果実は啄むくらいが丁度いい
暑さも落ち着き木々の葉が黄色く色付いてきた。
まだまだ強い陽射しが上昇させた体温を、爽やかな風が優しく冷やしてくれる。
実りの多い秋、亀夜と燕子と死神のD・ショコラさんと一緒に果物を求めて山へと出かけた。
房を連ねてぶら下がるブドウは濃い赤紫をしていて、いつでも食べて下さいと主張しているようだ。
「吸引力だけで、動かずにブドウをまるごと食べれたらさぞ口内が果汁で満たされるだろう……な」
亀夜がそんなことを言いながら小さい口で吸い込む仕草を見せる。どこぞのピンクの球体みたいなことを言わないでほしい。亀夜なら魔法で本当にやりそうなのが怖い。
大真面目にブドウを見上げる亀夜の頭を燕子が、やめなさいと頭をはたいた。
「半分、冗談……だ」
それ、半分は本気だったって事か?
D・ショコラさんが好きな物をテーブルいっぱいに並べて食べるのって憧れますよねって亀夜をフォローすると、燕子がキっと眦を吊り上げて振り返りお仕置きをする。
食べきれないほどの食事を用意して食材をムダにするような事をするんじゃないとの事……さては前科持ちだな。
でもアイアンクローはやめて差し上げて。D・ショコラさんの足が浮いてるのが元々なのか持ち上げられているのかわからなくなるから。
亀夜がD・ショコラさんをつれて欲望のままにブドウ狩りを楽しんでいるのを、あきれ顔の燕子と一緒に見守る。
「ホント欲張りなんだから。いくら大好きでも溢れるくらいに求めたら飽きちゃうわよ。啄むくらいが一番幸せを感じられるんだから」
ヤレヤレと溜め息交じりに吐き出した言葉には、しょうがないわねってニュアンスが含まれていた気がする。
「優太。好きだからやり過ぎちゃう事もあるかもしれないけれど、亀夜の事を気にかけてあげなさいよ」
燕子と2人で、亀夜がブドウを片手に微笑む姿を眺める。俺が、気にかけないわけがないのにな。
「あなたたちの主従関係は、ちょっと酸味が強すぎるんだから」
甘くて酸っぱい果実のような日常。調理すれば酸味だって活かせる。果肉を失った種だって未来を芽吹かせる事ができる。
俺が亀夜の成分になるのだとして、飽きさせない生活を提供し続けられるだろうか。
わからないけど、めいっぱい尽くさせてもらうつもりだ。
毎日のように出る主食のような一生でも、一度だけ出るデザートのように短い人生だったとしても、感じ方が違うだけで同じ時間なんだから。
俺の主菜で、亀夜のデザートを満足させてみせる。
山で絞ったフレッシュ100%のジュースはちょっと酸味が強い気がした。
酸っぱい思い出をみんなで刻んだ事になるのかな。




