二十四話「時、来たれり」.1
五発の徹甲弾を放った『マレウス』の腕からは、その威力を表すように白煙が上がっていた。壮大な激突音と爆発音。生物とは思えない頑強さを持つザハクが。アンブロス・ジェネレーター一つを使い潰して放たれた槍でなければ貫けない鱗が。
一撃で、五体も穿たれた。
当たり所によって絶命しなかった個体もいるが、そのほとんどが痛みにのたうち回り、数秒後には絶命している。抉られた肉から血が零れ、流動する砂の中へと消えていく。
後に残った黄金の水は、ザハクの体内で生成された高圧縮されたエネルギー流体だ。
「や、やったんですか……?」
「ああ。よくやったよフェイジア。見事な神聖刻術だった」
古き時代――まだルガリが人間だったころ。その力を行使できる人間は、戦地において英雄だった。アンブロス・ジェネレーターを高出力で起動できる者ほど、この神秘的な力は強い傾向にあった。
誰にでも動かせるアムリット・エンジンを、力を持つ者が動かせばなお強い。
そうしてルガリの主人たちは勢力を拡大させたが、より大きな力に、彼らは打倒されることになったのだ。
「立たせられるか? 気分は悪くないか?」
「な、何か、くらくらすると言うか……力が入らなくて、どうしたんでしょう?」
「アムリット・エンジンは誰にでも動かせるものだが、自由自在にできると言うわけじゃない。少し無理をさせすぎたんだ」
横抱きにした『マレウス』を抱えたまま、ルガリは進路を元居たオアシスへ向ける。
途中から進路を変えて引き離したおかげで、オアシスのほうに近づいた個体はいない。このアルマートゥスを運んでいた人間たちの砂上船は見えなくなったが、あの速度と軽くなった船体ならば、逃げ切ることができるだろう。
「ラムネラにも伝えないと。この砂漠には、まだまだ探すべきものがいっぱいある」
「けど、あんまり時間かけてられねぇぞ。エドガー本人が、いつ鳥の民の里に乗り込むか、わかったもんじゃねえ。ここから森までどんなに頑張っても一日はかかるんだ」
「そうだな。猫の民の協力も、取り付けないといけないし……」
しかし、重要なことがわかった。この砂漠は、きっとずっと昔、大きな工場だった。第八世代アルマートゥスという、特別な者しか使えなかった機体がこんないい状態で転がっているなど、戦場ではありえない。
ではどこならあり得るかと言えば、工場だ。
何の理由で放棄されたのかは知らないが、それをあの発掘者たちが回収したのだとしたら、どこかに同じような機体があるかもしれない。
「まともに動かせる世になるにはしばらく訓練が必要そうだな」
「はい。すぐにルガリ様のお役に立てるわけではなさそうです」
「んだよ、アタシの分はないの?」
「それをこれから探すんだ。しばらく俺の中で我慢してくれ」
ハッチを開けたナナワが不服そうに言う。
戦力と、協力者の増加。獣士同盟軍が必要とするもののうち戦力の面の強化は、あまり原住民たちには期待できない。
アルマートゥスと正面から戦えるものがどうしても限られてしまってきたのだから当然だ。
だが、その常識は覆された。
「残っているとは思わなかった。あってくれればと願っていたものが、ここにあった」
押しのけて、手を出さなくさせればいいと思っていた。せいぜいそこまで。
その考えが、変わる。
「勝てるかもな。全ての支配者たちに」
生前では叶うべくもなかった、支配者への反抗。
時を超えて、この獣人たちとなら、できる気がした。
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