第八話「天空島と始祖姫」
紫竜暦189年、後暑季。
2月21日。
魔王ネトニスとの遭遇から、6日が経過した。
――
サテラさんが金属製の箒に乗って、現れ、天空島イージスに向かうことになった。
俺は、飛行手段がないので、アクアが抱えてくれている。
「ここら辺かな」
サテラさんが呟いて、降下していく。
アクアとフィアーナが追従する。
「下ろすよぉ」
「うん」
アクアが地面に立たせてくれた。
「運んでくれて、ありがとう」
「大切なリョウくんを助けるのは、
当たり前だよぉ」
感謝を述べると、アクアは、美しく、温和で、涙ぼくろ付きの顔を綻ばせて、言ってくれた。
「《ルー。回収して》」
サテラさんがAI? に声をかけると、白い光がVDRチョーカーの縁を走り始めた。
直後、金色の大きな魔法陣が足もとに展開して、同色の光が包み込んだ。
サテラさんのAIは、ルナじゃないのか。
「この魔法陣、
〖疑似ワープ〗の魔法陣に
似てますねぇ」
アクアがサテラさんに話しかける。
「これは、昇降タイプだけど、
どちらも、ルナエルかあさんが
描いたものだからね」
「「「ルナエルかあさん!?」」」
「うん。
ぼく、王竜族の始祖だから……」
サテラさんは、指先露出の白い手袋越しの左手で、頬を掻きながら、照れ臭そうに教えてくれた。
掻く動きに合わせて、左手小指の〈テスタメント・リング〉が光を反射させる。
〈テスタメント・リング〉のおかげで、サテラさんには、ドキドキしないんだな。
「ずっと生きているのかな?」
「それは、アイギスだけだよ。
ぼくたちは、1500年周期で、
転生するんだ。
惑星、人種は、固定だけどね」
フィアーナが甘く、天使みたいな美声で、呟くと、サテラさんが教えてくれる。
なるほどな。
「そろそろ、到着するね」
サテラさんが告げた。
直後、金色の光が消失すると、途轍もなく、巨大な樹木が姿を現した。
巨大な樹木は、この浮島の端、海辺へと、根を伸ばしている。
「ここが天空島イージスだよ」
「海が浮いてる」
「海水じゃなくて、真水だよ。
イージスが生成していて、
結界で、支えているんだ」
フィアーナが呟くと、サテラさんが説明してくれる。
「なにか、来る」
「バイク?」
「ホバーバイクだぁ」
バイクみたいなもの3台が森の中から、浮きながら、現れた。
ホバーバイクは、この突堤を進んで、近寄ってくる、
俺たちの目前に迫ると、止まった。
「ふたりとも、乗って。
リョウは、このサイドカーね」
「昔、よく乗せてもらったなぁ。
懐かしい」
「わたし、運転できないです」
サテラさんが指示してくれると、フィアーナが告げる。
「大丈夫。
自動追従モードにしてあるから、
運転は、不要だよ」
サクラさんが告げると、フィアーナは、安堵した。
世界樹に向かって、森の中を走行していると、前方の地面が下り坂になった。
下り坂を進むと、ハイテクな部屋に到着。
『3台のホバーバイクを確認。
降下します』
部屋の少し奥に、止めると、ルナエルさまボイスでのアナウンスが流れて、床が降下を開始した。
「すげえ……」
「すごい……」
壁が透明地下なものに変わると、地下都市が現れて、俺とフィアーナを感動させる。
地下都市の中心には、円柱状のタワーが建っている。
「たくさんのひとが
暮らしているんですね」
「人間は、ぼくら始祖姫、
〖アイギスの器〗所持者と家族だけ。
出歩いているのは、
アンドロイドちゃん、
人間そっくりのロボットね」
さすが、上位惑星。
《到着しました。
開放します》
床が地面に収まって、停止した。
ルナエルさまボイスでのアナウンスが流れて、前方の壁が開いた。
地下都市へと、橋を走行していると、白壁が下がり始めた。
俺たちが数メートルに迫ると、白壁が橋に収まった。
通過して、振り向くと、白壁がせり上がり始めた。
「あっ、サテラさまだ」
「サテラさま、おかえりなさい」
「ただいま」
