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第二話「想いは、波のように」



 街の中。

 VDRチョーカー――魔力を経て、仮想パソコンを反映させる首輪――を入手するため、マルチサポートオフィス――役所みたいな施設――に向かって、ユキネと並んで、歩いていく。



「ユキネ。

 なんで、かわいい格好してるの?」

「リョウは、かあさんのことが好きだから、

 同じ服装したら、

 喜ぶと思ったのだけど、

 どうかしら?」


 ユキネは、優しい表情で、瑞々(みずみず)しく、艶(つや)やかな唇を動かして、甘く、透き通るような美声で、返答してくれる。

 フユネは、半袖ブラウスに、膝丈スカートを合わせた姿で、外出するもんな。

 でも、俺を喜ばせるためとか、めっちゃ嬉しい!


「お淑やか美少女なユキネに

 似合っているし、

 さらに、魅力的になっていて、最高だよ」


「顔がお淑やかなだけよ。

 それに、ルナティシアだと、

 美少女じゃなくて、普通よ」

  

 ほおを赤らめて、言いつつ、嬉しさで、愛らしい猫耳が動いていて、ふわふわ黒色尻尾が揺れている。


「背筋を伸ばしたいから、

 いったん、手を離すわ」

「うん」


 俺が返事すると、ユキネは、手を離した。


「んーっ」


 ユキネが頭上へと、両腕を掲げて、しなやかに、背中を反らして、色っぽい声を漏らす。

 背中を反らしたことによって、半袖ブラウス越しの豊満すぎる胸が強調され、ドキドキしてしまう。


「この服装、褒めてもらえるけれど、

 可動域が制限されて、きついのよね」


 ユキネは、手を繋ぎ直してくれて、反対の手で、華奢な肩を揉みながら、呟く。


「肩、マッサージしようか?」

「おねがい……遠慮しておくわ。

 いやらしい声が漏れるらしいから」


 ユキネって、たまに色っぽいんだよね


「マッサージは、いいから、

 あとで、いっしょに、

 ごろごろしてもらうわ」

「う……だめ!」


 返事しかけて、やめた。

 ユキネは、俺を抱きしめながらのごろごろが好きだから。


「どうして?」

「フィアーナひとすじで、いきたいから」

「わたしたちとの約束を

 忘れてしまったの?」


 グラマラス美少女との約束だぞ? 忘れるか。


「もちろん、覚えてるけど、

 気が引ける」

「分魔(ぶんま)……運命の相手だものね。

 その気もちは、わかるわ。

 けれど、王竜族の遊者(ゆうしゃ)が

 銀獣族と聖霊族からも、

 妻を娶ってもらわないと、

 男女比の狂いが酷くなって、

 最終的に、人類が滅ぶかもしれないわ」

「そんなに!?」

「だから、ルナエルさまは、

 王竜族の遊者の分魔が

 嫌な思いしないように

 魔法をかけてくださっているのよ」


 対策って、魔法をかけることなのか。

 

「だから、あまり、気にしないの」

「わかった」

「ほかに、心配なことは?」

「大丈夫」

「そう。

 じゃあ、早く用事を済まして、帰りましょう」


 ユキネとともに、マルチサポートオフィスの中へと、駆け始めた。



 このあと、VDRチョーカーを入手した。




――


 セントラルタワー――街の中心にあり、結界展開に必要な建造物――のエレベーター内。


「女子ばっかりなんだけど」

「それは、そうよ。

 男子が少ないのだから」


 こちらが小声で、話すと、ユキネは、女子だらけの理由を述べた。

 そういえば、ルナティシアの男女比は、王竜族が1対4、ほかの2種族は、1対3になっているんだった。


「俺だけ、場違いだよ」

「大丈夫よ。

 あなたは、〖始祖の器〗だから、

 女子に見えるし、

 ここは、想い人同士しかいないから、

 他人のことなんて、

 気にしてないわよ」


 なるほどな。

 俺も、中学生のころは、フィアーナしか見えてなかったもんな。


「腕を絡めれば、

 より気づかれないと思うのだけど、

 そうしても、大丈夫?」

「大丈夫」


 ユキネが腕を絡めてきた。

 腕を絡めてきたことによって、半袖ブラウス越し、圧倒的な豊かさの胸が上腕(じょうわん)――肩から肘(ひじ)の間――に触れて、ドキドキしてしまう。

 めっちゃ嬉しいけど……。


「リル以外とは、腕を絡めないのに、

 俺としても、いいの?」

「そう? 

 恋人になってほしかったり、

 気に入ったりしていれば、絡めるわよ。

 現に、フィアやハルとも、絡めているし」


 俺は、どっちなんだ?


