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二十三話「不限機関-アムリット・エンジン-」.1



 砂漠を走る砂上船は、この砂漠にほど近い領地を持つ貴族が放った調査船の内の一隻だ。この砂漠は複数の領主の領土に沿って広がっており、明確な所有権がない。

 しかし、発掘兵器(イニシエイト)の発見事例や、鉱山となる地下資源も確認されており、手を出すには手間だがあって損はない場所、として認識されている。

 そのため、たびたび各地の領主は調査船を放ち、砂漠をよく知ろうとしていた。

 何より、砂漠の奥地には原住民(プリミティ)たちの反抗拠点があるとの噂。見つけて叩き潰してやれば、社交界では一躍英雄になれるという目論見もあった。


 そんなことを考えて自分たちを派遣した貴族を、砂上船の上の船員たちは絞め殺してやりたかった。


「悪魔だ! 砂漠の悪魔だ!」

「ダメだ、ジェネレーターが焼き切れっちまうよ! これ以上加速できねぇ!」

「どれもこれもあのぼんくら共のせいだ! こんな砂漠、来るんじゃなかった!!」


 船乗りたちの叫びが木霊する。決して、ここに来たかったわけではないだろう。それで八体ものザハクに追われていては恐怖以外のなにものでもない。


「ちょっと状態のいい発掘兵器(イニシエイト)を見つけたってのに、どうしてこうなるんだよ!」


 それこそが最大の要因だとは、思いたくもないだろう。

 縄張り意識の強いザハクの縄張りからものを持ちだしたのだ。追いかけられるのは至極当然だった。


   ***


 そんな苦労人な人間たちのことは露知らず、獣士同盟軍(ディーラバンダログ)の旗頭たるルガリは、砂漠の上を滑走していた。

 あいかわらず剣をボード代わりに、背部のスラスターユニットの加速でけん引する砂上船無しに、砂漠を進む。


「どうやらあの砂上船、相当ザハクを怒らせるようなことをしたらしいな」

「巣穴でアンブロス・ジェネレーターでも爆発させたか?」

「どうだろう。とにかく、逃げる方向を変えてもらわないと」

「変えていただけない時は――」

「ジェネレーターを壊してでも、止まってもらうしかない」


 これはどこかに逃げ込めば終わる逃避行ではない。最悪オアシスを踏み潰しながら、そのままさらに砂漠の奥へ奥へと逃げ続けることになる。

 無意味な逃走の結果オアシスが潰されたなど、やるせなさしか残らない。


「まずは接触する。急速反転するから、備えて!」

「はい!」


 コクピット内で、二人はぐっとシートにしがみつく。

 だんだんと近づいてくる砂上船。ルガリより大きく、ラムネラの持っているものより二回りほど大きいそれは、広い甲板を持つ砂上船だ。巨体である分アンブロス・ジェネレーターの数も多く、強い振動を発しながら疾走する。

 弧を描くように接近したルガリは、機体をひねりながら加速。砂上船の船体に手をかけた。


「な、なんだ! 急に船体が傾いたぞ!?」

「加速力が落ちてる。このままだと追いつかれ……誰だこいつ!?」


 船員たちは、そこでようやくルガリの存在に気づいた。

 船体が傾いたのは、このアルマートゥスがしがみついたからだと。


「発掘兵器(イニシエイト)が動い……いや違う! は、離れやがれ!」

「お前たちこそ、この進路を変えろ。この先にオアシスがある。そこを砂漠の悪魔に潰されるわけにはいかないんだ」

「何の話だ!? それよりさっさと離れろ! 追いつかれちまうだろう!」

「こちらとしても死活問題だ。今すぐ舵をきれ。でなければ、このジェネレーターを破壊してでも……ん?」


 空いている手に握った斧を見せびらかせるルガリは、視界の端に捉えた機影に意識を留めた。

 各種センサーが捉えたデータに、ルガリは困惑する。どうしてこんなものがここに? ――と。


少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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