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二十一話「砂漠の理想郷」.2


「ラムネラおねーちゃーん! おかえりなさーい!」


 砂漠の真ん中に、ポツンと岩場があった。

 その周りだけは緑が生い茂り、どこか命豊かな様相を見せていた。

 地下水と、岩の独特のお盆のような形状が、この地に水を蓄えていた。そこを利用して居住地としたのだろう。


「本当に、子どもたちしかいないのか」

「あとは人間の大人が数人。調査に来ていた人間の内、研究熱心でここを離れたがらなかったおバカ三人さ」


 停止した砂上船から降りたラムネラは集落の奥を指差す。

 ラムネラのいう通り、そこに人間もいた。猫の民(バスティアン)だけではなく、犬の民(ショロトリス)や牛の民(トーラス)らしい二人がいる。

 この砂漠に逃げてきた者たちの子孫なのだろうか。子どもの数は、砂上船に乗っていたラムネラそっくりの双子を除けば、たった四人。

 あとは、人間の学者らしき者が二人。この集落は、合計でたった九人だった。

 駆け寄ってきた子どもたちの体当たりを受け止めたラムネラは、四人の子どもに指示を出す。


「お客さんだ、中に入れて、飲み物を出してあげて」

「はーい」

「大人は? いないのか?」

「子どもだけ残して先に死んじまいやがったよ。狩りの失敗、砂嵐、砂漠の先の探索とあと……理由はそれぞれだけど。


 ラムネラは最後に言葉を濁した。ちらっと一瞬視線が人間たちの方向に向いたのを、瞬きの必要がないルガリの目は確かに捉えていた。だから聞く必要はないと判断した。

 素直に案内してくれる子どもたちに連れられて、フェイジアとナナワは家の小屋の中へと案内された。風通しがよく、日差しを遮りながら熱は籠らない。

 そして、砂漠において飲み物を差し出すのは、最大の敬意の表れだ。


「そのたった九人でも、猫の民(バスティアン)は砂漠で生きていたんだな」

「私の親を含めた何人かの家族が、外での危険より、この砂漠での危険のほうが安全だと残ったんだ。今じゃあ、砂漠を離れた奴らがどうなっているかもわからない」

「他にもまだ、猫の民(バスティアン)の群れはいるかもしれない、と?」

「あんたらが探したいのはそっちじゃないのか? 鍛え上げられた豹の戦士(オセラム)の力が、借りたかったんだろう?」


 豹の戦士(オセラム)――その話はミラクから少しだけ聞いていた。

 猫の民(バスティアン)の王に仕えた、黒縁模様の黄色い布を身に着けた戦士団が存在し、それは猫の民(バスティアン)の誇りであった。


「そんな集団がいたのか」

「知らなかったのかい。それでよく猫の民(バスティアン)のいるかもわからない砂漠に来たね」


 頭を横に振るルガリは、仕方がなかったと呟く。


「今は手当たり次第に仲間を集めている最中なんだ。手を貸してくれるなら、一人でも多く、どんな種族でも構わない」


 獣士同盟軍(ディーラバンダログ)は、種族による差はない。

 それこそ、本来なら敵対する人間だとしてもだ。


「今、多くの種族を鳥の民(ハルピウス)の森に集めている。来訪者(キヴェルニアン)最大の勢力である、エドガー・フランクリン打倒のための、同盟軍として」

「そして、いずれは犬の民(ショロトリス)や他の部族の土地も開放する。それが、獣士同盟軍(ディーラバンダログ)の目的なんだ」


 確かに、犬の民(ショロトリス)や屈強な鳥の民(ハルピウス)は、生身の肉体性能によってアルマートゥスに対抗することもできるだろう。それでも、リスクは大きい。

 猫の民(バスティアン)数人がアルマートゥスを動かせるとしても、その熟達にはどれほどの時間がかかるか。

 人間を――アルマートゥスの操縦者を仲間にできるのなら、それに越したことはない。


 ルガリの言葉に、ラムネラは――肩をすくめた。




少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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