表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/46

起-5 王国の現実

 サンサルバシオン王国王宮の一角、騎士たちの訓練所では、着慣れない甲冑に身を包んだスキンヘッドの男が腰を下ろして汗を拭っていた。

 

「インギョウ殿は精が出ますな」

 

 僧侶であった男、村上允恭に声をかけたのは、この国の騎士団で騎士団長を務める男だ。

 戦場からの叩き上げで爵位を得、武器術では右に出るものはいないとも言われ、国防の要とすら評されている。その騎士団長から見ても允恭は騎士として有能であった。

 

「すでに基礎的な剣術に盾術はマスターされたようですな、さすがは聖騎士殿」

「いえ、皆さんの指導の賜物でしょう」

 

 允恭は謙虚そうな顔で笑みを浮かべ、再度頭の汗を拭う。

 

「……勇者殿も、聖騎士殿のように勤勉であられれば良かったのですが」

「まぁ、彼はまだ若いです。突然手に入れた力に戸惑っているのかも知れません」

 

 勇者、須藤誠はここ数日、騎士団長の訓練の誘いを断り続けていた。

 部屋の中で城づとめをしているメイドたちと戯れるばかりで、一切表に出てこない。

 また、大魔道士の中西藍子は訓練ではなく、魔法の座学に取り組んでいる。賢者小川菫はあまりにも無口なため、講師を務める魔道士が早々に音を上げてしまい、魔導書を1人読みふけっている。

 

「ときに聖騎士殿は、件の拳王殿と法術士殿のことはご存知でしたか?」

「いえ、我々は同じ国からこちらに転移してはいますが、お互いに初対面ですね。しかしあの法術士の……笹川さんでしたか。法術士だった事を理由に追放というのはあまりにも」

「聖騎士殿、それ以上はおっしゃらない方が身のためです。陛下は勇者殿達を召喚するのに、生贄として市民3000人を神に捧げられました。それで召喚されたのが一般スキルの法術士というのは、あまりにも損失といいますか、犠牲に対して釣り合わないものなのです」

「なるほど……ですがそれは、笹川さんの、あの法術士の女性の責任では無いでしょう?」

「そのとおりです。そうなのですが……陛下も恐らく分っておいでではあると思います。ただ、残念ながらこの世界のことを何もご存じない法術士の女性が1人では、恐らく行きていくのは難しいでしょう。拳王として召喚された男性がおられれば、身を守ることは出来ると思いますが」

「なるほど……ところで、国王陛下と王妃様はご多忙ですか? 召喚の日以来1度もお見かけしませんが」

「陛下は……はい、ご多忙でおられます」

 

 騎士団長の返事には、かなり間があった。思うところがあっての間だったが、允恭にもその詳細はまだわからない。

 

「ところで聖騎士殿、世話係を替えられたそうですが、担当の者に何か不行き届きでも?」

「いえ、とんでもない。大変有能な方でした。私のようなものの世話をさせるのも申し訳ないと思いまして、まだ経験の浅い方を配置して頂いたんです。確かこの春から城づとめを始めたという、まだだいぶ若い方でした。あまり気を使わずに接してくれた方が私も気楽ですので」

「なるほど、いや聖騎士殿は人格も素晴らしい……返す返すも、勇者殿も聖騎士殿のような方であられれば……」

 

 はは、と軽く困ったような笑いを浮かべて允恭は甲冑の籠手をはずす。今日の訓練は終了ということだろう。

 

「彼はまだ若い。若さには無謀さやある程度の傲慢さも含まれています。私も若い頃はそうでした。ある程度歳を取らねばわからないこともありますよ」

 

 そういって允恭はゆっくり立ち上がり、王宮内で割り当てられた自室へと戻っていった。

 部屋の中では、まだあどけない顔の少女が怯えたような表情で允恭を出迎える。

 

「お、おかえりなさいませ、聖騎士様」

「戻りました。何か変わったことはありませんでしたか?」

「は、はい、あの……大魔道士様と神官長のネメス様がお見えになりました。今日の夕食会へのお誘いとのことで」

「そうですか。わかりました。それでリズ」

 

