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十八話「砂漠の地へ」.3


「かぁ……負けた。親父、あいつ強いぜ」


 味方機の掌に乗ったダニエルが、屋敷の前に立つ父に睨まれながらそう告げた。

 転がるように降りた彼を迎え入れたエドガーであるが、その顔は複雑そうに固まっている。


「お前が負けた、と認めたのならそれは正しい。敵の戦力分析を、数段階引き上げなくてはならないだろうな」

「てかルーサー! もう一機俺のところに突っ込んできたやつ、原住民(プリミティ)が乗ってたぞ?」

「え!? いや、原住民(プリミティ)が動かせるはずはないでしょう! アンブロス・ジェネレーターが反応しないから、原石採掘に駆り出しているわけで……。それに、ダニエル様の機体整備のために連れていたあの原住民(プリミティ)たちも、そうでしょう」


 だが、事実として彼は自分の味方の機体が暴走したかのように突っ込んできた。その中から飛び出したのは、犬の民(ショロトリス)の少女だった。


「奴らにアンブロス・ジェネレーターを改造する手段があるとしたら、より多くのアルマートゥスが戦力として運用されていくことになる。奴ら強くなるぜ」

「そうと決まったわけではあるまい。たまたま、捕虜の人間に動かさせたものから、その蛮人(プリミティ)だけが放り出されたのやもしれん」


 エドガーの答えに、ダニエルは「かもな」と肩をすくめる。

 だが、ダニエルには確信めいたものがあった。

 あのアルマートゥス――ルガリと名乗った自称元奴隷。自分の乗った最新鋭のアルマートゥスに匹敵、否。それ以上の機体性能を誇る青灰色のアルマートゥス。


「だが、特にあの発掘兵器(イニシエイト)、あいつがいることで原住民(プリミティ)たちは調子に乗っている。奴の存在そのものが、これからの反抗運動を増長させる」

「それで今回の敗北全てが正当化されるとは思うな。お前が失ったのは我が軍の精鋭部隊だ。機体性能がたとえ三世代離れていようが、たった一体だ! この敗北は恥と思え」

「教訓にするさ、親父」


 普段は反発的で、素直さなど欠片もない言動ばかりの不良息子だが、今日は妙に素直で聞き分けがいい。

 エドガーにその理由は推し量るしかなかったが、敗北を知った戦士は強くなる。

 話し合いの場を執務室に改め、ダニエルは埃を落としてからやってくる。濡れた髪から水滴を垂らしながらソファに座ると、エドガーは今後について話し始めた。


「奴の正体が何かなど、足を落として捕まえてから調べればいい。問題は今回の損失の補充と、他の貴族共の牽制だ。うちの戦力がごっそりと減ったからな。確か領土境界近くにあった金鉱山、狙われていたな」

「はい。相手方は、一応共同運営を主張しておりまして……」


 ルーサーの出してきた資料にエドガーとダニエルは目を通す。すると、ダニエルはつい吹きだしてしまう。


「いやいや。ここは奴らの方からくれてやるって言った場所だろう。良い物が埋まってるってわかってから、改めて返せってか」

「一応共同運営ですので、彼ら側からも資金は出されますよ」

「そういうのは盗人猛々しいって言うんだろ?」


 肩をすくめたダニエルは、金髪をまとめ上げ、タオルを巻きつける。


「けど、鳥の民(ハルピウス)どもの相手をしてる暇はなくなったな」

「貴様の機体は新たに開発中の第五世代型を宛がう。出力は高いが、制御が難しい。だが貴様ならば、扱えるだろう」

「まずは地盤固めと、今あるアンブロス・ジェネレーターの製造が最優先だな」


 二十機以上のアルマートゥスが、この十日程度で失われてしまった。

 本来なら壊滅に等しい打撃だ。境界警備のアルマートゥスを移動させるわけにもいかず、失ったパイロットの補填もすぐにはできない。


「すぐに準備を始めろ。まずは手近なところから潰す。貴様は自分の作業に移れ」

「好きにいじらせてもらうぜ。最新鋭機」


 原住民(プリミティ)たちが己の独立のために戦うなら、人間もまた、自分の利益と将来のために戦うのだ。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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