第六話「魔族の巣」
魔巣門の中へと、足を踏み入れると、森の中。
木々の葉が黒いけど、明るい。
明るいのは、世界樹の聖なる力のおかげらしい。
「『〈BSプログラム〉、起動』」
〈BSプログラム〉――VDRチョーカーの追加機能で、戦闘を補助する――を起動させると、〖行動予測〗起動中という表示が視界の左上に、出てきた。
続けて、〖バフ・ブレス〗――魔素摂取を意識しながら、細胞の隅々まで、魔力を循環させて、身体能力を大幅上昇させるスキル――を発動させておく。
木々に隠れながら、移動していると、下級魔族の後ろ姿を見つけた。
マジで、10歳くらいの背丈なんだな。
赤黒い瞳の青白い小鬼姿の魔族
「ん? このにおい!」
観察していると、下級魔族が褌姿で、振り返った。
AIルーが表示してくれた画像どおり、老人みたいな顔の小鬼だな。
「女?
違う! おまえ、男じゃねえか!」
女子だと間違えかけた。
魔族から見ても、女子みたいな顔つきなんだな。
「紛らわしい顔しやがって、
俺がぶっ飛ばしてやる!」
下級魔族が宣言して、木の棒に〖邪気〗――淡い黒色の邪悪なオーラ――を纏わせて、接近してくる。
〖バフ・ブレス〗により、戦闘力が10倍になっているおかげで、戦闘力80の下級魔族の動きが遅く感じる。
「〖魔力槍〗」
省略詠唱すると、白い魔法陣が目前に展開して、短い〖魔力槍〗――魔力製の槍――を放つ。
短い〖魔力槍〗は、下級魔族の青白い額に直撃して、黒紫色の血液を伝わせる。
下級魔族は、崩れるように、倒れさせて、黒い粉塵に変化し始めた。
《下級魔族を討伐しました。
戦闘報酬として、
800LPを獲得しました》
下級魔族の体が魔石を残し、消失したところで、ルナエルさまボイスのアナウンスが耳もとで、流れた。
〖ストレージ〗に、魔石を収納して、移動する。
――
巡回中の魔族すべてを倒しながら、進んでいると、最奥のアジト――|頭蓋骨〈ずがいこつ〉型の岩製洞窟――の近くに到着した。
少し離れた位置から、アジト内を見ると、下級魔族3体が焚火を囲んでいた。
「ん?」
「なんだ、お前!?」
「侵入者だ!」
アジトに接近して、入り口から、魔術を発動。
直後、白く、大きな魔法陣が目前に展開して、大きな〖魔力刃〗を放つ。
〖魔力刃〗は、青白い首を斬り裂いて、黒紫色の血液を飛び散らし、アジトの奥へと、進んでいった。
下級魔族たちは、倒れて、黒い粉塵に変化し始めた。
《下級魔族3体を討伐しました。
戦闘報酬として、
2400LPを獲得しました》
下級魔族たちの体が魔石を残し、消失したところで、ルナエルさまボイスのアナウンスが耳もとで、流れた。
『サクラ。敵は?』
『アジト内には、確認できません』
〖ストレージ〗に、魔石3つを収納しつつ、心の中で、サクラに尋ねる。
すると、サクラが精霊状態で、〖念話〗を発動させて、返答してくれた。
安心して、アジトの奥へと進んで、幅広階段を下り、次の階層に向かう。
――
「リョウさま、前方に敵です」
「来たぞ!」
次の階層まで、残り数段のところで、サクラが〖念話〗で、教えてくれる。
直後、低めの声が前方から、聞こえて、そちらを見ると、中級魔族3体が立っていた。
筋骨隆々な鬼だな。
「〖爆裂砲〗」
後方の中級魔族がこちらに杖を向けて、省略詠唱。
直後、橙色の魔法陣が杖先の延長線上に展開して、同色の大きな火球を放つ。
「〖魔力障壁〗」
省略詠唱すると、白い魔法陣が目前に展開して、重なるように、〖魔力障壁〗――魔力製の六角形集合体――2枚を生成した。
橙色の大きな火球が〖魔力障壁〗に直撃するとともに、爆発し、砕いてしまい、2枚目の〖魔力障壁〗に亀裂を入れた。
「リョウさま。
中級魔族2体が接近」
サクラが敵の接近を教えてくれる。
「〖シャイン・バスター〗」
迎え撃つため、前方に右手を向けて、省略詠唱。
直後、白い魔法陣が右手の延長線上に展開し、同色の光線を放射。
白い光線は、黒煙を吹き飛ばし、接近中の中級魔族2体に直撃し、上半身の横半分を消滅させた。
「〖鉄壁〗」
3体目の中級魔族が魔術を発動させると、赤茶色の鉄壁が生成される。
白い光線は、赤茶色の鉄壁を貫通し、3体目の中級魔族に直撃し、上半身を消滅させた。
《中級魔族3体を討伐しました。
戦闘報酬として、
12000LPを獲得しました》
下級魔族の体が魔石を残し、消失したところで、ルナエルさまボイスのアナウンスが耳もとで、流れた。
〖ストレージ〗に、魔石3つを収納して、森を進む。
――
2階のアジト付近に到着。
接近戦にも慣れるため、アジト内へと、足を踏み入れた。
「来やがったな」
留守番中の中級魔族が背後に、細長いものを隠した状態で、俺を見て、言う。
身長2メートル超えって、こんな大きいんだな。
「野郎ども、出てこい!」
攻撃してくると思いきや、彼は、アジトの外にも、聞こえるように、大声で、指示する。
すると、中級魔族たちがアジトの入口、奥から、ぞろぞろと出てきて、俺たちを包囲した。
〈隠密布〉を被って、サクラの〖魔力探知〗を遮断してたのか?
