第七話「女神さまとの再会」
目覚めると、花畑の中。
サテラさんが屋敷に送ってくれた後、寝室のベッドで、眠ったはずなんだけどな。
「リョウタさーん」
女性の美声が5メートル前方から、聞こえた。
そちらを見ると、垂れ目で、桜色の大きな瞳の美人おねえさんなルナエルさまが、古代ギリシャ服姿で、立っていらっしゃった。
「こちらに、いらしてください」
ルナエルさまは、美しく、優しげな顔を綻ばせて、誘ってくださる。
「ルナエルさま。
ぼくは、ネトニスとかに、
殺されてしまったんですか?」
「生きていますから、安心して、
そちらにおかけください」
近寄って、確認すると、ルナエルさまは、否定してくださる。
右斜め後方のレザーチェアを勧めてくださる。
よかった。
ルナエルさまの言葉に従って、右斜め後方のレザーチェアに腰かけると、彼女も、対面のレザーチェアに腰かけられた。
「生きているのに、
どうやって、お話されていらっしゃるんですか?」
「説明が難しいので、
魔術を使っている……と、思ってください」
ルナエルさまは、人類だけど、上位存在。
上位存在の技術なんて、俺たちには、理解できないよな。
「ご用があって、お話に、いらしたんですよね?」
「ええ。
謝罪とお詫び、そして、ご説明に参りました」
確認すると、ルナエルさまは、肯定して、理由を述べ、立ち上がった。
「ネトニスとの戦いに巻き込んでしまい、
ごめんなさい」
ルナエルさまが謝罪なされて、頭を下げられた。
その動きに合わせて、ゆるやかウェーブ、桜色の長い髪が揺れる。
「頭を上げてください」
「でも……」
ルナエルさまが渋られる。
「〖始祖の器〗は、ルナエルさまが選んで、
与えているんじゃなくて、
20年ごとに、男児の中から、
ランダムで、選ばれるんですよね?」
「はい。そういうシステムになっています」
ですよね。
「〖アイギスの器〗に選ばれるのは、
ものすごく、低確率ですので、
転生していただく方には、
余計な不安を抱かずに済むように、
説明も、していないんです」
超低確率のことを説明しても、転生者の不安を煽るだけですもんね。
「それなら、ルナエルさまは、
なにも、悪くないじゃないですか」
「ですが、ネトニスが脅威になるまで、
気づけなかったんです。
お詫びとして、
質問に答えさせてください」
ルナエルさま、めちゃくちゃ責任を感じているんだな。
ネトニスが悪いのに。
「まずは、フィアーナって、
俺と想い合った相手ですか?」
「はい。合ってますよ」
デビサバのとき以来、フィアーナは、そういうことを話してくれないから、不安だったんだよな。
「再会させてくださって、
ありがとうございます」
「わたしは、誕生時期を調整しただけですよ」
「ルナエルさまが
彼女も、転生させて、再会できるように
なされたんじゃないんですか!?」
驚いて、ルナエルさまに確認した。
「分魔は、同じ惑星に生まれるのですが、
結ばれる予定で、想い合っていたのに、
結ばれなかった場合、
次の生で、リベンジするように、
なっています」
生まれる前からの予定だったから、めちゃくちゃ引き摺って、辛かったのか。
「誕生時期の調整……というのは、
どうやって……?」
「ごめんなさい。
それは、極秘事項ですので、
お答えできません」
そうなんですね。
「わたしたち惑星管理者は、
分魔の両者とも、
お亡くなりになられたところで、
おふたりの趣味趣向が合致する惑星へと
転生していただくために、
働く……というのは、
お答えできるのですが」
なるほど。
俺は、魅力的な彼女を欲していて、フィアーナは、男が苦手だから、ルナティックが転生先になったんだな。
「フィアーナの話の続きなんですが、
フィアーナ以外とも、
関係を持つと、
彼女がぼくのことを嫌いになって、
僕の前から、
いなくなっちゃうと思うんです。
どうすれば、いいでしょうか?」
「その点は、対策してありますから、
安心してください」
対策してあるのか。
「はい。男性に、欲望を満たして、
次の生の活力を養っていただくため、
永美族……3種族を生み出しましたし、
対策も、してあります」
3種族が女性だらけで、全員が美しく、グラマラスに成長することも、男の欲望を満たすためのものなんですね。
「遊女……遊者種の女性が存在するのも、
男の欲望を満たすためですか?」
「彼女たちは、昔の魔王の介入によって、
誕生したんです。
詳しいことは、ルナティックの歴史に
関係していますので、
おおまかに、お話しますね」
日本史は、好きじゃなかったのに、わくわくするな。
「おねがいします」
「はい。
まずは、ルナティッシアを
生み出すところから、ですね」
始祖の話か。
「有人惑星は、人類の進化を促すための特別種と
基本種を生み出さないといけません。
ルナティックでは、特別種として、
アイギス、銀獣族、聖霊族、そして、王竜族の始祖、
基本種を多く、生み出しました」
基本種は、初めから、多人数なんだな。
「アイギスや3種族の始祖と子孫のことは、
永遠に美しいと書いて、永美族、
基本種のことは、栄えて、盛り上がると書いて、
栄盛族と、呼んでいます」
栄盛族は、聞いたことがないけど、どこかには、いるのか。
「永美族は、山、
栄盛族は、野に暮らすようにして、
時が来たら、出会わせて、
恋させようと思っていました」
魔王が介入して、おかしくしたのか。
「それが狂い出したのは、
約1300年前のことでした」
めっちゃ昔だな。
「永美族女性を
よりグラマラスにして、溢れさせるため、
当時の魔王が栄盛族の奴隷商に接触して、
淫魔茸、
秀姫封じシリーズの首輪を渡し、
永美族の情報を流してしまいました」
淫魔茸は、きのこで、女性を魔族好みに変化させるんだったよな?
