第五話「〖聖剣憑依〗」
前回のあらすじ
フィアーナ、ユキネ、リル、サクラの4人、精霊イチゴとともに、森の手前に召喚された。
魔王の駒であるデビル・サーヴァントが現れて、ユキネ、リル、フィアーナを負傷させた。
フィアーナを癒やすと、〖聖剣憑依〗が使用可能になった。
バトル回。
「やった。
〖聖剣憑依〗を発動させれば、
戦闘力が20倍になって、
わたしの能力を使用可能に
なりますから、
逃げられるはずです。
〖聖剣憑依〗を発動させて、
逃げましょう」
3人を置いて、逃げるのか……。
「発動方法は?」
「まずは、〖属性変換魔術〗で、
好きな武器を生成してください」
武器を想像しながら、魔術を発動させると、右手首の〈空のルナリング〉――水色の〈ルナリング〉――が輝く。
直後、青い魔法陣が左手もとに展開して、氷の剣を生成した。
「次は、〈セラフィム・コア〉に、
魔力を流し込んで、
武器に触れさせてください」
右手で、首飾りの〈セラフィム・コア〉を掴んで、魔力を流し込み、氷剣の鍔中央に触れさせる。
「最後に、《聖剣よ、聖なる力で、退けん。
〖ボロウド・ブレード〗》と
詠唱してください」
「《聖剣よ、聖なる力を借りんで、退けん。
〖ボロウド・ブレード〗》」
詠唱すると、サクラが光の粒になって、〈セラフィム・コア〉に入っていった。
直後、〈セラフィム・コア〉が眩しく輝くと同時に、氷剣と融合し、鍔中央に鎮座した。
直後、〈セラフィム・コア〉融合状態の氷剣が魔力を吸い込んで、刀身から、〖聖気〗を溢れ出させ、纏った。
続いて、体内の魔力が〖聖気〗に変化し、体外へと溢れ出して、全身を包み込んだ。
そして、サクラの知識と記憶が流れ込んできて、俺が呼んだことで、ユキネとリルを癒やせてないことがわかった。
デビル・サーヴァントは、イチゴが足止めしてくれているから、ふたりを治癒しにいくか。
「フィアーナ、ちょっと待ってて」
「う、うん」
仰向け状態のフィアーナの上半身を起こして、告げた。
そして、〖聖気〗――淡い金色の聖なるオーラ――の圧縮エネルギー製の両翼を広げて、羽ばたかせ、上昇し、ユキネとリルのもとへと、向かう。
「リョウっ、逃げなさいっ」
「うぅ……」
ユキネとリルの間に着地すると、ユキネが地面に、肘と膝を着いた状態で、冷や汗を流しながら、言ってくれる。
リルと同じく、話せないくらいの苦痛なのに、心配できるなんて、精神力、すごすぎだろ。
「《魔力よ、ふたりを癒してくれ。
〖エリア・ヒール・シャイン〗》」
両手で、ユキネとリルそれぞれの背中に触れて、詠唱。
直後、金色の大きな魔法陣が足もとに展開して、同色の光がふたりを包み込み、息の荒さを消失させ、表情を和らげた。
「か、感謝するわ」
「あ、あんがと」
ユキネとリルが上半身を起こして、震えながら、述べてきた。
「みんなで、逃げたいんだけど、
ふたりとも、立てる?」
「だ、だめね。
こ、腰が抜けているわ」
「あ、あたしも」
デビル・サーヴァントの〖威圧〗、重い攻撃を受けたんだから、当然か。
「フィアーナ!
そっちに、ふたりを連れていきたいから、
手伝って!」
「わかった!」
「わ、わたしたちのことは、いいから、
に、逃げなさいよ」
声を張り上げて、フィアーナに呼びかけると、ユキネが大きな半袖シャツ姿で、言ってくる。
「あっちに、ふたりを連れていったら、
逃げるよ」
「ぜ、絶対よ?」
「うん」
3人の代わりに反撃してから、みんなを連れて、逃げるけど。
「り、リルねえさんのほうが軽いから、
り、リョウは、リルねえさんにしなさい」
「う、うん」
「ほとんど、変わんないけど」
ユキネがアドバイスをくれると、リルが半袖シャツに、膝丈スカートを合わせて、緑色の袖なしパーカーを羽織った姿で、呟いた。
「どうやって、連れていく?」
「フィアーナは、ユキネをおねがい」
フィアーナが橙色の半袖ワンピース姿で、駆け寄ってきて、尋ねてきたため、ユキネを頼んだ。
「るーさんは?」
「リルは、俺が抱えるぅ……!」
ユキネのアドバイスに従って、リルを姫抱き――お姫さま抱っこ――しようと、踏ん張りながら、フィアーナに返答する。
「だ、大丈夫?
