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ブルーベルの部屋に行くと彼女はソファに座って手紙を呼んでいた。その幸せあふれる顔に大好きな婚約者様からの物だとわかり、思わず笑みがこぼれる。
「婚約者様からのお手紙?」
「ええ、さっき届いたの。会える日が待ち遠しいですって! 私もとっても楽しみ、彼が来たら王立公園で得意なボートに乗せてもらうの!」
「それは良かったわね。ボートに乗るなら、揺れに慣れるように練習しておかないとね」
「もちろん! お父様に頼んで連れて行ってもらうわ。ラナも一緒に来てね」
はしゃぐブルーベルにランタナも喜んでうなずいた。
14歳になったブルーベルは隣国の試薬のおかげで無理をしなければ魔力が安定して過ごせるようになり、前と同じく仲の良い婚約者と短時間ならば出かけられるぐらいに元気になった。
ペンタスからは前よりも1年早く薬が完成したと連絡がきた。じきに長年実験に付き合っていたブルーベルの元に届けられる約束だ。
今回のブルーベルは前よりも体調が良い時間が多かったおかげで体力がついた。前のように完成した薬が効けば、がんばってきた彼女がこれからはずっと普通の少女のように遠出を楽しみ、幸せいっぱいに笑えるようになるになるだろう。願いを込めてそう思うと心が温かくなる。
と、突然ブルーベルは背筋を正してランタナをまっすぐに見つめる。
「ランタナ、いつも私を支えてくれてありがとう。私がこうして外の世界に出かけられるぐらいに元気になれたのも、彼と好きなだけ会えるのもあなたのおかげよ。あなたと出会えて本当に良かった、ありがとう」
「私も同じよ。ベル様がいつも私の話を喜んで聞いてくれるおかげで、私は隣国がもっと好きになって、隣国の薬師になる夢を叶えるためにがんばれているのよ」
幼い頃から隣国に憧れる変わり者のランタナを一番に応援してくれたのは前も今もブルーベルだ。感謝の気持ちをこめて伝えるとブルーベルは少しだけ寂しそうな顔をした。
「ねえ、ラナは私の身体が良くなってもお兄様と婚約を続けるの?」
「そうね。正直に言うと会うたびににらまれてねちねち小言を言われるのにもうんざりしてきたし、できるならば婚約解消したいわね」
冗談めかして答えたが、ブルーベルは悲しげに目を伏せた。
「そうよね。ごめんなさい、ラナ。ラナもお兄様も私のために嫌々婚約して、お互いに我慢しているのよね。私は夢が叶って元気になって婚約者様とうまくいっているからなんて、喜んでしまってごめんなさい」
しゅんとしおれるブルーベルに胸が痛む。
ランタナとダリアンが最初から仲が悪いのは単に相性が悪いからだが、優しいブルーベルは自分のせいだと心を痛めている。それに、今のダリアンはブルーベルにも何かと冷たく当たっていて。ブルーベルはすっかり兄に気をつかうようになってしまった。
「そんなことないわ。確かにダリアン様との婚約は嫌々結んだものだけれど。今まで婚約を続けているのは私がベル様の助けになりたいと思ったから。それに、今の私と彼の関係はこれまでやってきたことの結果だから、これで良いの。
周りに何て思われても、私はやりたいことをやって幸せよ。
だから、ベル様もあなたがやりたいことに何でも挑戦して、望む幸せを掴んで。そして、元気になってたくさん外の世界を見て。それが私の幸せよ」
誰よりもがんばっている少女には周りのことなど気にせずに、たっぷりと自由を楽しんで幸せをたくさん見つけてほしい。そう想いをこめて伝えるとブルーベルは目を潤ませた。
「うん、ありがとうラナ。
……あのね、本当のことを言うとやりたいことをやって、でもはしゃぎ過ぎて具合を悪くすると皆が心配して泣いたり、言うことを聞かないからだって叱られたりするのがすごく嫌だったの。
でも、ラナだけは『またいつか、もっと元気になったらやり直しましょうね』って言ってくれたから、とてもうれしかったの。
私もがんばってやってみる。初めにラナが隣国に行く時には全力で応援するね。私の大好きで頼もしいラナには夢を叶えてほしいもの」
――ああ、ベル様は本当に元気になられたのね。
相変わらず身体はほっそりしているけれど、しっかりした声で自分を応援してくれるブルーベルにランタナは目頭が熱くなった。涙をこらえながら頼もしく成長した友人にお礼を言うと、ブルーベルはいたずらっぽく笑う。
「それに、ラナは隣国に好きな人がいるんでしょ? 私のせいでいつまでもプロポーズを待たせてしまったら悪いもの」
「す、好きな人だなんて……」
「ふふっ、ラナは彼の話をする時はいつも幸せそうよ。あのね、離れて暮らす恋人と再会したら素直に愛していると伝えると良いんですって。ラナもがんばって」
「うっ。が、がんばります……」
いつの間にか恋愛経験値を積んだブルーベルにからかわれてランタナはたじたじになった。