地下都市を走行していると、グラマラス美少女たちが声をかけてくる。
すると、サテラさんは、美しく、温和で、聡明な顔を綻ばせて、返事する。
「彼女たち、
本当に、アンドロイドなんですか?」
「そうだよ。
元・アーシアの君からすれば、
人間だと信じちゃうだろうね。
でも、よく見てみて。
どの種族の特徴も、見当たらないでしょ?」
「ほんとだ」
刃角も、獣耳と尻尾も、ないし、耳も、若葉状じゃない。
――
「さっちゃーん」
タワーに足を踏み入れると、女性の美声が左のほうから、聞こえた。
そちらを見ると、垂れ目で、橙色の大きな瞳の北聖霊族おねえさんが美しく、温和で、人懐っこい顔を綻ばせ、右手を振っていた、
彼女は、ブラウスに、膝丈スカートを合わせ、水色の袖なしローブを羽織った姿で、歩いて、近寄ってくる。
その動きに合わせて、長い茶髪、そして、ローブとスカートの裾が軽く靡く。
さらに、首飾りの〈ファンタジック・コア〉――橙色の勾玉で、〈幻想武具〉の核――、そして、右手首の〈炎のルナリング〉が軽く、揺れる。
だが、豊満すぎる胸は、ブラウスの特殊効果により、微動だにしない。
「こんにちはぁ」
「「こ、こんにちは」」
「こんにちはぁ」
北聖霊族おねえさんが瑞々しく、艶やかな唇を動かして、甘く、包み込まれるような美声で、挨拶してくれたため、3人で、返した。
「フレア、どうしたの?」
「25代目ちゃんを見たくて、
上がってきちゃった」
サテラさんが尋ねると、北聖霊族おねえさん、改め、フレアさんは、照れ笑いしながら、ここに来た理由を述べた。
「この子が25代目ちゃんだよね?」
彼女は、前傾姿勢になって、目線の高さを合わせると、サテラさんに確認する。
前傾姿勢になったことによって、ブラウス越し、圧倒的な豊かさの胸が強調されるが、彼女の〈テスタメント・リング〉の効果により、ドキドキしない。
「そうだよ。
彼が25代目〖始祖の器〗の
リョウだよ」
「わたしは、フレア。
始祖の炎天姫なんだぁ。
よろしくね。りっちゃん」
「おねがいします」
「ふふっ、かわいい」
フレアさんは、上品に笑って、指先露出の白い手袋越しの美しく、しなやかな右手で、頭を撫でてきた。
――
『地下鍛練場に到着しました。
扉を開きます』
エレベーターで、タワーの地下へと向かっていると、ルナエルさまボイスでのアナウンスが流れて、扉が開いた。
鍛練場に足を踏み入れて、階段を降りきった。
すると、やや垂れ目で、濃い桜色の大きな瞳の南聖霊族おねえさんが振り返り、美しく、温和で、凛々しい顔を綻ばせる。
彼女は、ブラウスに、膝丈スカートを合わせて、水色の袖なしローブを羽織った姿で、駆け寄ってきた。
その動きに合わせて、淡い金髪、そして、ローブとスカートの裾が靡く。
さらに、首飾りの〈花のファンタジック・コア〉――濃い桜色の〈ファンタジック・コア〉――、そして、右手首の〈花のルナリング〉が揺れる。
だが、フレアさんと同じ豊かさの胸は、ブラウスの特殊効果により、微動だにしない。
「アマネ! 25代目を連れてきたよ!」
サテラさんが呼びかけると、垂れ目で、青色の大きな瞳の南銀獣族おねえさんなアマネさんが素振りをやめた。
そして、こちらを確認するなり、美しく、お淑やかで、涼やかな顔を綻ばせた。
彼女は、サテラさんと同様の姿で上品に、近寄ってくる。
凄腕の剣士で、動きにブレないからか、長い黒髪、ローブやスカートの裾、装飾品は、ほとんど動いてない。
「かわいい……!」
「25代目は、愛らしいのですね
ふたりのおねえさんが前傾姿勢になって、目線の高さを合わせ、褒めてくれる。
前傾姿勢になったことによって、ブラウス越し、圧倒的な豊かさの胸が強調されるが、ドキドキしない。
アマネさんは、〈テスタメント・リング〉を着けているけど、南聖霊族おねえさんは、着けてない。
左手首のブレスレットも、〈テスタメント・リング〉のひとつなのか?
