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いったいどういうことだ?
切れない蔓と切れた木をよく見る。
この蔓、、、。ただの蔓じゃない?
してこの木、周りにはより大きな木もあるけれどこの木も随分立派だ。
切れ味はツルツル。綺麗に切られている。チェーンソーもびっくりだね。
でも、、、。
マジでなんで??
「剣そのものを見てみよ」
大鹿に言われ、手元へ視線を落とす。
剣。
昨日、魚の化け物を斬った剣だ。
刃こぼれ一つない。
むしろ昨日より綺麗になっているような……。
魚の血を吸ったせいか?
「剣ではない」
え?
「お主の手を見よ」
手?
言われるがまま、小手を見る。
……。
何もない。
いや。
よく見ると。
小手から剣へ。
何か――黒い靄のようなものが薄くまとわりついている。
首元にあるものと似てる?
「そのまま、剣を地面へ置け」
言われるがまま剣を置く。
「次は手刀で、蔓を切るつもりで振ってみよ」
いやいや。
剣でも切れなかったんですけど。
僕の手、そんなに強いの?
「よいからやれ。ただし今度は――」
大鹿が一瞬、倒れた木を見る。
「何もない方向へ向けてな」
……。
はい。
ちょっとムカつく。
蔓の前に立つ。
右手を開く。
手刀。
これで?
まあいいか。
軽く。
本当に軽く。
蔓へ向かって――
すっ。
手を振った。
…………。
蔓は切れない。
ほら。
やっぱり。
そう思った直後。
はるか後ろ。
森の奥から。
――ズズズズズ……。
…………。
え。
どしゃあああああん!
鳥たちがまた一斉に飛び立った。
妖精たちも、
「またー!?」
「木ぃー!」
「今度はあっちー!」
と大騒ぎ。
…………。
僕。
何も持ってないよ?
恐る恐る手を見る。
「分かったか」
いや。
全然。
「お主は今、蔓を斬ろうとした」
うん。
「だが斬ったのは、その先にあったものだ」
…………。
なんで?
「お主は力を身体の外へ放っておる。しかも――」
大鹿の目が細くなる。
「肝心の蔓を通り抜けてな」
えぇ……。
どういうこと?
「その蔓は我が魔力で編んだものだ。見た目こそただの蔓だが、そこらの鉄より遥かに強い」
あ。
やっぱり普通の蔓じゃなかった。
ずるくない?
「試しと言ったであろう」
聞いてない。
「言っておらんからな」
…………。
この鹿。
ちょっと性格悪いな。
「聞こえておるぞ」
あ。
大鹿は僕を無視して続ける。
「問題は蔓を斬れなかったことではない。お主は自分の力が、どこまで届いているのかすら分かっておらん」
なるほど。
昨日、魚を斬ったときも。
剣そのものが凄かったんじゃなくて――
僕?
「剣も尋常な品ではない。だが、昨日からあれを見ておれば分かる」
大鹿が僕の身体を見上げる。
「お主は力を使うたび、あまりにも多くを垂れ流しておる」
垂れ流し……。
なんか嫌な言い方。
「だから阿呆だと言っておる」
また言った。
「力がない者より、力がありながら扱えぬ者の方が危険なのだ」
……。
それは。
倒れた二本の木を見る。
確かに。
もしあそこに誰かいたら。
妖精とか。
うさぎとか。
狼とか。
…………。
急に笑えなくなった。
大鹿はそんな僕をしばらく見つめると――
前脚で、例の蔓を踏んだ。
「まずはこれを斬ってみよ」
え。
「剣でも、手でもよい」
いやいやいや。
さっき鉄より硬いって。
「だから良いのだ」
大鹿の角の間に、小さな光が灯る。
「この一本だけを斬れ」
周りの妖精たちが、いつの間にか少し離れた木の陰からこちらを覗いている。
うさぎ二匹も並んで座っている。
狼まで起きていた。
……。
なんか。
訓練みたいになってきたぞ。
大鹿は静かに僕を見る。
「力を強くする必要などない」
そして一言。
「小さくせよ。」




