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気づくと僕は電車に揺られていた。
満員電車が嫌だからと少しサービス残業。
可愛い後輩たちもできた。少し今どきだけどね。
少し前から初任給が上がって10年近く先発の僕より給料がいいらしい。
まーそれで辞めないでいてくれるならそれでもいいさ。自分と後輩たちの今日の仕事の確認と明日のリマインドを終えて。
僕は会社を後にした。
車窓には、黒いガラスに反射した人影が流れている。
僕の顔も、その中にぼんやりと浮かんでいた。
疲れてるなー。
目の下には薄く隈。
髪も少し乱れている。
朝はもうちょっとマシだった気がする。
電車が駅に停まる。
扉が開くと、何人かが降りて、代わりに同じくらいの人が乗ってきた。
この時間でも結構いるんだな。
スマホを見る。
後輩からメッセージが来ていた。
『あ、やべ!忘れてた。先輩ありがとうございます!完全に忘れてた笑』
今どきだねー。
このタメ語と敬語の混合がこの子達の愛嬌に繋がるのかもな。
返事も仕事もちゃんとするしいいか。
『おー。明日よろしくね。今日はゆっくり休みなー』
送信。
すぐに既読がついた。
『先輩もですよ!』
……。
僕も、か。
画面を消す。
黒くなったスマホに、また自分の顔が映る。
そういえば。
今日は何時に帰れるんだろう。
帰ったらご飯を作って。
風呂に入って。
洗濯物……は明日でもいいか。
それから寝て。
朝になったら起きて。
また電車に乗る。
仕事をして。
後輩の面倒を見て。
自分の仕事をして。
誰かが忘れていたら思い出して。
誰かが困っていたら手伝って。
帰る。
それで。
また明日。
…………。
別に。
嫌いじゃない。
仕事も。
後輩たちも。
みんな良い奴だ。
だから、たぶん。
疲れているだけなんだろう。
『まもなく――』
車内アナウンスが聞こえる。
いつもの駅だ。
立ち上がる。
扉が開いた。
人の流れに混ざってホームへ降りる。
階段を上がって、改札を抜ける。
夜風が頬に触れた。
ああ。
気持ちいい。
少しだけ立ち止まる。
風は好きだ。
昔から。
何も言わないし。
何も頼んでこない。
ただ吹いて。
熱くなった身体を冷まして。
それで、どこかへ行ってしまう。
……さて。
帰るか。
僕はいつもの道を歩き出した。




