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首を括った先は、デュラハンでした。  作者: from_Uta
始まり

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16/27

16

問いかけてくる大きな悪鬼。

こいつだけめっちゃでかい。

あれ、でも、目線は僕の方が高いか、

まー馬?鹿?に乗ってるし、それに、僕自身もでかいのか。


ガチャガチャする鎧の高さはどのくらいかは分からないが体感的に2mとはゆうに超えてるかもしれない。


「テメェ…ワ…ダレダッてきいてんだ」

片言の外人さんばりに話してくるいかちい鬼。牙も目つきも酷い。


私ですかー

お初にお目にかかります。私、、わたし、、、あれ、名前なんだっけ??

出てこないぞー。

あたふたしているとこの隙に逃げてきたカピバラのような動物たちが僕の元へ寄ってきた。


一匹。


二匹。


三匹。


僕の乗る蔓鹿の脚の間に、ぞろぞろと潜り込んでくる。


お、おい。


そんなところに集まったら危ないぞ。


「プィ……」


一匹が震えながら僕の足へ身体を押しつけた。


よく見ると、背中の毛が一部焦げている。


別の一匹は後ろ脚を引きずっていた。


…………。


さっきの爆発。


こいつらに?


「オイ!」


あ。


名前だ。


名前……。


なんだっけ。


思い出そうとする。


…………。


何も出てこない。


家は?


…………。


仕事は。


……あれ?


何か。


あったような。


電車。


後輩。


夜風。


そこまでは浮かぶのに。


自分がなんて呼ばれていたのかだけが――妙にぼやけている。


「キイテルノカ!」


大鬼が石斧を地面へ叩きつけた。


ドンッ!


カピバラたちが一斉に僕の後ろへ隠れる。


…………。


ちょっと。


考えてるんだから待ってよ。


「ナマエダ! ナニモノダ!」


いや。


それが分かんないんだって。


僕は困って首を傾げようとして――


首がなかった。


仕方なく身体ごと傾く。


大鬼の眉間に皺が寄った。


「……フザケテルノカ?」


ふざけてない。


割と真剣に困ってる。


どうしよう。


名乗れと言われて名前が出てこない場合って、社会人としてどうするのが正解なんだ。


…………。


まあ。


ないものは仕方ない。


僕は自分を指差した。


それから両手を横に広げる。


分かりません。


「…………」


大鬼が僕を見る。


「…………」


後ろの悪鬼たちも僕を見る。


一匹が隣の奴へ顔を寄せた。


「……コイツ、バカナノカ?」


聞こえてるぞ。


「ブフッ」


別の一匹が吹き出した。


おい。


ちょっと傷つくぞ。


その瞬間。


僕の手に握られていた蔓が――


べしんっ!


「イデッ!?」


笑った悪鬼の頭を叩いた。


…………。


え。


今の俺じゃない。


蔓を見る。


先端が、しゅるしゅると僕のところへ戻ってくる。


……。


大鹿。


これ、本当に僕の意思を受け取って動いてる?


まさか。


「……テメェ」


笑っていた悪鬼の顔が真っ赤になる。


いや待て。


違う。


今の事故。


たぶん。


「コノヤロォ!」


棍棒を構えた。


大鬼が片腕を出す。


「マテ」


ぴたり。


止まった。


……統率は取れてるんだな。


大鬼の目が僕から、足元に集まった動物たちへ移る。


そして。


「ソイツラヲ、オイテイケ」


…………。


僕も足元を見る。


震えている。


怪我をしている。


一匹なんて、僕の脚甲の後ろから顔だけ出している。


「ソレハ、オレタチノエモノダ」


獲物。


なるほど。


別に。


食うなとは言えない。


狼だってうさぎを食おうとしていた。


僕自身、昨日そいつに魚の化け物を食べろと言った。


生き物が生き物を食べることまで、悪いとは思わない。


だけど。


もう一度、焦げた背中を見る。


引きずっている脚を見る。


その小さな身体が僕に縋るように寄ってくる。


…………。


困ったな。


こういうの。


昔から。


見なかったことにするの、苦手なんだよな。


僕は蔓鹿からゆっくり降りた。


ガシャン。


地面に足をつく。


改めて向かい合うと――


やっぱり大鬼と、ほとんど目線が変わらない。


僕は錫杖のような蔓を肩へ担ぐ。


そして。


空いている方の手で、


大鬼たちに向かって。


ごめんね。


というつもりで、手を合わせた。


それから。


動物たちと悪鬼たちの間へ立った。


「…………」


大鬼の目が細くなる。


「……ソウカ」


石斧が、ゆっくりと持ち上がった。


「ジャア――」


後ろの悪鬼たちも武器を構える。


「テメェモ、エモノダ」

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