火の竜に奪われた宝石と囚われの二人の姫2
シリウスは拳銃の引き金をひいた。氷結弾が火竜の固い鱗に当たり、高圧封入された特殊水が外の外気に触れると瞬時に瞬間氷結させる。外の気温が低ければ低いほど、氷結速度は早まり、特殊水の氷結効果は高まる。
シリウスの背後にいる騎士団は拳銃を握り、谷底から飛んでくる火竜に狙いを込めて弾丸を打った。
「火竜の攻撃を止める、一時しのぎだとしても十分な効果がありそうだな」
火竜が石橋の上に到着する前に、騎士団は雪の上に弾丸を打ち当てて、巨大な氷柱を立てた。
氷柱は防壁となりその間を潜り抜ける。
シリウスが率いる騎士団はそのまま石橋を渡り、山をどんどんと下って行く。
ごっつごつとした岩が続くようになり、その先に真っ黒な大きな岩が現れた。
遠くからでもその真っ黒な強大な岩はそこらへんの石とは輝きが違って見える。
ずっしりと重く、叩いても、重く鈍い音がする。その岩の隙間から、火竜のうめき声が聞こえた。
「この先に火竜の鳴き声が聞こえるだなんておかしいですね? 本来火竜は魔力の源である鉱石には手を出しません。彼らは魔力がなくなったグズ鉱石を好んで食べる」
「聖女の力がなくなって暴走しているのか?」
「なにがあったのか探りましょう」
黒い岩をどかすと、その奥には人が作った坑道が出てきた。坑道の入り口にある移動装置。移動装置の岩にはめ込まれた魔法石に手を当てると、まだ魔法石は移動装置を動かす力が残っており作動した。
「このまま地下まで一気に降りる」
☆
ガタン。
地下の一番奥。移動装置が急に緊急停止した。
「止まった?」
「ええ、なにか外で異常が発生したようで緊急停止しました」
団員は自動から手動に切り替え、扉の開閉ボタンを押そうとする。
「まて、外から嫌な音が聞こえる」
箱の外側から火竜の唸り越えが聞こえる。それも一匹ではない。
反射的に前にいた団員は銃を構えた。後ろに立っていた団員はラビィを囲むように守る。
「炭鉱の中は地上よりあたたかい。氷の氷結時間も短くなる。ここは一気に突破する」
ボタンを押すと、扉の向こうで竜がぞろぞろとこちらに集まって来た。
扉の隙間から何発もの銃弾が竜の鱗に当たり、瞬間氷結させる。
「奥まで走れ!」
火竜は何かに反応しうめき声をあげながら追いかけてくる。
「なぜだ? なぜ、人間を襲ってくるんだ?」
「お腹が空いてラビィの聖女の力が欲しいのか?」
走りながらあたりを見渡してみても、炭鉱内に異変はなく、グズ鉱石も落ちていない。坑道は綺麗に整備されている。純度の高い鉱石を食べるようになったのかと思い、一番奥の鉱石発掘所、鉱石保管庫に出向いてみたのだが、火竜はその宝石の山に見向きもしなく、ラビィを狙って襲ってくる。
火竜は地面に座り込んだラビィを食べようとしていた。
「……シリウスさん!!!!!」
シリウスが火竜に向かって拳銃を構える。
引き金をひくと、銃弾は火竜をかすめ、近くにいたラビィの体に当たる。
ーーパキン。
「ーーーー!?!?!?」
弾丸はラビィの足に当たり、固い音を出して弾けた。
そのまま、眩いほどの金色の光に包まれる。黄金に輝く魔法陣が現れる。
「ーーははっ、この細かい古代文字。幾重にも連なる複雑な魔法方程式。黄金に輝くーーーー聖封印」
はじけ飛んだ鉱石に火竜が群がる。
「鉱石の……かけら?」
「これは映人石だ」
「えい……じん……?」
映人石。それはこの世界にある鉱石の一つで、それはよく聖女が魔法具を作るときに使用していた。映人、その名の通り、この石は人を映し続ける、記憶し続ける、高い記憶能力がある。おそろしいことに、映した人の能力さえもそのまま復元し操作できる。
そのまま、シリウスは恐ろしい表情のまま仲間に告げだ。
「騎士団に残っているやつに連絡して欲しい」
「ーーえ?」
「俺が帰るまで聖女をなんとしても守るんだ」
「ーーまさか、ご冗談を……」
「ーーこのラビィは偽物だ。全ては歴代の聖女から仕組まれた罠だったーー……」




