17
僕にめがけて向かうは 数匹。大きいやつは様子見というところか。
でも実は横と後ろから数体移動して機会を伺っているやつらもいる。
何でかそいつらも分かる。後ろにでも目ついてるのかな俺、、、。
あと数歩のところで一斉に飛びかかってきた。
僕は杖をめいいっぱいいよこ払いすることにした。
こいつなら何とかしてくれるんでしょ?
大鹿さん?
ぶぉんっ!
おおっ!
杖が伸びた。
いや、伸びたなんてもんじゃない。
横薙ぎに振るった蔓の先端が、何本にも枝分かれしていく。
まるで巨大な箒だ。
「ギャッ!?」
「グエッ!」
「ガハッ!」
ぼこっ! ばきっ! どごっ!
次々と悪鬼たちに命中する。
前から来た三匹が吹き飛び、横から飛びかかってきた二匹は、蔓に絡め取られて地面へ叩きつけられた。
おおお!
すげぇ!
これ便利!
……ん?
後ろから来た一匹は?
そう思った瞬間。
しゅるっ。
僕の脇を一本の蔓が通り抜けた。
その先には、棍棒を振り上げた悪鬼。
「ギャ!?」
蔓が足首を掴む。
ぐいっ!
べしゃっ!
見事な顔面着地。
……。
痛そう。
いや、痛いよな。
ごめんね。
でも君たちから来たんだからね。
「グ……グギギ……」
地面に転がる悪鬼たち。
幸い、どいつも動いている。
よかった。
殺してはいないみたいだ。
さすが大鹿さん。
なかなか気が利くじゃない。
僕は杖を見下ろす。
すると、蔓の先端がちょこんと持ち上がった。
……。
え。
今の、褒められ待ち?
なんだか犬みたいだな。
よしよし。
杖を軽く撫でてやる。
しゅるしゅる。
蔓が嬉しそうに僕の腕へ巻きついてきた。
可愛いやつめ。
「……オイ」
あ。
忘れてた。
大鬼。
石斧を肩に担いだまま、こちらを睨んでいる。
「テメェ……ナニモンダ」
だから。
それが分かんないんだって。
「……ソノ、チカラ」
大鬼の視線が蔓へ向く。
「モリノ、ヌシノ……?」
お?
知り合い?
「ナゼ、テメェガ、モッテル」
大鬼の顔色が変わった。
怒りというより――
警戒。
いや。
少しだけ。
怯えている?
僕は杖を持ち上げて見せる。
あー、これ?
借り物。
鹿さんに貸してもらったの。
「……シカ?」
うん。
でっかい鹿。
角も立派で。
ちょっと口うるさくて。
すぐ阿呆って言うんだけどさ。
「…………」
「…………」
あれ。
悪鬼たちまで静かになった。
大鬼がゆっくりと後ずさる。
「……マサカ」
お?
「森ノ、守護者……」
へー。
守護者。
あの鹿、そんな偉いの?
そのとき。
足元から。
「プィィ……」
小さな声。
怪我をしたカピバラもどきが、僕の脚をつついていた。
あ。
そうだった。
こっちが先だよね。
僕はしゃがみ込む。
ほら。
ちょっと見せてごらん。
背中の焦げたところへ手をかざす。
昨日のうさぎのときみたいに。
痛いの痛いの。
飛んでいけ。
ぽわっ。
淡い光が、小さな身体を包み込んだ。
……。
お。
できた。
「プィ?」
カピバラもどきが不思議そうに身体をひねる。
焦げた毛はそのままだが、赤く腫れていた皮膚が元に戻っている。
よかった。
よかった。
……。
「…………」
なんだ?
妙に静かだぞ。
顔はないけど顔を上げる。
大鬼が。
石斧を下ろしていた。
「……オマエ」
うん?
「……ソノ、チカラモ、ツカウノカ」
え?
これ?
うん。
たぶん。
まだ練習中だけど。
「…………」
大鬼はしばらく僕を見つめていた。
そして。
地面に倒れた仲間たちを見た。
怪我をした動物たちを見た。
最後に、僕の手元で揺れる蔓を見た。
「……ナンナンダ、テメェハ」
…………。
いや。
だからさ。
僕が一番知りたいんだってば。




