二十一話「砂漠の理想郷」.3
「人間との戦いねぇ。正直、私には関係ないというか、乗り気に慣れないね」
「君は、少なくとも人間と敵対していないからな」
「裏切り者だと思うかい?」
「服従するのも反抗するのも、友好を結ぶのだって自由さ。それを咎めたり、共生したりする権利も資格も、俺は持ってはいない」
鳥の民は服従を選び、犬の民の一部は反抗を選んだ。自らの生きる道を選び取った結果が今だ。奴隷として戦い、請われたことを理由としたとは言え、人間に敵対することを、ルガリも選んだ。
戦わない選択肢を、責める理由などない。
話題を変えるように、ルガリの視線は集落の小屋へ移る。
「あの三人は、学者なんだよな?」
「なんでもこの砂漠にあるっていう古代文明について調べてんだ。私が砂上船を襲撃して奪い取った時から、居ついてる」
ラムネラが歩き出すと、ルガリもそのあとに続く。
一人は初老の女性だ。しわの深い顔であるが、快活さがしっかりとその目に宿っている。背骨も真っ直ぐ、パワフルな印象を与える。
もう一人はひげを蓄えた小柄な男性だ。丸メガネを付け、しわの多さでいえば変わりはないが、こちらは子どもっぽい笑みを浮かべて、楽しげに手元の機械をいじっている。
二人の視線が同時にルガリたちへ向けられると、おかえりという挨拶の跡に小言が飛んできた。
「聞こえてたよ。バカとはひどいわね。歴史に魅入られたって言ってちょうだい」
「その通りだぞ! 俺たちは誇り高き探求者だ。鉄と砂の中にロマンを見出したのさ」
「研究者夫婦のバンドラばあさんとトモロじいさんだよ。娘がアルマートゥスのパイロットになるためにいなくなっちゃて寂しいから大陸各地を調査しているんだと」
人間は別に原住民を差別したいわけではない。友好的であろうとすれば、友好的に慣れる。それをするかどうかは本人たち次第だ。
「で、プランターの点検は終わってるんだよね? 仕事しなきゃ調査手伝わないよ」
「問題ないに決まっとる。子どもたちに修理方法だって教えてやったよい」
「ならよし。明日は二人の調査日に決定だね」
ラムネラの言葉に夫婦は拳を振り上げて喜ぶ。見た目は初老の夫婦だが、どこか快活で、子どもっぽさが見える。探求心と好奇心が、若さの秘訣だろうか。
「調査って、この砂漠に古代遺跡でもあるのか?」
「ぬ、アルマートゥスに乗ったまま挨拶とは礼儀のなっとらんな」
「挨拶は重要だよ。おはよう、ありがとう、さようならは、ヒトとして忘れちゃいけないものだね」
「それはすまない。だが、諸事情によって俺はアルマートゥスから降りられない。ルガリという」
膝を付き、コクピットハッチを開くと、そこはもちろん空っぽだ。
だが、事情を知らない三人は首を傾げた。
「まずは、そのあたりの説明からしようか」
つい忘れてしまいそうな気がしていた、P45-エルガリオンとしての自覚を、こうしてルガリは取り戻していく。
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