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奴隷日記  作者: 幽霊配達員
白の書
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星に願いを

 ふと織り姫と彦星のお話しを思い出した。夜空に流れる星々の川が2つの輝く星を遮る様が皮肉にもキレイだ。

 まぁ見立てているだけで織り姫とも彦星とも違う星なんだろうけれども、不思議と似たような位置にあったような気がした。

 天体なんて詳しくないから大いに間違ってる可能性も充分にあるけれども。そもそも魔女の世界に彦星なんて男性が存在するかも怪しいし。

 この日のため事前に、鮎歌に言って樹魔法で笹を1本生やしてもらっている。

 刹那家のみんなで笹の葉が垂れるぐらい飾りを作って彩った……笹をいじめるのはよくなかったかもしれない。

 飾りを眺めているとみんなの手先の器用さがイヤでも窺えてしまう。俺だって負けていないと信じたい……信じたい。視線が優しいのがとてもツラかった。

 数日前になんとなく七夕なんて日を思い出して口に出した結果、刹那家どころか刹那家の友人たちの家でも七夕を楽しむことになった。

 みんなそれぞれ笹を生やして、夜空の星々を眺めていただろう。

 短冊に願い事を書いて笹へ吊るし、星に願う。果たして日本語の願いが魔女の世界で読めるのかは置いておいて。

 俺の願いはみんなにはわからない。同時に魔女の言葉で書かれたみんなの願いも俺にはわからない。

 けど願いなんてそんなもんでいいのかもしれない。全ての願いが叶ってしまうと、世界は矛盾で満たされるから。

 生温かい夜風で火照った身体。冷たい緑茶を呷って冷ます。喉を通る瞬間に感じる小さな幸せ。

 些細すぎる幸せなら星の数ほどたくさんあるんだ。ただ感じる間もなく流されて消えてしまうだけで。夜空に浮かぶ天の川のように留まってはくれないから。

 或いは、強く大きい願いの輝きが眩しすぎて霞んでしまうのかも。

 不意に涼風が髪を揺らす。赤のしてやったりな笑顔が振り向いた先にあった。夜だっていうのに映えた色をしてくれる。きっといつだって見失うことはないだろう。

「で優太は何を願ったわけよ」

 好奇心旺盛な笑みに、秘密とだけ返して微笑んだ。ふて腐れてしまった。

「つまらないわね。ちなみに私は純正九蓮宝燈って書いたわ」

 ソレ叶ったら死ぬヤツだから。イカサマでもしない限り不可能な役だから。微笑みが引き笑いに変わったけれど、星に願うにはそれくらい突拍子ないぐらいが丁度いいのかもしれない。

 少し遠くでは亀夜と子虎が短冊を眺めながらお喋りをしている。2人ともリラックスした表情で微笑ましい。

 氷竜は、庭に出てこなかった。せめて部屋の窓から星空を眺めていてほしい。

 俺には未来を願うことしかできないし、日本語を解読できる魔女なんて現れないだろう。

 だから日記にも書き記しておく。

“俺の娘が、刹那家で小さな幸せに包まれていますように”

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