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足取りが重い…
一歩進むたびにまた怒られるのかなと思うと泣きそうになってきた。いや多分涙は出ないのだけれど。
そんな風に森を進んでいると何やら声が。
「%〆→+¥<%^○→☆!」
うーん森が音を吸収するからよく聞こえない。
「おかあさん…ごめんなさい」
おー耳に集中すれば音は探せるのか。
耳もないけれど。
同時にガルルルと獣の音もする。
言ってみるか…
ウサギたちは怯えてるので大狼だけついてきた。
少し急いでみると木の上で少女が震えている。木の下でグルグルと狐をより凶暴そうにした奴らが数匹少女に吠えている。
よく分からんがとりあえず追い払うか。
僕が夜と狐たち?が僕に気づくなり血相を変えて逃げていった。
え?俺そんな怖くないよね。
僕は少女を見る。
少女もこちらを見る。
さっきより悲痛な顔になって目に色がなくなった。
するりと木から落ちてくる。
えー…
とりあえずキャッチした。
脈はある。とりあえず死んではないようだ。
いや見ただけで死なれても困るけどね!
大狼はずっと唸っている。
ん?こんな女の子にも怖い顔するの?
メッ!
大狼を鎮めてとりあえずウサギたちの元へ戻る。
でもウサギたちも怖がって近づかなかった。
え?なんで?
そんなこんなしてたら少女が目を覚ましていることに気づいた。
もう怯えすぎて生気を手放しそうな顔をしていた。
いやいやなんもしないって。
僕は声をかけられないけれだ、できるだけ優しくおでこを撫でてやった。
それからしばらく
何とか彼女も分かってくれたのだろう。
「助けてくれてありがとう…」と涙ながらに言葉にするのだった。
僕は別に構わないさと
手の革の部分で涙だけは拭いてやった。
加減が分からなくて手が震えた。
手元から地面に下ろしてやり、僕は木の棒で家らしきものを書いて女の子に矢印をそして家に?をつけて書いてみせた。
私山菜を取りに来たの。でも夢中になってどこが家かわからないの…
また泣きそうになってる…
えーどうしよう。僕も方向とか森分かんないしなー。
みんなわかる?
僕はウサギや狼に体を向けるとみんな怖がって近づかない。
どうしたんだよー。
みんなー。
女の子もうーと泣いている。
動物たちもきゅぅと泣いている。
おいおい。
でも女の子がで泣き出すと動物たちは寄り添い始めた。
おー優しい。
モフモフは次第に彼女の涙をひかせた。
「人間の子か…」
大鹿だ。
「森に人間はいらぬ。最近はトラブルしか起こさぬ。それでお主どうするのだ?」
え、そうなの。
まー家に返すよ。
…
少しの間を置かれて。
「好きにせよ…
一番近くの村なら川を降れば見つかるだろう」
戻るのかー。
少し億劫ではあるが、仕方ない。
そう思ってると蔦の鹿が来た。
その子に魚を預けると僕たちは来た道を戻るのだった。女の子は大狼の背に乗せて進んだ。もはや眠っているのだが。
結構この子図太いな。
いや流石に疲れたのか。
さて。
川を下ること、しばらく。
……。
しばらくって、どのくらいだ?
時計もないし、太陽も木々に隠れている。
そもそもこの世界、一日が何時間なのかも分からない。
まあ、いいか。
大狼の背中では、少女がすやすやと眠っている。
時折、身体が揺れるたびに小さな手が大狼の毛をぎゅっと握る。
「……んん」
おっと。
落ちるなよ。
僕が手を添えると、大狼は少し歩調を緩めた。
おお。
気が利くじゃない。
さっきまで唸ってたくせに。
「ウォフ」
はいはい。
偉い偉い。
頭を撫でると、大狼は少しだけ尻尾を振った。
……。
しかし。
この子、何歳くらいなんだろう。
十歳?
いや、もう少し小さいか。
服はところどころ泥で汚れている。
膝にも擦り傷があった。
森の中をずいぶん歩いたんだろうな。
山菜を採りに来たって言ってたけど。
一人で?
危なくない?
……。
まあ、僕が言えたことじゃないか。
さっき川を湖にしたばっかりだし。
*
やがて、木々の間から明るい光が差し込んできた。
お?
