第五話「サテラとの再会」
前回のあらすじ。
なんとか、教会に到着。
女神像の力で、聖剣覚醒が使用可能になった。
〈聖剣〉必殺技である〖闇祓い〗を放って、魔王ネトニスを撤退させることに成功した。
バトル回。
後半、三人称。
月明かりが照らす中、サクラと手を繋いで、教会からの石畳みを歩く。
「サクラ」
「はい」
話しかけると、サクラが美しく、温和で、お淑やかな顔を綻ばせて、返事してくれる。
「説明、どうしよう?
夜中に出歩いているし、
服も、汚れているし」
「わたしが説明しますから、
リョウさまは、お気になさらないで……うっ」
銃声のような破裂音が後方から、聞こえた。
それと同時に、サクラが声を漏らして、美しく、しなやかな右手で、自分の左肩を押さえ、座り込んだ。
血液が彼女の右手の隙間から、溢れて、左の細腕を伝っていく。
「サクラ、大丈夫か?」
「少し、やばいかもしれません。
弾丸が肩の中に、
残ってしまっていて、
再生できないので」
サクラが辛そうに、返答する。
「どうしたらいい?」
「自分で、解決――」
「できねえよ」
男性の声が後方から、サクラの言葉を遮ってきた。
振り返ると、いなくなったはずのネトニスが立っていた。
手を銃に変化させて、発砲したのか。
「なんで……?
〖闇祓い〗で、撤退させたはずなのに……」
「ああ。
〖闇祓い〗を受けて、体は、消滅したぜ。
〖神聖気〗を感じたときに、
片腕を切断して、木の陰に投げといた。
そのおかげで、即効、復活できたし、
秀姫封じの銃弾を使って、
そいつを無力化できた」
しゅうき封じっていうのは、〈セラフィム・ブレイズ〉を無力化できるのか。
「次は、俺を殺す気か?」
「ご名答。
この惑星の始祖は、
自分の命を引き換えにして、
弱体化の呪いをかけてきやがった」
自分の命を引き換えにして、呪いをかけた?
始祖アイギスは、ネトニスに呪いをかけるために、自分を殺させたのか?
「呪いをかけたことを後悔させるには、
どうしても、器持ちのおまえを
殺さないといけねえんだわ」
どうして、そうなるんだよ。
「その天使は、手こずらせてくれたからな、
おまえを殺す前に、ボコっとくか」
ネトニスは、こちらに近寄ってくる。
「リョウさま?」
「サクラを傷付けたかったら、
俺を倒してからにしろ!」
「ぷっ、あはははは……」
サクラを背にして、言い放つと、ネトニスが笑い始めた。
「笑うな!」
死への恐怖によって、息が荒くなっていて、春夜の空気が寒く感じる。
「おまえ、マジで、知らねえのかよ。
天使は、ご主人さまが殺されると、
いったん、消滅して、
次のご主人さまのもんになんだよ」
そうだった。
〈セラフィム・ブレイズ〉は、どんなダメージや状態異常を負っても、すぐに癒える。
だが、契約者が命を落とすとともに、初期化されるんだった。
「サクラ。
初期化されるときは、苦痛は、感じないよな?」
「感じませんが……まさか!?」
サクラの返答を聞いて、再度、両腕を広げる。
「リョウさま、やめてください!
