二十二話「砂漠に生きる者」.3
地図に書き込むラムネラは、その状態で言葉を続ける。
「砂漠で重要なのは、ザハクと接触しないことだ。奴らは規則性のある音に反応しやすい。生物の足音、心臓の鼓動、機械の動力――ザハクにとってどれもが食事対象になる。気を付けて進むんだね。……できた」
「ここが、今いるオアシスだとして……結構遠くに川があるんだな」
ラムネラの地図には、砂漠の中を流れる大きな河川があった。この砂漠を生きていく上では欠かせない水。それを確保できる場所に集落ができるのは必然だ。
地図の場所にいなくとも、川に沿って歩けばどこかにいるはずだ。それが上流か下流かは別として。
「同じ原住民だったら、あんたについて戦うべきなのかもしれないけど」
「その気持ちだけ受け取っておく。子どもたちの安全に気を付けてくれ。手を貸せるときが来たら、あの二人の手伝いをしに来るよ」
「期待しないで待ってるよ」
ラムネラは何処かい曖昧に笑った。彼女自身、戦いたいのか。それとも罪悪感があるのか。無意識であろう、手がクロスボウのグリップに伸びていた。
けれど、彼女はこの場所に必要だ。
「それじゃあ、俺たちは――」
「ルガリ様! 砂漠のほうを見てください!」
それから舞い降りてきたフェイジアが、彼の肩に降りる。何事かと思った時、広域センサーに反応が出る。接近している複数の影が、脳内レーダーに投影された。
「この振動音……一体……二体……四、六?」
「違う、八体だ。ザハクが近づいてきている……」
ルガリはその場から跳躍。岩場に手と足をかけて掴まると、レーダーに映った影の方向へ視界を向ける。素早い動きで岩場を登ったラムネラも、同じ方向を見る。
「アンブロス・ジェネレーター反応……砂上船がザハクの群れから逃げているんだ」
「それがまっすぐこの場所に向かってきているってのは、笑えない冗談だよ!」
ひらりと岩場から降りたルガリは、すぐにオアシスにいる者たちに号令を発する。
「離脱準備! ザハクの群れが近づいている。この場所から離れるよ!」
それが一時的なのか、永続的なのかはわからない。ただ子どもも、居座った学者も、その号令の理由を問いはしない。彼女が発したのなら、それに従う。
必要最低限の荷物と食料・水を砂上船に積み、いつでも出発可能になる。
「フェイジア、ナナワ、俺の中に」
「どうすんだよ、あのデカブツどもが八体だぞ!」
「まずはあの戦闘の砂上船をどうにかして進路を変更させる。話はそれからだ」
二人をコクピット内に納めたルガリは、背部のスラスターユニットを展開。
「この理想郷は、壊させない!」
近づきつつある脅威へ向けて、|『凶兆の死食鷲』は飛び立った。
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