「はい。それで合っていますよ。
秀姫封じシリーズは、特別種の女性、
高魔惑星人の女性を無力化する
アイテムです」
嫌な方向に、進みそうだな。
「奴隷商は、銃と屈強な男性たちを集めて
永美族の村に向かいます。
そして、年老いた方々や
男性を負傷させて、
身ごもれる女性を連れ去り、
奴隷にしてしまいました」
慈悲深いルナエルさまに、こんな辛そうな表情させやがって、許せねえ。
「初めから、永美族の女性たちは、
美しく、グラマラスに、
成長するようにしてありましたので、
栄盛族の男性、それも、不特定多数に
抱かれるようになってしまいました」
それによって、遊女が誕生するようになったんだな。
「淫魔茸の摂取者との混血になったせいで
遊者種が誕生し、
女性は、遊者種でなくても、
魔族好みに成長し始めました」
魔王の思う壺だな。
「最終的には、栄盛族は、絶滅して、
永美族は、人口が爆発的に増加しました」
永美族の女性に夢中で、同族の女性を抱かなくなって、滅んだんだろうな。
「ほかに、質問は、ありますか?」
「大丈夫です」
「それでは、魔族について、お話しますね」
敵の情報だから、これまで以上に、しっかりと、聞いておかないと。
「魔族は、ご存じの通り、
全員が赤黒い瞳、青白い肌、
紫紺色の血液を有します」
だから、男性姿の魔族でも、見分けられるんだよな。
「体液は、女性を無力化させ、
体表には、魔力膜があり、
〖属性変換魔術〗の威力を激減させます」
体液と魔力膜が無ければ、だれでも、討伐できるのに。
「彼らには、下級、中級、上級、
次期魔王候補である六狂血、
そして、魔王。
5つのランクが存在していて、
上昇する度に、強くなっていきます」
5段階しかないから、どれかのタイミングで、めっちゃ強くなるんだろうな。
「下級は、低身長な鬼の姿、
中級は、身長2メートルの筋骨隆々な鬼の姿をしていて、
〖邪気〗を扱えます」
鬼ね。
「上級は、人間の姿をしていて、
〖鬼化〗、〖自己再生D〗、〖同族支配〗、
〖邪気〗の上位種〖狂邪気〗、〖神気〗、
そして、強力なスキルを有しています」
ここまでは、調べたから、知ってる。
「六狂血になると、髪色がカラフルになり、
強力なスキルが追加されて、
魔王になると、髪色が赤黒くなり、
〖黒渦〗が追加されます」
ネトニスは、上級から、魔王になる過程で、スキル〖肉体変化:武器〗、〖不死鳥の因子〗を取得してきたんだな。
「魔王は、核の破壊なしで、討伐すると、
10年の眠りにつくのですが、
ネトニスの場合は、〖不死鳥の因子〗によって、
下級に戻るだけで、済みますし、
その度に、より強くなります」
ネトニスの能力、めちゃくちゃだな。
「約500年前、ネトニスがアイギス並に
強くなってしまって、世界樹を狙ってきました」
隠れて、強くなっていたんだろうな。
「ネトニスの強さが互角ですし、
完全討伐も、できないので、
アイギスは、彼に、
弱体化の呪いをかけるため、
〖始祖の器〗たちに、
彼の討伐を託すため、
自分を殺めさせました」
ネトニスの完全討伐を託すから、〖始祖の器〗には、〈セラフィム・ブレイズ〉の力を借りれる男児が選ばれるように、なっているのか。
ていうか、今、気づいたけど、始祖でも、殺されてしまうんだな。
「大昔、最強かつ、不死身の始祖が
存在していたのですが、
彼が暴走したとき、止めるのが
大変だったらしくて、
それ以来、始祖のルールが改定された……と、
女神育成学校で、教わりました」
女神さまを育てるための学校があるのか。
「ルール改定後、始祖は、
誰でも、努力次第で、到達できる強さで、
女神の権限、または、任意で、
魔力核を破壊できる状態にして、
殺めれるようにしないと
いけなくなったんです」
始祖でも討伐できない強敵のために、任意なんだろうな。
「はい。
そのための対策として、
始祖を殺めた者には、
その始祖が復活できるまで、
解除不可能な弱体化の呪いに、
かかるようになっています」
ネトニスみたいに強すぎる敵が少なからず、存在していたんだろうな。
「必要な説明は、以上です。
詳しくは、サテラに聞いてくださいね」
ルナエルさまは、立ち上がって、ぱちんっ……と、指を鳴らした。
直後、強烈な眠気が襲ってきて、意識が途切れた。