「おまえら、構えろ」
留守番の中級魔族が指示して、銃を構える。
両隣の中級魔族が同じように、銃を構え、ほかの中級魔族たちは、剣や斧を構えた。
「なっ!?」
魔力排出の抑えを解除して、魔術を3重発動。
直後、白い魔法陣3枚が銃持ちの中級魔族3体の目前に展開して、〖魔力刃〗を放ち、青白い首を斬り裂いた。
〔ほかの中級魔族たちが全員で、襲いかかってくる〕
〈BSプログラム〉の〖行動予測〗が数秒後のことを教えてくれた。
「ボス! くそがっ!」
ほかの中級魔族たち全員が怒り、襲いかかってくる。
魔術3つを同時発動させると、白色の大きな魔法陣3枚が2時、6時、10時の方向、空中に展開し、同色の太い光線を放ち、ほとんどの中級魔族を消し飛ばした。
「はあ!」
「おら!」
「くたばれ!」
姿勢を低くして、魔術を3重発動。
直後、白い魔法陣3つが周囲に展開して、〖障壁〗を生成し、残党魔族からの武器による振り下ろし攻撃を防いだ。
続けて、魔術を3重発動させると、白い魔法陣3枚が彼らの足もとに展開し、〖魔力刃〗を放ち、青白い首を斬り上げた。
《中級魔族15体を討伐しました。
戦闘報酬として、
60000LPを獲得しました》
〖ストレージ〗に、大量の魔石を収納して、アジト奥の横穴に移動する。
横穴には、監禁中の女性がいなかったため、アジト奥の幅広階段を降りて、次の階層に移動する。
――
最下層。
リョウが両開きの大きな門に触れると、音を立てて、開いた。
大きな門を潜り、ボス部屋に、足を踏み入れると、そこは、宮殿みたいな様相の大広間。
中央には、上級魔族アクセルが座っている。
上級以上の魔族は、青白い肌だが、人間の姿で、服も着ているため、討伐することに、躊躇してしまう。
だが、リョウは、仮想の上級魔族と戦っていたから、平気だ。
「来たか」
アクセルは、赤黒い瞳で、リョウを見ると、立ち上がった。
「全力で、行かせてもらうぞ」
アクセルは、リョウに告げると、全身に力を込め、〖鬼化〗を発動。
直後、〖狂邪気〗――漆黒の邪悪なオーラ――の圧縮エネルギー製の牛角が両方の側頭部から生えて、白目になり、黒く染まり、黒い亀裂が目もとから、ほおへと入り、〖狂邪気〗が彼の全身を包み込んだ。
アクセルが滑らかな石床を蹴って、〖加速〗を発動させると、縦横無尽に、高速移動を開始した。
「〖ライズ――」
「リョウさまっ」
リョウが首飾りの〈セラフィム・コア〉――桜色の結晶――を握って、魔力を流し、省略詠唱しかける。
だが、アクセルが彼の腹部を蹴って、遮り、膝を着かせてしまった。
「わたしが守りますから、
〖聖剣覚醒〗を」
「うん」
サクラがブラウスに、膝丈スカートを合わせた姿になって、リョウを背にして、立つ。
両手から、〖神聖気〗――金色の神聖なオーラ――を溢れ出させて、少し広げ、短剣状に圧縮した。
フユネがエメラとともに、リョウを追いかけて、ボス部屋に足を踏み入れた。
「《天空流剣技、3の型・銀……」
フユネが青い膝丈袴の巫女服姿、〖闘気〗――銀色のオーラ――を纏った銀髪状態で、居合の構えになって、体を捻る。
そして、模造刀に〖闘気〗を集めて、圧縮した。
「さく! しゃがみ!」
エメラは、淡い緑色の看護服姿で、甘く、明るい増艶美声を張り上げると、サクラがしゃがんだ。
「〖光燕〗》」
フユネは、体の捻りを戻すとともに、模造刀を振るって、圧縮〖闘気〗の斬撃を放つ。
銀色の斬撃は、リョウたちの頭上を通過して、ボス部屋の少し奥の石床に直撃し、傷付け、消失した。
