二十話「気まぐれな同胞」.2
「ルガリ様、どうか、負けないでください!」
「理由なんざどうでもいい、ただ……動いてくれよ!」
二人の重ねられた手が、操縦桿に触れる。
これまで、アルマートゥスを起動させられる原住民はいなかった。来訪者の技術者たちも明確な理由は判別していない。
逆に言えば、絶対に起動させられないと、結論を出すことはまだできていない。
フェイジアとナナワ、二人の重ねた手の熱が、操縦桿を通してルガリに伝わる。
彼の精神が回すアンブロス・ジェネレーター。生成量はすでに限界だったはずの、旧式ジェネレーター。限界まで燃えていたはずの火が、さらに強く燃え上がる。
「……ッ!? なんで、出力が上がって――!」
理由を問うている暇はない。エネルギーを貯めた翼が、再び機体を加速させて押し出す。目指すべきは、閉じられかけた口腔のさらに奥。収縮する喉。顎よりも圧力の低いその場所へと辿り着いた。
本来の蛇であれば、この喉の奥、胃へと繋がる通路も含めて、獲物を捕らえ、溶かし尽くすための器官だ。だが、顎の力が発達し、普段から大量の砂を飲み込むザハクは、特異な変化を遂げていた。
喉の奥に獲物を砕く牙が多数存在し、全方位から『グラディウス・リペア』を砕かんとしてくる。
「そんなに飲み込みたいのなら、これでも飲み込んでいろ」
口が閉じられ、真っ暗になる蛇の中。黄色の双眸の放つ光を頼りに探り当てたアンブロス・ジェネレーターを握りしめ、砕きながら投げつける。
外側からの爆発はだめでも、内部ならどうなるか。
自由になったら腕で投げつけた爆弾は、ザハクの中に爆炎を巻き起こす。
「うぉっ!? ルガリ、アタシたちまで焼けちまうぞ!」
「大丈夫だ。こいつの装甲とこの距離なら、そこまで痛くはない」
内部で爆発したエネルギーには、さすがの大蛇ものたうち回る。上顎に刺さったままの剣の柄を握り、暴れまわる巨体にしがみつく。剣を刺しても多少硬いものを食べた程度の感覚でしかなくても、炎が腹の中に広がればさすがにダメージになる。
勢い余ったルガリは、口の中から剣ごと空中へ投げ飛ばされる。
「外に出た!」
「やったなルガリ! 砂漠の悪魔を対峙して――」
「ルガリ様、右のほうに、別の蛇です!」
ザハクは、特別な一頭ではない。この砂漠には、少なくとも同一種の個体が十頭近くいる。そのほとんどは、他の獲物を食うのではなく、砂を食んで生きている。
たとえここに住む種族がわずかでも、この地の底を穿つ者たちは成長し、巨大になるのだ。
「衝撃で呼び寄せてしまったか。さすがにあの数は無理だ。離脱する!」
「砂漠の悪魔って一匹だけじゃねーのかよ!」
操縦桿から、彼女らの想いが伝わってくる。脱出の安堵と、状況への不安。
タイミングは最悪ながら、二人との距離が縮まったように思えて、ルガリには嬉しかった。だからこそ、何より二人の安全が優先される。
『そこのアルマートゥス、そこのアルマートゥス!』
突如聞こえた声に、翼によって滞空時間を伸ばしていたルガリは振り向いた。
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