 リズ、と呼ばれた少女はびくっと身体を硬直させる。

 まだ10歳から12歳程度であろうか、おそらくはまだ初潮も迎えていないであろう少女の身体は、女性のそれではなく子どもの身体つきだ。

 そんな幼い少女の細い脚に、允恭の大きな手が添えられた。

 

「分っていますね? あなたはここにしか居場所がないんです。私の世話係があなたの役目。私を満足させるのはリズ、あなたの義務なんです」

「は、は、はい……聖騎士様……」

「言い付けを守れたか、さぁ見せて下さい?」

 

 そう優しい声で語りかけてから、允恭は慣れた手つきでリズのスカートを大きく持ち上げる。

 下着を着けていない少女の下半身があらわになる。リズは耳まで赤くして、顔を覆ってぶるぶると震えていた。

 

「昨日教えた通りですよリズ? 男性を満足させるために、どのようにすればいいか。わかりますね」

「は、はい……言われたとおりにします、だから叩かないで……」

「大丈夫ですよ? ちゃんと上手に出来たらなでてあげます。歯を立てたりしたら……お仕置きしなければいけません」

 

 少女はぐす、と鼻をすすってから、ベッドに腰掛ける允恭の脚もとにひざまずく。

 おずおずと允恭の服をほどいてから、大柄な允恭の股間に顔を近づける。

 允恭がまだあどけない少女リズに教え込んでしまった、大人の男に対する『ご奉仕』だった。

 

 たっぷり2時間ほど少女を弄んでから、允恭は作務衣のような服で城内をゆっくりと歩き回る。

 同時に召喚された須藤誠、中西藍子、小川菫とは、召喚された日以降ほとんど会っていない。顔を合わせるのは大魔道士中西藍子だけで、須藤誠は日がな1日メイドと戯れているばかり。小川菫は書庫にこもりきりになってしまっているという。

 

「神官長……ですか。まぁご同業といえばご同業ですね」

 

 誰にともなくそうつぶやき、周囲に視線を向ける。

 騎士に話を聞いたところ、王城に務める騎士はかなりの高給取りであるようだ。

 

 貴族の家に生まれた者がつくことが多い職業だそうで、貴族らしい金額を支給しなければ不満が噴出する。

 騎士の給与は、一般的な市民の十数倍に及ぶものであり、そのせいか騎士になりたいと志望するものは一般市民にも多いという。

 表面上は一般市民にも騎士となる道は開かれているが、魔法の才能に恵まれるなど、特別な能力を持ち合わせていないと、一般市民が騎士になることはほぼ不可能だ。一方で、貴族の家に生まれた者であれば、無条件で騎士として取り立てられることが出来る。

 基本的に何事も貴族が優先されるお国柄なせいか、一般市民出身の騎士は十人に一人もいない。現役騎士のほぼ全員が、貴族の子弟だ。

 たちの悪いことに、甘やかされて育った騎士の家の子弟は、いざ戦闘となると役に立たない者も少なくない。訓練をサボる者がいたとしても、訓練教官よりも爵位が上の家のものには注意が出来ないなどのモラルハザードが生じている。

 

「どこの国も、似たようなものですねぇ」

 

 允恭はそう呟いて通路をゆっくりと歩く。

 途中、何人かの貴族の子女とすれ違う。まだ子供としか言えない年頃の少女に視線を向け、にこやかに糸目を細めると、少女たちは歓声を上げて顔を赤らめる。

 召喚された異世界の勇者で、聖騎士のスキルを授かった男、ともなると、貴族の地位はまず間違いない。これから先の武勲によっては、伯爵などの高位貴族の位を持つことになってもおかしくない。

 貴族の未婚女性の間では、特に男性の召喚勇者である誠と允恭は羨望の的だった。

 加えて、允恭は物腰も穏やかで訓練にも熱心、誰に対しても優しく語りかけることから、女性貴族やメイドからの人気は非常に高かった。

 