アクセルが予期せぬ攻撃に驚き、傷付き石床の後方に、止まった。
「〖岩穿牙〗」
「がはっ」
フユネが戦闘ブーツ、膝上丈の白タイツ越しの美脚で、跳躍して、魔力の足場を生成。
そして、体を捻り、それを蹴ると同時に、〖獣脚〗を発動。
直後、銀色の小爆発が足もとで、発生し、アクセルに高速接近させる。
フユネが体の捻りを戻すとともに、突きを放つ。
突きがアクセルの胸に直撃すると同時に、〖竜牙〗を発動。
直後、〖闘気〗が青白い皮膚を貫通して、体内に流れ込み、爆発した。
〖竜牙〗によって、アクセルは、黒紫色の血液を吐いて、気絶し、崩れるように、座り込んだ。
数秒後、アクセルの青白い指が微動して、意識を取り戻す。
フユネは、横薙ぎを放ち、彼の青白い首を斬り裂いた。
「くっ」
「――っ!」
アクセルが後退すると、フユネが大きく空気を吸って、〖獣の咆哮〗を放ち、完全に、彼の動きを封じた。
「〖べっこう砕き〗」
フユネは、アクセルに迫って、跳躍し、模造刀を振り下ろし、斬り裂いた。
《上級魔族を討伐しました。
戦闘報酬として、
10万LPを獲得しました》
アクセルの体が魔石を残し、消失したところで、ルナエルさまボイスのアナウンスがフユネの耳もとで、流れた。
「ろー、だいじょーぶか?」
「う、うん」
エメラが緑色の看護服姿で、リョウの左隣に、しゃがんで、目線の高さを合わせる。
そして、指先露出の白い長手袋越し、小麦色の右手で、彼の背中に触れて、心配する。
しゃがんだことによって、服の裾や〈嵐のルナリング〉が揺れるが、豊満すぎる胸は、看護服の特殊効果により、微動だにしない。
「いちおー、治癒しとこ」
エメラが魔術を発動させると、金色の魔法陣がリョウの足もとに展開して、同色の光が彼を包み込んで、腹部と背中を癒やした。
「ありがとう」
「ええよ。
さくは、大丈夫そーやな」
「はい」
サクラは、エメラに返事すると、精霊状態になって、跳躍し、リョウの頭に乗った。
「りっくんっ」
フユネが甘く、透き通るような増艶美声で、リョウの名前を呼んで、近寄ってきて、細い両腕で、彼を抱きしめた。
リョウは、抱きしめられたことによって、彼女の甘ったるいフェロモンが濃く香り、巫女服越し、エメラと同じ豊かさの胸が押し当てられて、思わず、ドキドキしてしまう。
「心配させないでくださいまし……っ。
もし、りっくんの身に大事があったら……。
そう考えただけで……っ」
フユネの垂れ目で、青色の大きな瞳が潤む。
エメラが指先露出の白い長手袋越し、小麦色の右手で、フユネの巫女服越しの背中を擦る。
「ごめんなさい。
嘘をついた上、
ひとりで、魔族の巣を攻略して」
「どうして、とても危険な魔族の巣に、
おひとりで……?」
フユネが顔を合わせて、リョウに、理由を尋ねる。
彼女の言う通り、魔族の巣の攻略は、王竜族を含んでの3人以上が推奨されている。
「腕試ししたくて……」
「わたくしたちが同行していても、
申していただければ、
腕試しさせてあげますのに。
次からは、絶対、アクアか、
フィアちゃんを同行させてくださいまし」
「うん。約束する」
リョウが宣言したところで、〖脱出〗の魔術が起動。
直後、金色の光が彼ら4人を包み込んで、巣の入り口へと、高速移動させ始めた。
金色の光は、魔巣門の前に着地して、消失した。
すると、宝箱が出現して、開いた。
中には、複数の武器が入っている。
リョウたちは、宝箱の中身を回収して、魔巣門を潜って、魔族の巣を出た。




