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首を括った先は、デュラハンでした。  作者: from_Uta
始まり

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8/29

8

段々と道が険しくなる。勾配も少し上がってきたか、どうやら川上の方に向かっているのようだ。

緑や紫の草たち、食べてるのか分からない実をした果実やキノコ類も見られる。


たまに動く植物もある、大概は小さい。

3匹ともあまり気にしていないようだ。

向こうもあまり気にしていない。

いや、少し道を譲ってくれているようにも思う。


木々の先から見える山々。一際大きい山も見える。


きゅ、きゅきゅきゅっ

山に近づくと目的地に近づいてるのか嬉しそうに駆け足で2匹のウサギが向かう。


森の先で何やら光ってるように見えた。

それがゆらゆらと、いや中には早く動いている。


きゃっきゃという声も聞こえてくる。


よく見ると羽を4枚生やした子供たちが、いや小人たちが戯れながら、地面にはお花やさまざまな草が生い茂っている。

角の生えたウサギをはじめ、カピバラのようなやつも見たことないものもいる。木々には様々な鳥が羽を休めている。


そして、少しひらけた泉のようなところには1匹の本当に立派な角と体躯をした鹿がこちらを見つめていた。


鹿は動かない。


泉のほとりに四本の脚を据え、ただ静かにこちらを見つめている。


でかい。


狼もかなり大きいと思ったけど、それよりさらに大きい。


何より角だ。


何本にも枝分かれした立派な角が、まるで木そのものみたいに頭上へ広がっている。その隙間には蔦のようなものまで絡み、小さな白い花が咲いていた。


……あれ、地毛ならぬ地花なのかな。


「きゅーっ!」


「きゅきゅっ!」


二匹のうさぎが駆け出した。


あ。


僕を案内してたんじゃなくて、ここに帰ってきたかったのか。


二匹は鹿のところまで走ると、その周りをぴょんぴょん跳ね始めた。


「きゅっ、きゅきゅ!」


「きゅー!」


鹿がゆっくりと首を下げる。


まず最初のうさぎ。


鼻先を近づけ、匂いを嗅ぐような仕草。


次に――折れ角の子。


「…………」


鹿の動きが止まった。


折れた角へ鼻先を近づける。


背中。


腹。


傷があったはずの場所。


何度も確かめている。


やがて鹿の視線が上がった。


僕を見る。


……。


いや。


正確には、僕の首があるはずの辺りを見ている。


なんだか気まずい。


治したの僕です。


たぶん。


どうやったのかは分からないけど。


そんなことを身振りで伝えようか迷っていると――


「この子を助けたのは、あなた?」


声がした。


え?


辺りを見回す。


小人たちは遊んでいる。


狼も後ろにいる。


鹿。


…………まさか。


「こちらよ、こちら」


今度は上。


ふわり。


淡い光が降りてきた。


四枚の透き通った羽。


手のひらに乗ってしまいそうなほど小さな女の子が、僕の目の前――


いや。


顔があるはずの位置で止まった。


近い近い。


小人……妖精?


金色がかった髪。


草と花を編んだような服。


そして。


ものすごく僕を見ている。


上から。


下から。


横へ回って。


反対側から。


もう一度正面。


「…………」


僕もたぶん、見ている。


目はないけど。


妖精は首を傾げた。


「あなた――」


一拍。


「お顔、どこに置いてきたの?」


…………。


俺が聞きたい。


「きゅっ!」


折れ角のうさぎが抗議するように鳴いた。


「あら、ごめんなさい」


妖精は素直に謝ると、再び僕を見る。


その後ろでは、他の妖精たちも異変に気づき始めていた。


一人。


二人。


三人。


木の陰からも。


花の中からも。


光の粒みたいなものが次々と浮かび上がってくる。


「なになに?」


「だれ?」


「おっきい!」


「くろい!」


「首ないよ?」


「ほんとだ!」


「どこいったの?」


「落とした?」


……。


囲まれた。


十人どころじゃない。


四枚の羽をぱたぱたさせながら、妖精たちが僕の周りを飛び回る。


一人なんて首元のすぐ上に座ろうとして――


すぽっ。


黒い靄の中に下半身が入った。


「…………」


「…………」


妖精が固まる。


僕も固まる。


「きゃああああああ!?」


慌てて飛び出した。


「なにこれ! なにこれ!」


……知らないって。


周囲から、きゃっきゃと笑い声が上がる。


なんだか。


随分と賑やかなところへ来てしまったらしい。


そんな中でも。


泉のほとりの大鹿だけは笑わなかった。


静かにこちらを見つめている。


僕の身体。


腰の剣。


そして――小手。


魚の血を吸い込んだ、あの場所を。


鹿の瞳が、ほんの少しだけ細くなった。

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