エピソード7
剣は刃こぼれ一つしてないようだ。
!?
血が、、、
剣に馴染んでいく、
いや、溶けていく?
何と言えばいいのか魚の血が吸われていくのだ。
剣に、、、
小手に、、、
吸っているのは僕の身体もだった、、、
驚いている僕の側で妙な息づかいを感じる、あまりにはぁはぁ聞こえる。
横を見た。
よだれがだらっだらに溢れながらこちらに物欲しそうにみている犬がいた。
いや狼が。
...。
あー僕待ち?
僕が切り倒したから?
なら横取りしてしまったのか、まーでも今回はしょうがないよね。
いいよ、食べな。
僕はOK牧場のサインをした。
OKのサインをみるやいなや一瞬で魚の化け物だったものと狼は合体した。いや食らいついている、断面は若干の血抜きのような感じで身がツヤツヤと剥き出している。
この血だったものはどうしてか剣と僕の身体に溶け込んでしまったのだった。
えードラキュラもびっくりだよねー、
心なしか小手や剣はピカピカになったような気もしないでもないけれど、
べしゃり、
魚の身の破片が飛んでくる。
がちゃん、
今度は鱗が脛にぶつかる。
はーなんだかどっと疲れたような。
いや身体に張りとかは感じないんだけどさ、
後ろではホッとしたのか、うさぎたちがもしゃもしゃと毛繕いしたり、先がフワリとした柔らかそうな草をこれまたもしゃもしゃしている。
俺はどうするかなー、
太陽は木々の向こうへ、ゆっくりと傾き始めていた。
紫色の葉の隙間から差し込む光も、さっきより少しだけ赤みを帯びている。
……午後。
そう思ったけど。
何時なんだろう。
そもそも一日って何時間なんだ?
ここがどこかも分からないのに、地球と同じように考えていいものなのか。
まあ、太陽が沈みそうなら夜にはなるんだろう。
たぶん。
「ガツッ、バキッ……グチャッ」
…………。
後ろがうるさい。
振り返る。
狼はまだ食っていた。
すごい。
さっきまでの痩せ細った身体のどこに入るんだってくらい食っている。
魚の化け物は、もう半分くらいになっていた。
……全部食う気か?
そう思って見ていると、狼がこちらの視線に気づいた。
「…………」
口いっぱいに魚を咥えたまま固まる。
「…………」
僕も見つめる。
「…………」
いや、取らないよ。
手をひらひらさせる。
すると狼は安心したように、
バキッ!
また食べ始めた。
骨ごといったな、今。
元気そうで何よりだ。
さて。
僕はどうしよう。
水はいらない。
腹も減らない。
さっきあれだけ動いたのに、息切れもしない。
疲れたような気はするのに、身体は全然疲れていない。
不思議な感じだ。
寝る必要はあるのかな。
そもそも眠くなるんだろうか。
……夜になってから考えればいいか。
とりあえず、ここにずっといる理由もない。
川沿いなら何かあるかもしれないし。
人……。
いるのかな。
ふと、そんなことを考えた。
自分の姿を見る。
黒っぽい鎧。
長い剣。
そして首がない。
…………。
いたとして。
これ見たら逃げるよな。
いや。
逃げるだけならまだいい。
討伐とかされない?
そう思ったところで。
「きゅっ」
足元から声がした。
折れ角の兎だ。
いつの間にかすぐそばまで来ていた。
「きゅ」
ぴょん。
僕の足を越える。
そのまま数歩進んで、振り返った。
「きゅっ」
まただ。
さっき水場へ案内してくれたときと同じ。
……まだどこか連れていってくれるのか?
もう一匹の兎も毛繕いをやめて、その後を追っていく。
狼は――
「…………」
まだ食ってる。
お前はもうちょっとかかりそうだな。
折れ角がもう一度、
「きゅー!」
と鳴いた。
今度は少し急かすような声だった。
その先には川沿いに続く、獣道のような細い道。
木々の隙間から傾いた陽が差し込んでいる。
……。
まあ。
行くところもないしな。
僕はまだ魚に食らいついている狼へ手招きをしてから、二匹の兎の後を歩き始めた。