「これも御仏のお導きでしょう。据え膳は頂かなければ、申し訳がないですねぇ」

 

 肉食の両生類のような目で、允恭が小柄な少女に笑みを向ける。

 少女はまだ、先日社交界で男爵家令嬢としてお披露目があったばかりだ。

 両親に溺愛され、ナイフとフォークよりも重いものなど持ったことすら無い。

 おっとりとした性格で、愛らしい笑みが特徴的な美少女。

 

 允恭の大好物であった。

 

 允恭の実家の寺は、学童保育の施設を経営していた。

 その施設に通っていた子供は、どちらかというと恵まれない家庭環境にある子どもたちであった。

 両親の内どちらかが、またはその両方が不在であったり、家庭内で虐待されていたりといった環境の子どもたちで、その多くが優しい笑みを浮かべる允恭に懐いていた。

 

 ある時、学童保育に通っていた中学生の女子が妊娠した。

 父親による性的虐待であるとされ、父親は逮捕される事となる。母親は離婚後音信不通の状態であったため、女子は児童養護施設へと移り、そこで子供を出産している。

 またある時、今度は小学生の女児が妊娠する騒ぎがあった。

 同じ施設に通っている中学生の男子のレイプの結果である、ということで大規模な問題となり、それ以降学童保育施設は一時閉鎖されることとなる。

 が、地域住人の『あのお寺のご住職と若和尚に救われた子供は多い。あの人達は生き仏だ』という声に押され、学童保育は程なくして再開された。

 

「アレくらいの年代の女の子は、愛おしくて、可愛らしくて、純粋で、実にチョロい」

 

 にこ、と優しい笑みを向けられた男爵令嬢は、頬を赤らめて廊下の奥へと走っていった。

 允恭は小児性愛者であった。

 中学生の女子も、小学生の女児の妊娠も、父親は允恭である。

 用意周到に、注意深く、焦らず、着実に自分に好意を向けさせ、そして少女が自ら裸になって、自分に向けて股を開くように仕向ける。その術に関しては、允恭は天才であった。

 

「あのご令嬢は後日頂くとして……あの面倒くさい女との食事は気が進みませんね」

 

 忌々しげに呟いて、豪奢な装飾品で飾られた廊下を歩く。

 さて、夕食はちゃんと頂くとして、食後にリズをどうやって可愛がってやろうか。そう考えながら允恭はまるで聖人のようなほほえみを浮かべていた。

 

 危険な小児性愛者を夕食に招いた大魔道士、中西藍子は焦っていた。

 彼女は非常に整った顔立ちで、これまで大抵のことは、彼女が何も言わなくても周囲の男がやってくれるのが当たり前であった。

 王城においても同じようなもの、と考えていたが、あいにく進んで彼女の下僕となる男は皆無であった。

 城に勤める騎士たちは貴族の子弟であり、やたらと気位が高いものばかり。

 神官はかなりストイックな者がいるが、それだけに藍子になびく男はいない。

 今のところ、藍子に色目を使ってくるのは、やたらニチャニチャと粘液質な話し方をする国王、それに老人としか言いようのない年代の大臣が数名である。

 

「ったく、転生モノとかってもっとこう……あるでしょ? それなのに何で?」

 

 メイドにイライラをぶつけても、さらに惨めになるばかりだった。

 何しろメイド達も貴族の子女がおり、城の中にいる女性では、藍子は別段目立った美人というわけでもない。

 

「面白くない、面白くない! 面白くない!!」

「だ、大魔道士様、どうかお鎮まりを」

「うるさい! それよりまだなの!? あの坊主は!」

「ぼ、ぼうず、とおっしゃいますと……聖騎士様でいらっしゃいますか?」

「そうよ! さっさと呼んで来なさいよこの役立たず!」

「も、申し訳ございません!」

 

 中年のメイドが大慌てで大魔道士用の部屋から走り出る。

 部屋の隅では、神官長ネメスが忌々しげにため息をついた。

 

