二十二話「砂漠に生きる者」.2
「ほっほぉ~、古代の発掘兵器! これはまた半端ないものと出会ったのぉ、ラムネラ」
「しかも魂の電子化による機械兵! なんとも恐ろしい古代の遺物なのかいね!」
「恐ろしいと言いながら嬉しそう……あ、やめ、そこはくすぐったく感じるんだ」
自分の胸部に乗り込んだ老夫婦を摘まんで引き抜いたルガリは、吐けないため息をついてから降ろす。
「デリケートな部分なんだ。電子化脳に何かあったら、俺は死ぬ」
「うーん、もっと調べさせてほしいんだがなぁ」
「もう少しまともな整備室でもあればいいんだが」
まともな整備室――というと、犬の民のお山が思い起こされる。あそこならば、この老夫婦の知的好奇心を満足させられるだけのデータや機材が揃っている。
考古学者というより、古代技術研究者である二人は、現代の機械技術にも明るい。
ならば、あの施設の全容解明だってできるのではないか。
「この砂漠に、その施設があるとでもいうのか?」
「確証があるわけではない。だが、いくつかの物的証拠から、可能性が高いことは判明している」
「この砂漠には、掘り出せばいくつかの発掘兵器が発見できる。むろんどれも機能停止、砂と熱にやられて動かすこともできんくらいだが、かつての文明のあった証拠だ」
さらに言えば、ザハクの存在も気がかりだと言う
「ザハクが吐き出す黄金の水、あれが発掘された発掘兵器の機関部分から発見される。動かし続ける限り動くアンブロス・ジェネレーターと違って、こちらは完全に停止した状態で見つかっている。旧式のジェネレーターということか?」
「黄金の水が入ったジェネレーター……」
「アルマートゥスの残骸が多いから、ここは拠点だったのかそれとも廃棄場だったのか。判断はまだできないが、研究する価値のあるものが、砂の下にあるかもしれない。そういう意味では、この岩場は特に興味深い!」
夫婦が指差したのは、この集落の中央にある岩場だ。そこから水が溢れ、この地を潤しオアシスを形成している。
砂漠というのは、水がすぐに乾いてしまう。だが時には降った雨が川になったり、雪が降ったりすることもあるように、水が全く存在しないわけではない。特に遠くから流れてきた地下水が豊富な場合、砂漠には枯れない井戸が出来上がる。
このオアシスは、そう言った地下水の上にあるのだろう。
「発掘作業ができていないが、明らかに人の手が加わった箇所があるのだ。この砂漠の地下には何かがあると、私たちの勘が囁いている!」
「そこにやってきた発掘兵器本人! ここに何かあると知っていて来たわけではないのだろうが、もしかしたら何か反応があるかもしれないだろう」
鳥の民の集落にルガリがいたように、犬の民の集落が整備場の隣にあったように、この場所も何か古代の技術に関連があるかもしれない。
――そもそも、なぜ古代施設のある場所に原住民たちがいるのか。
「協力してほしい! この集落全体の調査を、その機械の体で!」
「落ち着きなよ、トモロじいさん。ルガリにだってやるべきことがあるんだ。こっちの都合ばっかり押し付けちゃだめだよ」
ラムネラに抑えられて口をへの字に曲げる老人に、ルガリはむしろ好印象を感じる。自分の欲求にまっすぐで嘘がない。
自分を電子化兵にした研究者たちとは、同じとは思えなかった。
「獣士同盟軍だったか? 大変そうだねぇ」
「人間と原住民の争い。俺たちには関係ねぇと言いたいが……な」
「この大陸にいる以上、巻き込まれないことはないさ。たとえこの砂漠でもね」
「なんだか、悪いことをしたみたいだな」
彼女らは争いとは関係のない生活を築けていた。それを崩す要因が来ては欲しくなかっただろう。
「他の猫の民に当たることにする。たとえ原住民だとしても戦いを望まないヒトに、戦いを強いるのは支配と同じだ」
「まぁ、世を捨てたような私たちが、手を貸せることなんてほとんどないだろうから」
せめて他の猫の民の居場所の目星だけでも。そう言ったラムネラは、一枚紙を広げると。そこに線を書き加えていく。簡単な距離と方角だけがわかる地図だった。
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