二十三話「不限機関-アムリット・エンジン-」.2
「ルガリ様、ザハクが!」
フェイジアの言葉に、ルガリは意識のリソースを背後に向けると、八体のザハクが目前まで迫っていた。
「意外と速い!」
スラスターユニットを吹かし、開かれた顎から逃れる。砂上船の後方にザハクが噛みついた。木と鉄で造られた船体は簡単に潰れ、引き千切れていく。
幸いにもジェネレーターには当たらなかったが、甲板の一部が崩壊。
その上に乗っていたアルマートゥスを繋いでいたワイヤーが外れ、ゆっくりとずれていく。
「ああ、くそっ! 荷物を捨てろ! 少しでも軽くして逃げるんだよぉ!」
甲板に乗っていたアルマートゥスを確保することもできず、まして自分たちの命が奪われようとする現状。それなりの金にしかならない発掘兵器など確保しておく理由などない。
落ちていく発掘兵器の姿に、ルガリは目を奪われて――。
「第八世代型アルマートゥス『マレウス』!」
第六世代である『グラディウス』に比べて鋭角的な機体であるそれは、今のルガリの機体より二世代も上の機体だ。
第六世代は量産化とP型電子化兵の搭載実験を兼ねたものであり、それまでの第五世代とさほど変わらない。そして、アンブロス・ジェネレーターの搭載された最期の世代だ。
それより二世代先の『マレウス』には、アンブロス・ジェネレーターのような”旧世代”の動力は詰まれていない。
「こいつを奪ったことで、ザハクたちを怒らせたのか?」
その機体の内側に流れるエネルギーは、ルガリの『グラディウス』同様、まだ生きていた。
「フェイジア! ナナワ! 予定変更だ。ザハクたちを蹴散らしてでも、オアシスを守る!」
「きゅ、急にどうしたんですか!? わかりました!」
「いやフェイジア、お前物分かりよすぎ!」
フェイジアの言動にナナワがツッコミを入れるが、彼女は気にしない。
主が砂漠の悪魔と戦うと言うのなら、そのために力を尽くすことは彼女にとって何の苦でもない。
操縦桿を握り、ルガリのアンブロス・ジェネレーターの出力を増加。同時に接近するザハクの姿を各種レーダーに捉える。
「この機体をザハクたちが狙っている可能性もある。こいつを連れていく」
ルガリは『マレウス』を抱えると、砂上船を蹴って離れていく。その勢いで砂上船は進路をそれ、ザハク三体がそちらに引かれていく。
だが、残り五体がルガリに向かってくる。やはり、このアルマートゥスをザハクたちは狙っている。
「本当に狙って来たぞ! こいつ何? ルガリと同じ発掘兵器なのか?」
「ああ。だがこいつは『マレウス』という、俺の『グラディウス』より新しい機体だ。搭載されて動力も『不限機関-アムリット・エンジン-』っていう最新型さ」
砂地に降り立つと、すぐに加速。フェイジアが供給する追加エネルギーも併せて加速し、飛び掛かってきたザハクの牙を回避する。
体表の微細振動で砂を流動化し、泳ぐように追ってくるザハクたちを、オアシスの方向から引き離す。
「このエンジンには、黄金の水が使われていると聞いたことがある。もしかしたら、それがザハクを引き付けているのかもしれないな」
「黄金の水……ザハクの通った後に残るというものですか?」
「それだ。俺たちの時代では、このアムリット・エンジンを大量生産はできなかった。けれど、この時代なら、ザハクがいるのなら……」
「それはともかく! ザハクとの距離が詰まっています!」
フェイジアの悲鳴に光学センサーを動かす。スラスターユニットの出力は、フェイジアの協力もあって万全だ。しかし、ザハクも速度を上げている。この機体の中に流れる黄金の水に同族意識でも感じ取っているのか。
それとも、彼らにとって何か大切なものがあったのか。
理由はこの際無視していい。今はただ――。
「ナナワ、操縦を頼めるか?」
「え!? いや、さすがにそれは……」
「この砂漠に来るまでの間にも練習はしていたし、君は一回アルマートゥスを一人でも動かした。その間に、俺とフェイジアはあいつらの相手をする」
ルガリは、ザハクにターゲットを定めた。
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