今すぐ、逃げてください!」
逃げても、意味がないと思う。
「おい、天使。
ご主人さまを逃がしても、無駄だぜ。
なあ? 器持ち」
「あいつは、召喚できるから、
どんなに逃げても、召喚される。
どうせ、サクラを初期化させてしまうくらいなら、
サクラが苦痛を味わずに済むほうがいい」
ネトニスは、魔族だから、暴力を振るうだけじゃなく、サクラを抱きかねない。
それだけは、絶対、嫌だしな。
「それじゃあ、フィアたちとの約束は、
どうするんですか?」
フィアーナ、ユキネ、リルの顔が思い浮かんで、覚悟が揺らぐから、言うなよ。
「フィアーナを幸せにして、添い遂げる。
みんなも、幸せにする。
そうしたいし、約束したけど、
これ以上の方法は、思いつかない」
聖霊族として、転生していれば、スキル〖真なる聖霊〗、〖聖精の刃〗が使って、この状況を打破できたかもな。
『ぼくがなんとかするよ』
女性の美声が右側の木々、その下方から、聞こえた。
――
「《ルー。
〈デュアル・ドローン〉に繋いで、
スピーカーモードを起動》」
リョウの位置から、500メートル付近。
サテラがブラウスに、膝丈のスカートを合わせて、水色の袖なしローブ姿で、〈VDRチョーカー〉――魔力を経て、仮想パソコンを反映させる首輪――のAIルーに指示する。
直後、白い光が〈VDRチョーカー〉の縁を走り始めて、〈デュアル・ドローン〉――10センチ四方のドローンで、カメラ、スピーカー機能を有する――が、リョウの右側、木々の間に置かれた状態で、起動した。
サテラが魔力を気化させると、〖星天の王気〗――赤色の〖王気〗――に変化する。
そして、赤いメッシュが白銀髪に入り、〖闘気〗由来の四肢――両方の手足――鎧が現れ、〖星天の王気〗が、彼女の全身を包み込んだ。
「ぼくがなんとかするよ」
サテラが瑞々しく、艶やかな唇を動かし、甘く、優しげな増艶美声で、言うと、彼女の美声が〈デュアル・ドローン〉から、流れた。
サテラがスキルを発動。
直後、〖星天の王気〗が輝いて、紅結晶の刃角――刃状の角で、赤色の結晶でできている――、白銀髪の赤色メッシュ、そして、垂れ目で、赤色の大きな瞳とともに、紫色に変化した。
続けて、彼女は、橙色を帯びた状態の短剣に、魔力を流す。
直後、短剣が橙色に輝いて、炎を帯びる。
そして、彼女が橙色の炎を帯びた状態の短剣を投げるとともに、スキルを発動。
直後、紫色の〖星天の王気〗が輝いて、短剣を弾き、ネトニスへと、高速接近させる。
「うわっ」
橙色の炎を帯びた状態の短剣は、ネトニスに迫ると、彼の左側頭部に直撃するとともに、爆発し、頭部を吹き飛ばし、進行方向の木々を倒していった。
ネトニスが胴体だけになったと同時に、リョウがまぶたを閉じる。
直後、黒紫色の破片が同色の液体とともに、リョウの全身を汚した。
サテラが戦闘靴――金属繊維のブーツ――、膝上丈の白い薄タイツ越しの美脚で、地面を蹴るとともに、スキルを発動。
直後、サテラの全身が霊体化すると同時に、赤色の小爆発が彼女の足もとに発生し、ネトニスのもとへと、高速接近させる
「〖魔力糸〗」
ネトニスに迫ると、サテラは、霊体化を解除して、彼へと、指先露出の白い手袋越しの右手の平を向け、省略詠唱。
直後、紫色の〖星天の王気〗に包まれた状態の白い魔法陣が、右手の平に展開して、〖王気〗と同色の〖魔力糸〗――魔力製の太糸――を射出し、ネトニスの胴体を拘束させた。
続いて、サテラが細い右腕を振るうと、〖魔力糸〗が駒みたいに、ネトニスの胴体を吹き飛ばし、教会のオーロラみたいな結界に、背中を強打させた。
「〖星の息吹・桜花〗」
サテラが2メートルの高さから、〖闘気〗由来の両翼を広げて、降下しながら、省略詠唱。
直後、紫色の〖星天の王気〗が輝いて、紫結晶の刃角、白銀髪のメッシュ、そして、垂れ目で、紫色の大きな瞳とともに、濃い桜色に変化した。
サテラが戦闘靴、膝上丈の白い薄タイツ越しの美脚で、着地。
それによって、桜色グラデーション、肩にかかる長さの白銀髪、首飾りの赤色勾玉、そして、袖なしローブと膝丈スカートの裾が少し舞い上がり、すぐに収まった。
さらに、右手首の〈星のルナリング〉――赤色のシリコン製リストバンド――が揺れるが、豊満すぎる胸は、ブラウスの特殊効果により、揺れない。
「〖纏桜・生成〗」
サテラが省略詠唱すると、濃い桜色の〖星天の王気〗が輝いて、指先露出の白い手袋越しの左手もとに、〖王気〗と同色の球根を生成。
続いて、彼女は、ネトニスの胴体へと、球根を投げる。
球根は、放物線を描いて、彼に直撃し、前方の地面に転がった。
直後、濃い桜色の球根が急成長して、複数本の触手になり、彼を拘束した。
「やあ、久しぶり」
サテラは、リョウに声をかけた。
「お久しぶりです」
「うん。
早速だけど、この〈QMPアンプル〉を刺させてね」
サテラは、緑色薬液入りのアンプル――USBメモリ状の容器で、注射機能を有する――を見せる。
「中身は、〈クイック・マナ・ポーション〉だよ。
〈マナ・ポーション〉に、
〈アクティベーター〉を混ぜてあるから、
急速に、魔力を回復できるんだ。
体の中が熱くなっちゃうけどね」
彼女は、緑色の薬液について、説明した。
「ちくっとするよ?」
サテラがリョウに告げて、彼の右腕に〈QMPアンプル〉の底を押し付けた。
すると、短い注射針がリョウの皮膚に突き刺さって、彼の体内に、〈クイック・マナ・ポーション〉を入れていく。
「ありがとうございます。
あと――」
「サクラちゃんの治療だよね。
今は、時間がないから、
応急処置だけさせてもらうね。
〖星の息吹・青雨〗」
サテラが省略詠唱すると、濃い桜色の〖星天の王気〗が輝いて、桜結晶の刃角、白銀髪の濃い桜色メッシュ、そして、垂れ目で、濃い桜色の大きな瞳とともに、青色に変化した。
「〖纏色・変化〗、〖凝固〗」
サテラが青色の〖星天の王気〗を広げて、サクラを収め、連続で、省略詠唱。
直後、青色の〖星天の王気〗が輝いて、サクラの右肩を包むように、同色の水を生成し。凍結させた。
「おい! そこのドラゴン女!