森が開けてきた?
川幅も少し広くなっている。
遠くには草原らしきものが見えた。
そして。
……。
あ。
煙だ。
細い煙が、空へ何本か伸びている。
村かな。
よかった。
ちゃんとあった。
「……ん」
そのとき、少女が目を覚ました。
「……あれ?」
眠そうに目をこする。
そして、自分が何に乗っているのか気づいたらしい。
「ひゃっ!?」
大狼の背中で飛び上がった。
おっとっと!
落ちる落ちる!
僕が慌てて支える。
「……あ」
少女は僕を見た。
一瞬、身体を強張らせる。
……。
ああ。
そうだよな。
まだ怖いよなぁ。
僕はゆっくり手を離し、少し距離を取った。
すると少女は、大狼の毛を握ったまま、小さく頭を下げた。
「……ありがとう」
……。
おお。
二回目のありがとうだ。
嬉しいね。
僕も頭を下げる。
頭ないけど。
少女は少しだけ笑った。
……。
あ。
笑った。
よかった。
*
「……あっ!」
突然、少女が声を上げた。
「あそこ! あそこ、わたしの村!」
おお!
当たりか!
少女が指差す先。
草原の向こうに、木の柵で囲まれた小さな集落が見える。
家は十軒か二十軒ほど。
畑らしきものもある。
……。
なるほど。
あれがこの世界の村か。
ちょっと見てみたいなぁ。
市場とかあるのかな。
お金って何を使うんだろう。
……。
いや。
待て。
僕、首ないじゃん。
こんなのが村へ入ったら大騒ぎになるよな。
少女も最初は気絶したくらいだし。
うん。
ここまでだな。
僕は立ち止まり、大狼にも合図した。
「……?」
少女が不思議そうにこちらを見る。
僕は村を指差した。
それから少女を指差す。
そして、両手を小さく振った。
ここからは一人で行ける?
そう伝えたつもりだった。
「……もう、行っちゃうの?」
……。
お。
通じた。
僕は頷いた。
少女は大狼の背中から滑り降りた。
「……あのね」
ん?
「お母さん、きっと心配してると思うの」
うん。
そうだろうね。
「だから、早く帰らないと」
うんうん。
「でも……」
少女は僕を見上げた。
「お礼、ちゃんと言えてない」
……。
いやいや。
もう二回も言ってくれたじゃない。
十分だよ。
僕はしゃがんで、少女と目線を合わせようとした。
……。
目、ないんだけどね。
すると少女が、腰につけていた小さな布袋を探り始めた。
ごそごそ。
「あった!」
取り出したのは、小さな赤い実だった。
「これね、森で見つけたの。甘いんだよ」
……。
おお。
果物か。
「お兄ちゃんにあげる」
…………。
お兄ちゃん。
……。
お兄ちゃん、か。
なんだか懐かしい響きだな。
僕は両手でその実を受け取った。
少女はにっこり笑う。
「食べてね!」
……。
うん。
食べるよ。
たぶん。
首のところに入れれば。
僕は実を大切に握り、少女へ手を振った。
少女も大きく手を振り返す。
「ばいばーい!」
小さな背中が、草原を駆けていく。
何度も振り返りながら。
そのたびに僕も手を振った。
やがて少女は村の柵の向こうへ消えていった。
……。
ふう。
よかった。
無事に帰せた。
大狼が隣へ座る。
「ウォフ」
うん。
お疲れさま。
さて。
僕らも帰ろうか。
……。
そう思ったときだった。
遠くから。
「――リナ!!」
女性の声が聞こえた。
少女の名前かな。
続いて、小さな声。
「おかあさーん!」
……。
ああ。
お母さん、いたんだ。
よかったね。
僕は少しだけ振り返った。
草原の向こうで、少女が女性に抱きしめられている。
女性は何度も少女の頭を撫でていた。
……。
よかった。
本当によかった。
僕は手の中の赤い実を見る。
小さくて、丸くて。
ちょっと傷がついている。
……。
これ。
食べるの、もったいないな。
そう思って、腰の革袋へしまった。
そして大狼の背をぽんぽんと叩く。
さあ。
帰ろう。
大鹿さんに怒られに。
…………。
あ。
そうだった。
まだ怒られてなかった。
……帰りたくねぇ。




