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火の竜に奪われた宝石と囚われの二人の姫3

 



 世界魔対戦。

 この世界は各地に十ずついた聖女たちによって平和が保たれていた。

 ひとりの聖女が力を保てる時間は聖印が現れてから最長でも二十年。聖女の数が増えても、魔法だけで保っていた世界の平和は長く続くことはなく、世界魔対戦は聖女が終わらせたとも伝えられている。



「一度は終わった世界に再び現れた黄金の聖印(せいいん)





 王族が住む中央都市の人間は、政権が崩れることを嫌う。魔法使いの唯一の光であった聖女の力が後退することも、それによって竜が混乱を起こすことも。信頼が蓄積し、波風が立たないような、平和で穏やかな国を好む。







 ☆





 目の前には、黄金の魔法陣が輝く。



 火竜はもともとグズ鉱石を好んで食べる。純度の高い宝石には見向きもしない。火竜が狙っていたのは人間ではなく、聖女が聖封印をかけたグズ鉱石。火竜は、鉱石に反応して、追いかけて、集まってきた。



「ーーしかし、どうして、元の聖女さまが映人石を使って、ラビィさんの姿になっていたのでしょうか?」


「ーーそれはまだよくわからない」



 シリウスは元来た道を戻る。坑道内に火竜が集まってしまったので、そのままグズ鉱石を手に持ちながら、炭鉱の外へと走っていく。炭鉱の外、広い場所に出ると、砕いたグズ鉱石をばら撒き、火竜はそれをおいしそうに食べた。



「悪いな、この世界の秩序で古の遺跡に手を出すことは禁じられているんだ」



「魔法石、魔法具、炭鉱……それは火竜もですか?」



「ああ、世界魔環境維法で決まっている」



「我々も銃弾一つ気軽に打てないということですね」



 シリウスは振り返り仲間に呼びかける。



「ーー早くラビィの元へと返ろう。今やラビィの聖女の力こそが王権の秩序を揺るがす存在なんだ」


「聖女の力が世界の均衡を揺るがす?」



「ああーー。いつまた魔対戦が始まってもおかしくない」


 すぐに全員で火竜山から降りた。







 街に帰ると鉱山監督官と執政官が深い話をしており、その中にアルデバランも混ざって話をしていた。


「今回火竜が山から降りてきたことによりによって、鉱山の生産量が止まってしまった。一部崩壊した場所もある。修繕は早期を予定しているが」


 街の西の騎士団に魔法石のついた拳銃を渡す。


「そうか、新しい武器か。ついにうちも拳銃を扱う世界になったのだな」


「噂通り聖女さまの魔法の力はもう消失してしまったのだろうか」


 西の街の住民はラビィのことを良く知らず、ここでも彼女のことをあまりよく思っていない人もいる。


「今までの聖女の力は長く持っても20年。前の聖女たちが()()()()()しまって力を消滅させて、今の聖女が現れた。ならば、また聖印を体に刻む新しい聖女を探してもーー……」


 馬車から荷物を下ろすのを手伝っていたシリウスの顔が強張る。


「そこは王国騎士団が新たな新しい聖女候補を探している。不安なのはみんな一緒だからな」


 アルデバランが口を開く。西の住民は「そうか」「それならば」と納得するものもいたのだが、その中にひとり。



「ーーーー今の聖女様を下すのか?」



 ひとりそうつぶやいたものがいた。



「ーーでも、聖女の力がなくなったって本物の聖女を外してしまったら、いざというときにこの世界を守る人はいなくなる」


「そうだな」


「ーー聖なる力もないのに?」



「……その話は、俺の前でするな」


「シ、シリウスさま……っ! ああ……前に出てはいけないと言ったのに……ラビィさまのことになるとこの人は……いいから、早く、早く帰りましょう!!!!」


 シリウスの声色は低かった。

 空気が一気に張り詰める。




「ーーーー彼女だって一人の人間だ」





 ☆







 騎士団の前に馬車が止まる。


 エントランスホールで待っていたラビィは物音が聞こえたので、シリウスたちが帰ってきたと思い、扉の前に立った。



 ーーおかえりさない、シリウスさん。


 彼女は重たい扉をゆっくりと開けた。

 隙間から冷たい風と雪が部屋の中に入ってくる。外は暗く猛吹雪だった。


 ーー寒かったでしょう? あたたかな御食事を用意してお待ちしておりました。


 彼女は騎士たちをあたたかな部屋の中に入れる。



「……やはり、そうか。ここに聖女を隠していたんだな」


 その低い声にラビィやその場にいた侍女は顔色を変える。


 ーーシリウスさんの声じゃない!? じゃあ、この黒い服の人たちはいったいだれ!?


 後ろに下がっていた騎士がとっさにラビィの前に立つ。


「ラビィさま!!!!」



 黒い服の男たちはラビィに指をさす。そしてなにやら呪文を唱えると、ラビィの両手に光の輪が現れた。光の輪はラビィの手を拘束する。


「この国の政権を揺るがす存在として、……聖女。いや、この女をこの国から永久追放する」


 ーー永久追放!?!?!?


 黒い服の男たち、その背中には星の刺繍が縫われていた。


 猛吹雪の中、重厚な門が――すべてを断ち切るかのように固く閉められたーー……。



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