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奴隷日記  作者: 幽霊配達員
白の書
82/88

雨の行き先

 今日も子虎の朝シャンを手伝うことから一日が始まる。

 昨日の夜から降り始めた雨はシトシトと長く続く予感を感じさせた。魔法で弾くとはいえ、雨の中をホウキに乗って出社するのは億劫そうだ。

 そんな億劫を通り越して機嫌が悪くなっていくのは氷竜。幸いと言っていいのか氷竜は休日だから朝食は平和に過ごせたんだけれど。

 早く氷竜も昔みたいに仲良く過ごせたらいいんだけれど……

 普段ならお昼近くになってから起きてくる氷竜なんだけれど、今日はみんなが出社したのを見計らったかのように起きてきた。

 雰囲気的に

 急いで1人分の朝食を準備するんだけれど、氷竜はキッチンの隅に立ったまま話しかけてきた。

 淡々とポツポツと漏れ出した不満や不安が、少しずつ勢いを増して豪雨へと変わっていく。

 最後に出てきた言葉が「渡さない。例え誰が相手でも、絶対に」だ。

 普段のおっとりした口調では当然なくて、だけど裏氷竜のような猛々しさもなくて、ただ心の憶測にある暗い深海のような計り知れない感情を見せつけられたような感じだ。

 踏み込めなければ覗けもしない暗闇から、ただ渇きの雨を俺に打ち付けてくる。

 手を止めて振り返ると、作られた曇天の笑みが浮かんでいた。

「おなかすいちゃったわぁ。もうそろそろ朝ご飯できるかしらぁ?」

 言うだけ言ってリビングへ引っ込む氷竜。

 子虎の心が晴天になったと思ったら、氷竜の執着が本降りになってしまったな。

 どうにかして雨雲を吹き飛ばしたいんだけど、そう簡単に爽やかな風は吹き込んでくれそうにない。

 いつまで降り続いてしまうのか。

 朝食が終わってからはお買い物に行ったり、氷竜と遊びに出かけたりと表面上穏やかに過ごした。

 カラオケで採点サービスを試してみたり、かわいい喫茶店で一服したり、ゲーセンへ寄ってはパンチングマシンを殴りつけたり。

 凄まじい音が出てビックリしたな。魔女用と奴隷用で分れていたので俺も殴ってみたんだけれど、当て物を倒すことすらできなかった。故障かな……いやわかってるよ。俺が弱すぎるだけだって。

 遊んでいる時は確かに普通の女性なんだ。みんなと一緒にいるときでも、この雰囲気を取り戻させなくっちゃ。

 雨が行き着く先に、芽吹く平穏があると信じなくっちゃ。

 未来でみんなが笑えるように。

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