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ゾロゾロと陸に上がってくる怪魚たち。
おいおい…
はー、ふー、みー…
片手では足りないな。
おそよ10は居る。
しかも一体は倍は大きい。
こりゃいかんよ。
撤収!はい!
と手拍子してみんなを急かした。みんな一目散に森の中に入ろうと駆ける。
僕も駆ける。
つもりだった。
しかしなんと地面が水浸しでぬかるんでいたのだ。僕も滑ったし、他の子も滑って出遅れてしまったのだった。
ギェーーー
もう数体が叫ぶと凄い。断末魔とはこのことか。
陸に上がるや否やこちらめがけてかけてくる。
何でコイツらこんな早いんだよ。
多分間に合わない。
僕はどう分からないけれど、この子たちは。
転んで膝をつけている状態。圧倒的不利。
でも結構冷静だった。
まずいの一番に突っ込んできた魚野郎の顔面に四つん這いからのキック。
キックした勢いで逆の足の振り向きざまローキック。
あたーーー、
フー、わちゃーーーー。
変なスイッチが入り昔見た中国拳法を見様見真似でお見舞いするのだった。
ドゴォッ!!
一匹目の怪魚が、ものすごい勢いで吹き飛んだ。
そのまま後続の二匹を巻き込み、川岸の岩へ激突する。
ばごんっ!
……。
あれ。
思ったより飛んだな。
続けざまに放ったローキックも見事に命中。
ばきっ!
「ギョエエエエッ!」
怪魚が横倒しになり、泥の上を転がっていく。
おお!
やるじゃない、俺!
これが噂のカンフーってやつか!
……いや、絶対違うな。
そんなことを考えている間にも、次の一匹が飛びかかってきた。
よっ!
身をかがめる。
頭上を怪魚が通り過ぎる。
……。
頭ないんだけどね。
そのまま両手を地面につき、身体をひねる。
せいやっ!
蹴り上げた足が、怪魚の腹へめり込んだ。
ぼごっ!
「ギョブッ!?」
おおお!
浮いた!
魚が浮いたぞ!
……いや魚だから浮くのは当たり前か。
でも空中だぞ。
すごくない?
着地した僕は、思わず両手を広げて構えた。
右手を前へ。
左手を腰へ。
膝を曲げて。
ふっ。
我ながら決まっている。
ジャッキー・チェンもびっくりだ。
……。
もっとも、向こうは頭があるけど。
「ギシャアアア!!」
おっと。
まだまだ来る。
右から二匹。
左から一匹。
そして正面。
四匹同時か。
……。
ちょっと。
多くない?
右の一匹が口を開く。
噛みつき。
左の一匹は脚を伸ばして飛びかかる。
正面のやつは――
……。
え。
何か吐こうとしてない?
喉が膨らんでるぞ。
まずい。
僕は咄嗟に右手を突き出した。
すると。
ぶわっ!!
…………。
え?
目の前の泥水が、一斉に跳ね上がった。
まるで壁だ。
怪魚たちの姿が、水の向こうへ消える。
次の瞬間。
どどどどっ!!
何かが激しくぶつかる音。
そして。
ばしゃああああん!
泥水が四方へ散った。
…………。
……。
何が起きた?
僕の前には、四匹の怪魚が折り重なって倒れていた。
一匹は白目。
一匹は脚をぴくぴく。
残りの二匹は、泥の中でじたばたしている。
…………。
僕は右手を見る。
……。
今の。
俺?
「……グルルッ!」
大狼の声。
振り返る。
うさぎたちは、どうにか森の入口までたどり着いていた。
大狼はその前に立ち、こちらを見ている。
……。
よし。
みんな無事だな。
じゃあ、あとは僕が逃げれば――
ズンッ。
…………。
地面が揺れた。
ズンッ。
ズンッ。
……。
あ。
忘れてた。
一番でかいやつ。
水辺から、ゆっくりと姿を現す。
他の怪魚の倍以上はある巨体。
六本の脚は、一本一本が木の幹ほど太い。
口には何重もの牙。
そして、背中には岩のような突起が並んでいる。
……。
これ。
魚?
本当に魚なの?
どちらかというと、怪獣じゃない?
巨大怪魚は倒れた仲間たちを見下ろした。
そして。
僕を見た。
「グルルルルル……」
…………。
……。
あのさ。
ちょっと相談なんだけど。
もう帰ってもらうって選択肢は――
「ギョオオオオオオオオオッ!!」
ですよねー!
巨大な口が開く。
その奥。
青白い光が、ちらちらと瞬き始めた。
…………。
え。
待て。
それ。
絶対、何か出るやつじゃん。