『はい。
あのブレスレットは、
〈テスタメント・バングル〉といって、
主従契約の証らしいです。
主従契約は、妾とするものなため、
婚姻契約みたいに、
ほかの異性を意識させないそうです』
サクラが〖神気〗の〖念話〗で、教えてくれる。
「おねえちゃん、自己紹介は?」
やや垂れ目で、紫色の大きな瞳の銀獣族おねえさんが彼女たちに並んで、自己紹介を促した。
彼女は、腕を組んでいるため、首飾りの〈雷のファンタジック・コア〉――紫色の〈ファンタジック・コア〉――、そして、ブラウス越し、フレアさんと同じ豊かさの胸が持ち上がっている。
だが、〈テスタメント・バングル〉の効果で、ドキドキしない。
「アマネと申します。
始祖の雨天姫を
務めさせていただいています
よろしく、おねがいいたします」
アマネさんは、胸もとに、美しく、しなやかな手を添えて、自己紹介してくれる。
手を添えたことによって、首飾りの〈雨のファンタジック・コア〉――青色の〈ファンタジック・コア〉――に接触した。
「あたしは、ビオラね。
始祖の花天姫よ。
よろしくね」
「シオン。雷天姫。よろしく」
「「「おねがいします」」」
三者三様の自己紹介だな。
「嵐天姫さんは?」
「「彼女は……」」
「あの娘は……」
「フウランは、戦闘狂だから、
教えさせられない」
サテラさんたちが言い淀むと、やや垂れ目で、紫色の大きな瞳の南銀獣族おねえさん、改め、シオンさんがはっきり言ってくれた。
「「シオン」」
「シオン。
無類の戦闘好き……と、言いなさい」
「おねえちゃんみたいに、
丁寧な言葉、出ない」
この会話、姉妹すぎるな。
「こんな感じの妹ですが、
本当は、すごくかわいいんです」
「や、やめて。
500歳下の子に、教えないで」
シオンさんは、美しく、凛々しく、大人しそうな顔を赤らめて、アマネさんに言う。
「でも、印象が――」
「気もちだけで、いい。
アクア、行こう」
「は、はい」
シオンさんは、美しく、しなやかな右手で、アクアの左手首を掴んで、向こうに連れていった
恥ずかしすぎて、この場に入れなくなったんだろうな。
「あたしたちも、行かないと」
「そうですね。
離れがたいですが、
ユキネたちも、待っているでしょうし」
「ユキネたちを
おねがいします」
「お、おねがいします」
南聖霊族おねえさん、改め、ビオラさん、アマネさんに言うと、アクアと重なると、フィアーナが慌てて、続いた。
「はい。
ユキネは、左翼ですから、
しっかり、鍛えさせていただきます」
「ちゃんと強くしたげるから、
安心して」
めっちゃ強くしてくれそう。
「では、失礼します」
「またね」
アマネさん、ビオラさんは、俺たちに挨拶して、エレベーターへと向かっていった。
「それじゃあ、ぼくたちも、やろう」
「「おねがいします」」
「フィアーナちゃんには、
〖星天の王気〗を極めてもらって、
リョウには、
〖不変魔術〗のスペシャリストに
なってもらうよ」
使えるようになるんじゃなくて、スペシャリストになるんだ。
「極めれますか?」
「どんな子でも、
3年で、極めれるから、
大丈夫だよ」
フィアーナが不安になって、尋ねると、サテラさんは、笑顔で、返答した。
「今日は、魔素吸収、魔力排出の
応用的な技術を説明するね。
両目に魔力を集中させて、
ぼくを見てみて」
「「は、はい」」
両目に魔力を集中させると、白いオーラがサテラさんを包み込んでいた。
「白いオーラみたいなものが見えるでしょ?
このオーラが排出されている魔力だよ」
〖王気〗じゃないんだな。
「生物は、呼吸と同じように、
無意識の内に、魔素吸収と魔力排出を
行っているんだ」
「呼吸で、しっかりと、魔素を吸収しつつ、
細胞の隅々まで、魔力を巡らせることで、
戦闘力が10倍になるんだ。
これが〖バフ・ブレス〗だよ」
某鬼狩りの強化方法みたいだな。
「〖魔力探知〗は、排出されている魔力を探知して、
排出量で、強さを把握するんだ。
だから、魔力排出を抑えることで、
上級以上の魔族に、弱いと思わせれるよ」
騙せられるんだな。
「あと、魔力排出の範囲内であれば、
どこからでも、魔術を放てるんだ。
こんな風に。〖魔力変換・風〗」
サテラさんが排出魔力を広げて、省略詠唱。
直後、緑色の魔法陣2枚が彼女の目前、俺の頭上のそれぞれに展開して、風を放つ。
2方向からの風は、髪を暴れさせた。
すげえ。
サテラさんのこと、師匠って、呼ばせてもらおう。
第二章「少年期 敵との遭遇編」、終了。
次回、第三章、開始。




