二十四話「時、来たれり」.2
「ようやく戻ってきたと思ったら、土産付きかい」
砂上船で出発しかけていたラムネラのもとに、ルガリたちは帰還した。
先ほどの砂上船の姿はどこにもなく、しばらく近づいては来ないだろう。
「ラムネラ、このオアシス、調べてもいいか?」
「……いいけど、いいのかい? 猫の民の集落に行かなくて」
「そっちは後回しでもよくなった。バンドラばあさん、トモロじいさん」
「やっとその気になってくれたかい、ルガリさんや」
「いよっ、話の分かる男!」
名前を呼べば、待っていましたとばかりに元気な爺さん婆さんは飛び出してくる。
「そうやって持ち上げるのはいいから、調べてほしかったのは、あの岩場だよな」
「ああ。水が絶えず湧き出るこのオアシスだが、妙に作りこまれていないかと思ってな」
「この砂の下に、何かがあるとにらんだわけだ」
普通のオアシスが、地下水によって発展するのはわかる。
だが、岩の間から溢れる水。それはまるで人為的に作った噴水のようにも思えた。もしかしたら、ごく自然の奇跡でそうなったのかもしれない。
だとしても、気になる部分は気になる。
「あんまり派手に掘ったりして、オアシスを台無しにしないでくれよ」
「その必要は、たぶんないと思うよ」
答えたのはルガリではなく、ナナワだ。
彼女の集落もまた、同じように隠された工房があり、そこでルガリの『グラディウス』は『グラディウス・リペア』へと改修された。
ならば、ここが軍事工場の一角だとしたら。
「噴水の内部に、間違いなく人為的なダクトがある。地下水を放出するために造られた、人工物だ」
「ということは、どこかに犬の民の集落のような入り口があるんでしょうか」
フェイジアは横抱きのままの『マレウス』の腕を上げて、噴水周りに触れてみる。
内部ではルガリからの音声アシストを受けながらの作業であるため、非常に緩慢としている。しかし、何もしていないよりかはましだ。
事実、『マレウス』の内部に何かへのアクセスコードが表示された。
「来ました。皆さん、離れて!」
「防御システム停止。区画解放作業、開始」
オアシスの住民たちが見守る中で、ルガリとフェイジアは作業を進めていく。
大地全体が振動し、オアシスを潤していた噴水は停止。細かい振動が周囲に満ちる砂を移動させる。まるでこの土地全体が振動コンベアのようになって、砂を表面から排除したのだ。
「砂の下に、こんな硬い板があったのかい……」
「でも、雨が降った後も、水は溜まらなかった」
「どういうこと?」
ロデスは聡い子だった。確かにいくら砂があっても、雨が降ればいくらか土地は冷え、しばらく水が残る。もしも砂地の下に水を地下に染み込ませない鉄板があったら、もっとこの土地には水が残ってもいいはずだ。
それがないということは、溜まった水はこの地下にある施設が回収していたのだろう。
「最初から砂漠の地下にこの施設を造ったのか。それとも砂漠化する前提で、この基地を作ったのか。どっちだと思う?」
「後者だとしたら、発想が遠回りすぎねぇか?」
「だよな」
ルガリの問いに、ナナワは首を傾げた。それがどうした? と思ったのだろう。
だが、ルガリは思う。ザハク――砂漠の悪魔と呼ばれたあの蛇たち。少なくとも、ルガリが生きていた時代には、いなかった。
黄金の水は貴重で、アムリット・エンジンの生産数は限られていた。
この施設は、あの蛇を研究していたのではないか。その過程で、アムリット・エンジンの開発を――第八世代型アルマートゥスの量産を、担っていたのではないか。
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