『展望ルームに到着しました。

 扉が開きます』


 女性ボイスでのアナウンスがエレベーター内で、流れると、扉が開いた。



 展望ルームへと、足を踏み入れた。

 すると、ユキネが窓のほうへと、連れて行ってくれる。


「高っ。

 防壁の外まで、見えるし」

「夕方や夜は、ロマンチックだから、

 その時間に、景色を背にして、

 プロポーズするのよ」


 ロマンチックな場所で、プロポーズするのは、あるあるだもんな。


「わたしも、リルねえさんと会えたときは、

 セントラルタワーで、プロポーズしたわ」


 ユキネが懐(なつ)かしそうに、美しく、お淑(しと)やかで、涼やかな顔を綻(ほころ)ばせて、教えてくれる。

 リルは、ユキネの分魔だから、ほとんどの過去世――前世のこと――で、出会って、恋しているのか。


「フィアへのプロポーズは、

 ここがおすすめよ」


 デートスポット兼(けん)プロポーズ場所の紹介だったんだな。




――


 屋敷に帰ってきた。


「おいで」


 ユキネたちの部屋前で、彼女の着替えを待っていると、自動扉が開いた。

 すると、ユキネが普段の大きな半袖シャツ姿で、現れて、両腕を広げた。


「抱っこは、もうだめよね」


 ユキネは、寂しそうに呟いて、両腕を下ろした。


「う、うん。

 背丈が同じだからね」

「仕方ないから、

 手で、我慢するわ」


 美しく、しなやかな左手で、右手を掴んでくる。


「こっちよ」


 ユキネは、俺の手を引いて、自分のベッドへと、連れて行ってくれる。

 移動によって、長い黒髪が靡く。




「上がって」


 ユキネが俺の手を引いた状態で、ベッドに上がる。


「ほら、いらっしゃい」

 

 俺も、ベッドに上がると、彼女は、両膝を揃えて、つけ、左右に足を開き、その間に腰を下ろし、両手を広げる。


「聞きたいことがあるんだけど、

 いい?」

「構わないわよ」


 ユキネは、許可すると、美しく、しなやかな両手を下ろした。


「例えば、およめさんに、

 リルをもらったら、

 モミノは、どうなるの?」

「妾(めかけ)にしてほしいのだけど」


 してほしい……って、自分も含んでない?


「フィアと結ばれなかった

 俺からすれば、

 そういうのを作るやつは、

 敵みたいなものだから、

 いやなんだけど」

「そう思うのは、わかるけれど、

 想っているのに、なにもできない辛さ、

 知っているでしょう?」

「知ってるけど」


 痛い程な。


「リョウは、かわいらしい娘が好みだけど、

 わたしやモミねえさんは、

 あなたの内面に、惚れているのよ」


 俺なんかに?


「なんか……とか、言わないの」

「ごめん」


 ユキネのおねえさんっぽいところ、好きなんだよな。


「ふたりに惚れてもらえて、めっちゃ嬉しいけど、

 やっぱり、フィアーナの気もちを考えると、

 気が引ける。

 人類の存続のためであっても、

 ルナエルさまの対策があっても」

「えいっ」

「わっ」


 ユキネが抱き着いてきて、押し倒してきた。


「うだうだ考えないの。

 わたしたちは、気もちを

 受け止めてくれるだけで、

 充分だから、

 リョウは、フィアのことだけを

 考えていなさい。

 これだけでも、

 罪悪感が少し軽減されるでしょう?」

「まあ」

「あと、妻や妾にすることは、

 18歳になるまで、

 気にしなくていいわ」


 18歳から、契約できるようになるもんな。


「ただし、気もちを受け止めるのは、

 フィアとの親密度が高い相手だけよ。

 フィアとの親密度が高くないと、

 ルナエルさまの魔法が効かないから」


 ルナエルさまの魔法は、条件付きなんだな。



「早速だけど、わたしの気もちを

 受け止めてくれる?」


 ユキネが珍しく、不安そうに、尋ねてくる。

 猫耳は、俺の返答を聞き逃さないように、こちらを向いている。


「うん。

 お淑やかで、涼やかな顔も、

 甘く、透き通るような美声も、好みだし、

 冷静で、優しいところも、

 俺を守るために、

 がんばってくれてるところも、

 好きだから」


 返答すると、ユキネは、美しく、お淑やかで、涼やかな顔を綻ばせて、赤らめた。


「わたしも、容姿だけじゃなくて、

 優しいところとか、

 健気(けなげ)に努力するところとか、

 あなたのすべてが好きよ」


 ユキネが甘く、透き通るような美声で、告げてきて、瑞々しく、艶やかな唇で、口付けしてきた。

 優しくするのも、魔力総量を増やすことも、剣術の鍛練も、好かれたいからなんだけどな。






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