わたし、余裕で、抱えれるよ?」
「ま、まだ魔力成長期なんだから、
ひ、姫抱きは、無理よ」
「そ、そうだよ。
む、無理しちゃだめだよ」
体格差のせいで、持ち上げれず、3人が心配してくれる。
情けねえ。
「まず、ユキネを連れていって」
「わ、わかった」
フィアーナが軽々と、ユキネを抱えて、5メートル右へと、向かっていった。
「うしろから、抱きしめて、
引き摺ってもいい?」
「い、いいよ」
リルの背後から、袖なしパーカー越しの豊満すぎる胸の下を抱きしめて、引き摺りながら、5メートル右へと、向かう。
「スカートを汚して、ごめん」
「だ、大丈夫だよ。
あ、洗えばいいだけだかんね」
5メートル右へと、向かいながら、リルに謝る。
「ぎゃんっ」
「「イチゴっ!」」
ユキネとリルを避難させたところで、ふたりが美声を張り上げた。
デビル・サーヴァントのほうを見ると、イチゴの姿は、なかった。
見渡すと、イチゴは、普段の愛らしい姿で、デビサバの5メートル前方に、いた。
「イチゴは、休んでて!」
〖聖気〗製の両翼を広げて、羽ばたかせ、上昇し、デビル・サーヴァントのもとへと、向かう。
目前に迫り、下降しながら、デビサバの左肩を狙って、〈セラフィム・コア〉融合状態の氷剣を振り下ろす。
下降しながらの振り下ろし攻撃は、黒い腕鎧を纏った状態の左前腕で、防がれて、金属音を響かせるだけになってしまった。
すぐさま、〖聖気〗製の両翼を羽ばたかせ、デビサバの3メートル前方に、移動した。
「いい感じの攻撃だったのに」
『鎧の隙間であれば、斬れるはずです』
サクラが〈セラフィム・コア〉から、アドバイスしてくれる。
「なるほどな」
地面を蹴って、デビル・サーヴァントに接近。
それと同時に、デビサバが右手から、〖狂邪気〗――漆黒の邪悪なオーラ――を溢れ出させて、少し広げ、剣状に圧縮した。
デビサバの目前に迫り、〈セラフィム・コア〉融合状態の氷剣による袈裟斬りを放つ。
袈裟斬りは、案の定、圧縮〖狂邪気〗製の剣で、防がれて、また金属音を響かせるだけに、なってしまった。
数を打てば、当たる精神で、猛攻を仕掛けるが、防がれる。
「ぐはっ」
「リョウちゃんっ!」
「「リョウっ!」」
諦めずに、猛攻を続けていると、デビル・サーヴァントが左足での蹴りを放ってきた。
デビサバの蹴りは、右脇腹に直撃して、5メートル後方に、俺を吹き飛ばした。
「大丈夫だから!」
〖聖剣憑依〗状態の〖自動治癒〗が発動して、脇腹が癒してくれた。
すぐに、立ち上がって、フィアーナたちに告げる。
なんとなくの型だけど、あの猛攻を捌いたんだ。
聖属性混合の魔術も、処理されそうだな。
攻撃じゃなかったら、いけるか?
邪道だが、右足で、魔術を発動させると、右手首の〈空のルナリング〉が輝く。
直後、金と青、2色混合の魔法陣がデビル・サーヴァントの足もとに展開して、同色の濃霧を発生させる。
すぐさま、〖聖気〗製の両翼を広げて、地面を蹴り、低空飛行で、デビサバへと、接近する。
「うっ……!?」
濃霧に包まれた状態のデビル・サーヴァントの目前に迫ったところで、後方に回り込むため、右側を通ろうとする。
だが、デビサバに、半袖シャツの襟を引っ張られ、顔を合わせられた。
濃霧に包まれていて、見えないはずなのに。
「おまえの攻撃は、通用しない。
〖王気〗を纏える長耳や獣耳か、
〖闘気〗を纏える竜人なら、勝てる。
どちらにしろ、
成長していれば……の話だが」
デビル・サーヴァントが黒い腕鎧に包まれた状態の右手で、俺の首を掴んできて、言ってくる。
知らない単語だけど、知ることは、ないんだろうな。
ここで、負けたらな。
「まだわから……かはっ!」
右手に、力を込めると、デビサバが腹部を殴ってきて、吐血させてきた。
吐血したことによって、血液特有のにおいと味が広がった。
「リョウちゃんっ!」
「「リョウっ!」」
〖自動治癒〗が腹部を癒やしてくれると、濃霧が晴れた。
直後、デビル・サーヴァントが腹部を殴ってきて、〖聖気〗製の両翼が消失して、フィアーナたちが俺の名前を叫ぶ。
デビル・サーヴァントが左手から、〖狂邪気〗を溢れ出させて、短い槍状に圧縮。
そして、フィアーナに向かって、圧縮〖狂邪気〗製の短槍を投げた。
「きゃっ!」
4時の方向から、地面に刺さるような音とともに、フィアーナの悲鳴が聞こえた。
「おまえ……!」
「安心しろ。傷つけは、しない。
あのドラゴン娘は、
ネトニスさま好みの女に
成長しそうだからな」
「フィアーナは……渡さねえ……。
かはっ!」
デビル・サーヴァントが腹部への連続攻撃を開始した。
攻撃で、痛みが走る度に、〈セラフィム・コア〉が魔力を消費して、〖自動治癒〗を発動させ、体を癒やしていく。
このまま……、攻撃を受けていたら……魔力が……!
『魔力残量が僅かになりました。
〖聖剣憑依〗を解除します』
連続攻撃を対処できずにいると、ルナエルさまっぽいボイスでのアナウンスが〈セラフィム・コア〉から流れた。
直後、〖聖気〗が消失すると同時に、〈セラフィム・コア〉が首飾り状態に戻った。
魔力枯渇寸前になったことによって、全身が脱力し、〖聖剣憑依〗の強制解除されたことにより、強い疲労が襲う。
ここまでか。
「えっ? かはっ!」
デビル・サーヴァントが上に向かって、俺を投げ、左足による横薙ぎを放ってくる。
左足による横薙ぎは、腹部に直撃して、吐血させてきて、後方へと、吹き飛ばされた。
バウンドしながら、地面を転がっていき、仰向けになり、曇り空が視界に広がった。
転生させてもらったし、フィアーナが初恋の彼女かもしれないのに、もう終わりか。
フィアーナと夫婦になって、幸せにしたかったな。