いきなり、神聖系の攻撃で、
俺の頭を粉砕しやがって!」
ネトニスの首が再生したところで、彼が複数本の触手に拘束された状態で、サテラに向かって、声を荒げる。
「サクラちゃん、待っててね」
「は、はい」
「無視してんじゃねえ!」
サテラがネトニスを無視して、サクラに告げる。
そして、騒がしい彼へと、右手の平を向けた。
「おまえ、あのときの――」
「〖シャイン・バスター・ピュリファイ〗」
サテラが魔術とスキルを同時発動。
直後、青色の〖星天の王気〗に包まれた状態の白い魔法陣が右手の平に展開。
続いて、青色の〖星天の王気〗が輝いて、魔法陣から、浄化属性を帯びた状態の青い光線を放たせる。
浄化属性を帯びた状態の青い光線は、ネトニスの頭部に直撃して、消し飛ばした。
「教えたいことのひとつを話すね」
浄化属性を帯びた状態の青い光線が収まったところで、サテラが話を切り出した。
「今のエネルギー製の糸と光線を
見ていたよね?」
「はい」
「あれらは、
魔力そのもので、攻撃したりする魔術……〖不変魔術〗で、
魔族の体表の魔力膜を無視して、攻撃できるんだ」
魔族は、魔力膜に覆われているため、皮膚が硬くて、属性変換魔術が効かないみたいだ。
「どうして、魔力そのものでの攻撃は、
通用するんですか?」
「魔力膜は、魔力同士がくっつき合って、
できているんだ。
魔力同士が離れないようにするため、
魔力は、弾けないんだ。
だから、魔力とか、それに近い〖闘気〗や
〖王気〗での攻撃が通用するんだよ」
リョウが納得したところで、ネトニスの頭部が再生した。
「いきなり、頭を消し飛ばすんじゃねえよ!
始祖を殺したときも、
俺の頭を消し飛ばしてくれやがって!」
「そうするに、決まっているだろ?
ぼくの大好きなアイギスを殺したんだから」
ネトニスの文句に対して、サテラが少し怒りを帯びた状態の美声で、応える。
「それにしても、よくしゃべるね。
体は、拘束されて、動けないし、
再度、頭を消し飛ばされたら、
下級から、成長し直さないといけなくなるのに」
「くっ」
サテラがネトニスの現状を伝えると、彼の顔が悔しさで、歪む。
「ネトニス。
ぼくに頭を消し飛ばされて、成長し直すか、
おとなしく、完全撤退するか、選べ」
「ちっ。
わかったよ。撤退する」
(本当か?)
リョウがネトニスを怪しむ。
「いい判断だね」
サテラがネトニスを褒めて、右手を向け、魔術を4重発動。
直後、青色の〖星天の王気〗に包まれた状態の白い魔法陣4枚が右手の延長線上に展開して、〖王気〗と同色の――魔力製の弾丸――を放つ。
計4発の〖魔力弾〗は、触手に直撃すると同時に、小さく爆発して、ネトニスを解放した。
「おい、器持ち。
次、会った時は、必ず殺すからな。
覚えてろよ」
ネトニスがリョウに言い放って、〖黒渦〗を発動。
直後、黒い渦が彼の足もとに発生して、彼を飲み込んでいき、消失した。




