12
「そろそろいいか?」
ふと声が聞こえたような気がした。
大鹿の方から。
え、喋れたの?
僕は大鹿を、みながら首を傾げた。
ま、私首ないんですけどね。
「話せていなかったのはお主のほうだぞ」
え、いやいや、またまたー。
だって妖精とも話してたじゃーん。
ふぅー。
鹿は深く鼻でため息をついた。
「お主はとんだ阿呆だのう。
とんでもない種族と力をもっておいて何も扱えておらん。昨日は念話ですら使えてなかったのだぞ」
念話?あ、これ。
力?種族?
まー僕人ではないよね、そうだよね。分かってたけど、考えないようにしてたけど。
力って?
「力とは様々なことをする力だ。
物を持ち上げる、魔法や武器を使う、聴く力、話す力、探す力、ありとあらゆる力だ。
それを総じて力と呼んでおる。」
へーまー、まんまだねー。
で、僕にはどんな力があると?
ふー
また深いため息
はぁーに近かったかもしれない。
「それは本来自分が一番知っていること。我にはその身体が纏う力の総数のようなものしか分からぬ。
筋力や魔力が高いのくらいは分かるがな」
へー筋力ねーまー心当たりはある。筋肉ないけど筋力ねー。
魔力...。え、僕魔力あるの?
ということは、、、ま、魔法とか、、、って
「使えてるではないか」
え、?
・・・
「これは念話だ。
立派な魔法なのだ。」
えーーー
これ魔法なの。もっとこうなんていうかさー。
「念話は初歩的な魔法だが立派な魔法だ。
特にお主のように口がない魔物にとっては唯一の手段でな。
お主はとんだ阿呆だが悪くはない。こやつらといる間に会得したのやも知れぬ。」
ほうほう。
センスはピカピカのピカイチだと、、、。
阿呆とは何だ。こちとら精一杯やってるわ。
「誰もそこまでは言っておらん」
……。
あれ。
「…………」
今。
普通に返されたな。
ということは。
センスはピカピカのピカイチだと――まで、全部聞こえてた?
「聞こえておる」
…………。
「最初からな」
…………。
やば。
念話って。
もしかして心の中、筒抜け?
「安心せい。考えていることが全て聞こえるわけではない。お主がこちらへ向けたものだけだ」
ほっ。
よかった。
……いや待て。
じゃあ僕、無意識にずっと喋りかけてたの?
「そういうことだ」
なるほど。
昨日うさぎたちに、
痛いよね。辛いよね。
って思ったのも。
狼に、
お腹すいてるのか?
って思ったのも。
……。
あれ?
もしかして、あいつらにも伝わってた?
足元を見る。
二匹のうさぎ。
「きゅ?」
「きゅぅ?」
……分かんない。
「その者らが念話を扱えるかは別の話だ。言葉を理解しておるとも限らん」
あー。
そういうものなのね。
でも。
昨日よりは一つ進歩した。
喋れる。
口はないけど。
なんだか嬉しいな。
「喜ぶのはまだ早い」
えー。
「お主の場合、問題は他にある」
大鹿がゆっくりと立ち上がった。
でかい。
改めて近くで見ると本当にでかい。
角の先まで含めたら、どれくらいあるんだろう。
大鹿は僕の周りをゆっくり歩き始めた。
一周。
二周。
品定めでもするように、鎧の隙間や剣、小手を見ていく。
そして。
僕の腰の剣のところで止まった。
「それだ」
剣?
「抜いてみよ」
え。
朝から?
まあいいけど。
柄を握る。
昨日よりは慣れた。
長いことも分かってる。
今度は腰を少し落として――
すらり。
お。
綺麗に抜けた。
なんだかちょっと嬉しい。
「では、そのままにしておれ」
?
大鹿が角をわずかに傾ける。
すると一本の蔓が地面から伸びてきた。
にょき。
にょきにょき。
おー。
魔法っぽい。
蔓は僕の前まで来ると、先端に小さな赤い実をつけた。
昨日食べたやつだ。
「斬れ」
これを?
「うむ」
……。
いやいや。
昨日あんな化け物真っ二つにした剣だぞ。
こんな細い蔓なら――
軽く。
本当に軽く。
剣先を当てる程度に。
ちょん。
――ズンッ。
…………。
え?
少し離れたところで、
めきめきめき……。
一本の木が傾いた。
どさああああああん!
鳥たちが一斉に飛び立つ。
妖精たちが、
「きゃー!」
「木ぃー!」
と逃げ回る。
僕は固まる。
目の前の蔓を見る。
……切れてない。
その向こう。
僕が剣を振った方向に生えていた大木が一本、斜めに切断されて倒れている。
…………。
大鹿を見る。
大鹿も僕を見る。
「…………」
…………。
「阿呆」
いや今の俺悪くなくない!?




