌に対し、亀夜は緻密かつ必要最低限の攻撃で応戦。

 最終的には亀夜の策略がハマって勝利をもぎ取った。

 ベスト8まできた。自己ベストを更新した。このまま勢いに乗って優勝まで行ってほしい。

 そう思っていたんだけれど、亀夜はもう既に諦めていた。理由は魔力不足。もう殆どすっからかんと。

 それでも死力は尽くすと微笑み、敗北して帰ってきた。

 みんな悔しがってたけれど、輝いてたな。生きている間に見られて、とてもよかった。

 にしても、とんでもない魔法合戦だったわ。

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