「大魔道士殿、そのようなお言葉は使うべきではありません」

「何よ、なんか文句あるの!? そっちの都合で勝手にこんなところに連れてきておいて、ほとんど監禁じゃないのよ! ナメてんの? 私は! こんなむさ苦しいところに閉じ込められたいワケじゃないの!」

「お察しはします。が、我が国の状況についても鑑みて頂きたい。魔族との戦争は長く続き、戦費は国家の財政を圧迫しているのです。起死回生の一手こそが、あなた達勇者なのです。1日も早く魔族との戦争へ参加して頂くだけの実力を身に着けて頂かなければ」

「じゃあさっさと何とかしなさいよ! 私は贅沢言ってるワケじゃないでしょ!? 毎日のシャワーに着替え、それからちゃんとした清潔な服! それに側仕え? とかいう女達は私よりカワイく無いのに入れ替えてって、そう言ってるだけじゃない!」

 

 十分すぎるほどのワガママだが、入浴と着替に関しては、藍子にとってほぼ生命線とも言えるほど重要なものだ。

 

「毎日入れる私専用の浴場、それが出来ない限り私は何もしない! 誰とも話さないわよ!」

「中西さん、そう大きな声を出すものではありませんよ」

 

 藍子と神官長ネメスが同時にドアの方へ視線を向けると、そこには地味な藍色の装束に身を包んだ聖騎士、村上允恭が立っていた。

 

「とは言え、私達の事情も汲んで頂きたいところではあります。どうでしょう神官長、彼女の要望はそれほど膨大なコストがかかるわけでもないでしょう。王様がたが身につけている宝石に比べれば」

「む……うむ、いやしかし……」

「協力しない、と言っているわけではないんです。お互いにとってベストな落とし所を探るのも、立場ある方の責任と思いますが」

「……わかった。では、王宮内に専用の浴場を設けるよう、宰相閣下に具申するとしよう……」

「ありがとうございます。それで、夕食へのご招待と伺いましたが……」

 

 允恭がちらりと藍子に視線を向ける。

 くびれたウェストにFカップの豊かな胸、引き締まった脚に長い髪。

 日本においてはモデルやグラドルと言われても疑うものがいないであろう抜群のスタイルと美貌。

 だがそのいずれも、允恭にとってはおしなべて無価値であるどころか、吐き気を催すほど嫌悪するものだった。

 凹凸の乏しい、まだ未発達な体つきに幼い顔立ち。成長しきっていない腰つきに平らな胸。それこそが允恭の股間を刺激する女性の条件だ。

 藍子の容貌は、そのいずれもが允恭を苛つかせるものでしかない。それでも言葉遣いもにこやかな表情も変えないあたり、彼の自制心は驚異的なものと言える。

 

「うむ、聖騎士殿と大魔道士殿、それから出来れば勇者殿ともお話したかったのだが……」

 

 ちなみに、誠は今まさにこのときも見目麗しいメイドと、ベッドの中で格闘している最中だ。

 神官長ネメスは心の内だけで大きくため息を吐いた。

 まともな者など聖騎士だけではないか。

 色狂いの勇者に、気位だけが高く魔法を使えもしない大魔道士など、役立たずとしか表現のしようがない。

 賢者に至っては誰とも言葉を交わすこともなく、話しかけても反応すら無い。

 

 ネメスは、国王からこの『失態』の責任を問われつつある。

 法術士の娘だけでなく、攻撃の要となるであろう拳王も行方不明となってしまった。

 すべて事の発端は国王のヒステリーなのだが、ネメスはそれを指摘できる立場にはない。

 

「致し方ないことか……」

 

 今度は、大きく深呼吸をするようなため息。

 顔を上げた先では、いかにも不機嫌です、というような表情を隠そうともしない大魔道士が、メイドの若い娘に当たり散らしている。

 失敗したのかも知れない、という言葉をなんとか飲み込む事が出来たのは、ネメスの鍛え上げられた自制心と信仰心の賜物だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